「12プレミア」の記事一覧(16 / 21ページ)

光GENJIからSMAPへ。そしてSexy Zoneやももクロへ…現代のアイドルは「王子様」「お姫様」か?

――女性向けメディアを中心に活躍するエッセイスト・高山真が、芸能報道を斬る。男とは、女とは、そしてメディアとは? 超刺激的カルチャー論。

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「Sexy Zone写真集 Be Sexy!」

 去年の紅白以来、どうもSexy Zoneの中島健人が気になっています。中島健人は今度の3月で22歳になるそうですが、ヘタすればそのくらいの年の子どもがいてもおかしくない年齢の私。さすがに、Sexy Zoneをガッツリ応援している10代から20代くらいの女の子たちと、同じ注目の仕方をしているわけではありません。

 私が注目せざるを得なかったのは、なんと言うか、「中島健人が自分で設定しているハードルの高さ」でした。

 紅白で自分たちの持ち歌が終わってすぐ、次の出番の伍代夏子の『東京五輪音頭』の応援パフォーマンスにうつったSexy Zoneですが、中島健人は、決して有名な曲とはいえない伍代の持ち歌の、3回のサビ部分がすべて微妙に違っていたのに、完璧に口ずさみながら踊っていたのです。その後、細川たかしや藤あや子の応援パフォーマンスをしていたAKBやNMBグループの誰ひとり、こういうことはしていません。ただ、別にAKBやNMBの肩を持つつもりもないのですが、延べ時間でほんの数時間しかないだろうリハーサルで、若いアイドルたちが教わっているのは「踊り」であって「歌詞」ではないはず。「教わったことを教わった通りに遂行する」ことは、悪いことでもなんでもありません。

 中島健人のその様子がどうにも気になったので、あとで紅白を見返してみたら、天童よしみの『人生一路』(美空ひばりの名曲のカバー)でも、なんとか一緒に歌おうと頑張っていました。誰に命令されるでもなく、自発的に「1曲でも多く!」と、他人の曲の歌詞を頭に叩き込んで本番に臨んでいた21歳。芸能への「覚悟」みたいなものを、この年齢ですでに持っている。それに気づいて以来、歌番組やバラエティ番組などで中島健人が出てくると、ついつい「今日はどこまで仕上げてきているか」と、目で追ってしまう自分がいるのです。

 Sexy Zoneは過去に握手会を開いたことがあるそうで、そこでの中島健人のファンサービスの様子は「中島健人 握手会」といった単語で検索するとザクザク出てきます。ファンの子たちの、やや無茶ぶりが入ったコメントにも、ひとつひとつオリジナルな、「相手の想定以上に相手を喜ばせよう」という意志が見える言葉で対応していく中島健人は、当時20歳前。返答の8割を「ありがとうございます!」だけで押し通したところで、ファンの誰も文句をつけたりはしないだろうに、そこに甘んじなかったからこそ、ある種の伝説として語り継がれているのではないか、と。

 こうした振る舞いは、「王子様」としての振る舞いなのか。そう尋ねられたら、私は「NO」と答えます。人によっては過剰とも感じられてしまうほどのサービス精神の高さは、むしろ「血中王子様濃度」の低さゆえのもの。その濃度が高い人は、自分のハードルを高くしないものです。諸星和己が21世紀になっても「俺は人気者だから、できないこともある」的な姿勢を崩さないのは象徴的。言葉は悪いですが、「サービスしすぎなのは、庶民のやり方」だと思っているフシが、王子様を自認する人には見られます。

 それに王子様キャラは、突き詰めすぎると、「ネタ」に寄っていってしまうもの。それを逆手にとって独自の味わいを醸し出したのが、かつての及川光博であり、今の中島健人なのでしょう。「ネタ」に寄っていくことを受け入れられるのは、冷静さが必要なものですから。逆に、勘のよさで「王子様化」を避けて通っていたのが、本来誰よりも王子様ポテンシャルが高い堂本光一だと思います。デビュー当時から今に至るまで、コテコテの関西弁で通したのは「王子様扱いはイヤだ」という意志表示でもあったのではないか、と思ったり。

 現在のアイドルは、「キラキラ」しながらも、「王子様自意識」が非常に低い。たぶんその先駆者になったのはSMAPの中居正広ではないかと思うのですが、AKBグループでなんだかんだ言ってもいちばんの注目を集める指原莉乃が、「姫自意識」の低さにかけてもグループの中でトップを走っているのは、なんだかしみじみしてしまいます。

 前回前々回のこのコラムでもふれましたが、「アイドル」は、単に「歌ったり踊ったりできる、若くてかわいい子」のことではありません。スポーツ選手をアイドルにする人、活動家をアイドルにする人、現実にはいないキャラクターをアイドルにする人…、本当にさまざまです。私にも、若いころ、自分のアイドルがいました。アイドルがキラキラ輝いたり、壁を超えたり破っていく姿を見て、「私の人生もちょっとはキラキラするかもしれない。自分の壁を、ちょっと超えられるかもしれない」と感じたのを、昨日のことのように思い出せます。そう感じられたとき、「生きていく」ことの怖さを忘れることができたのです。

 その経験があるから、私は、大人になった今でも、「自分だけのアイドル」を信じる女の子、男の子の気持ちを尊重したい。そして、その子たちの思いを引き受けるアイドルたちも、幸せであってほしいと願っているのです。アイドルの幸せと、まだまだ若い一般の子たちの幸せは、絶対につながっているからです。

 正直、私はもういい年ですから、芸能界にどれだけのアイドルがいるか、まったく知りません。ただ、何度も繰り返すようですが、ひとつだけ思うのは、運営側がアイドルたちに余計な試練や屈辱を与えたりするのは本当にやめてほしい。そんな様子を「試練」として提示されても、一般の人々の心は無駄にざわつき、傷つくだけなのですから。

 アイドルが受ける試練(それは、若い一般人がそれぞれの人生で受ける試練と地続きのものです)は、「その高い壁を超えたとき、彼らがもっとキラキラできる場所に行けるため」の試練であってほしい。「グループ存続」とか、その程度のレベルのことで発動されるものであってはなりません。それはそのまま、若い人たちに「生きていく。ただそれだけのことなのに、こんなに大変なの?」と思わせることにつながりかねないからです。

 私が、今の女子アイドルならば、ももいろクローバーZに目を引かれてしまうのは、彼女たちの「試練」は、「それを乗り越えたとき、ものすごく大きな目標に近づく」という「物語」までが一緒に提示されているように感じられるからです。かつて『ASAYAN』という番組がテレビ東京系でオンエアされていましたが、その番組内で、モーニング娘。は、デビューから『LOVEマシーン』を出すあたりまで「試練」ばかりを課せられていました。しかし同時に、「乗り越えたところにある、大きな果実」も、明確に提示されていたのです。アイドルはそうでなくてはいけません。若い子の人生はそうでなくてはいけないのです。

 私は、自分が若いころ「いまどきの若いモンは」とさんざん言われて、心からうんざりしてきたクチですので、同じことは言いたくない。今の若い子たち(アイドルも一般人も)は、むしろ私が若者だったころに比べ、ものすごく一生懸命な子が多いと感じています。王子様・お姫様的な自意識を持つには、あまりにも冷静で真面目なのです。そういう真面目で一生懸命な子たちが、不要な「試練」を丸ごと受け止めていく姿を見るのは、大人としてつらすぎる。だから、ももクロのみんなにも、モーニング娘。のみんなにも、中島健人およびSexy Zoneのみんなにも、オバちゃんは幸せになってほしいのよ。

高山真(たかやままこと)
男女に対する鋭い観察眼と考察を、愛情あふれる筆致で表現するエッセイスト。女性ファッション誌『Oggi』で10年以上にわたって読者からのお悩みに答える長寿連載が、『恋愛がらみ。 ~不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)という書籍となって好評発売中。

被害者はベッキーだけじゃない!? 新たに経済界にも「ゲス極の呪い」が波及!

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「ゲスの極み乙女。『両成敗』スペシャルサイト」より

 ベッキーとの不倫騒動の渦中にある「ゲスの極み乙女。」川谷絵音とかかわった人物に、立て続けに不幸が訪れたことで、ネット上では「ゲスノート」「ゲスの呪い」と呼ばれ、話題となっている。

■川谷との不倫騒動でベッキーが10社あったCMが全て飛び休業を宣言。

■甘利元経済財政政策大臣が記者会見でゲス極の「私以外私じゃないの」の替え歌を歌ったが、その後、金銭授受疑惑で辞任に……。

■SMAPが15年発売のシングル曲「愛が止まるまでは」で川谷に楽曲提供を受け、その後、グループは空中分解の危機に陥り、メンバーが番組で公開処刑と称される謝罪中継を生放送でおこなうはめに。

■昨年末のNHK紅白歌合戦にゲゲス極が初出場。歴代最低視聴率39.2%を記録。

■SEKAI NO OWARIのFukaseが昨年交際していたきゃりーぱみゅぱみゅと川谷との集合写真をアップ。3カ月後に破局。

 芸能界・政界で起こったこれらに加え、なんと経済界でも「ゲスの呪い」に悲鳴の声があがっているという。

「ゲス極の所属事務所であるSPACE SHOWER MUSICを運営しているスペースシャワーネットワークが1月末に今期経常利益を78%に下方修正。その後株価は急下降、2月1日には14%以上も暴落しています。株主が集まる掲示板には『ゲスの呪いは恐ろしい』というコメントが並び、さらなる下落に震えています。一方で、“ベッキー効果”でゲス極のCDが売れまくっていることもあり、業績のV字回復を期待している人も多い。会社側は株主のためにも必死で赤字を埋めなければならず、ベッキーが休業しようとも、稼ぎ時の今のタイミングでゲス極を休ませるつもりはまったくない」(経済ライター)

「呪い」が本当ならスペースシャワーネットワークのさらなる暴落は必至だが、さてどうなるか・・・・。

「高野連が俺の人生のケツ拭いてくれるわけじゃない」高校3年生で感じた日本球界の閉鎖性

アメリカやカナダの独立リーグで活動する現役野球選手である筆者が、同じような境遇にある“野球人”にその挑戦と真意を聞く短期集中連載、最終回の今回は、本稿で取り上げてきた田久保氏の原動力になっているものは何だったのか、そして30歳を超えた彼の選択に迫る。世界を野球で歩いてきた自分が、後進のためにできること・すべきこととは何なのか――?

<第1回目「閉鎖的な日本野球を刺激する、世界を【野球】で歩いた男の足跡」
<第2回目「チェコ初の日本人プレイヤー…“野球発展途上国”でつかんだ希望」

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田久保賢植氏の公式HP

 2015年、田久保はチェコのフロッシ・ブルノに戻る。今回は、選手兼任コーチとしてのオファーだった。さらに、オーストリアのナショナルチームのコーチも、継続して引き受けることになっていた。前年と違い采配を振るわない分、技術指導に割ける時間も多くなった。田久保の役割は年々厚みが増し、野球後進国の多いヨーロッパで、着実に、他の野球人とは違う道を歩んでいる。

 もちろん、指導方針について悩むことも多い。だが、その困難を避けるようなことは決してしない。指導者として、打撃のメカニクス、守備での動き、走塁への意識、選手個人の気持ちの強さを、つぶさに観察する。そしてさまざまな情報を交えて議論を深め、戦うメンバーを選ぶ。基準とする軸は、常に定まっている。指導法には、必ず批判と称賛が付き纏う。言葉や文化の違いも、そのハードルを高くしている。周囲にまどわされず、自らが信じた決断を遂行するべきだと、田久保は考えている。指導に限らず、これまで貫いてきたことでもある。だが、その考えに変化も生じていた。

「自分がこうだと思ったら、こうだと突き進んできたつもりだったけど、いつしか振り返ってみると、単純に真っ直ぐにぶつかろうとしなくなったかなと感じる。ぶつかっていくにはエネルギーがいるんだけど、ぶつかることから流していくようになったなと。大人になったという言葉を使っていいのかわからないけど、変化はしたように思う」(ブログより/原文ママ)

 若い時は、自分に正直だった。単純に正面からぶつかることで、状況を打破しようとしてきた。年齢を重ねるごとに、ただぶつかるだけでなく、相手の話にも真摯に耳を傾けるようになった。自分のことだけ考えていた20代前半。今は、多くのことに目を向け、より深く物事を考えるようにしている。次の世代のためにできること、世界から学んだことを、日本野球にどう還元していくかに、田久保の意識は移っている。

原動力は、高野連に怒られた記憶だった――

 現在、田久保は指導の傍ら、世界を目指す若い選手たちのサポートも行っている。かつて三好にしてもらったように、田久保もまたその経験を若い世代に還元させている。海外に行きたいという選手がいれば、相談に乗る。経済的な問題を抱えている選手がいれば、オリジナルTシャツの作成・販売を勧め、三好と共にサポートする。田久保自身の考え方も変わってきた。

「選手としてプレーするのは、『そろそろ若い奴がやったほうがいいんじゃないか』っていうのはあるよ。だから、俺はそろそろシフトチェンジしたい。後輩の選手たちが俺ぐらいのことをできて当たり前になってこないと、野球界が何も変わってないことになる。ただ、『俺がいたね』で終わっちゃうから。次の子たちが俺のポジションに入ってきてやるようにならないと。ナショナルチームのコーチやったり、オーストリアで監督やったり、采配だったりね。今だったらヨーロッパにも日本人が何人か行ったりしてるけど、自分がいつまでも同じ立ち位置でいてもしょうがない。違う立ち位置に変わらないと、俺が進んでることも示せないから」

 30歳を過ぎ、野球への向き合い方も以前と大きく変わった。選手として価値を示そうともがき続けた20代。今は、新たな価値の示し方を見出し始めている。

「俺がやれることは、けっこうやったんじゃないかなっていうのはあるよ。若い選手が海外行きたいって言う時も、プレーできる環境を用意してあげられるようにならないといけない。それが野球界の仕組みだったり、構造を変えることになるから。サポートの役割にならなきゃいけないよな、って。そのための知識とかアイディアを、野球で海外出て学んできて、自分の引き出しに入れている。それを形にしていくタイミングには来てると思う。そういうことが、自分の役割になってきてるって気がするけどね」

 現役を退けば、自然とある程度は野球から離れていくのが多くの野球経験者の道筋だ。しかし田久保は、次の世代のために道を切り開き、後進に可能性を託そうとしている。そこまで彼を動かすものとは、一体何なのだろうか?

「自分が高校野球やってた当時、アメリカ行ったことで高野連にすごい怒られたんだよ。でも、就活のつもりで行ってるわけでしょ。別に、高野連が俺の人生のケツ拭いてくれるわけではないじゃん。そんなのも『おかしいよな』って思う。『おかしいな』って思うことがありすぎて、『これじゃいけないよな』って。傍観する人はたくさんいるけど、目をつぶってることがダサいなって思って(笑)。いろんなことが価値になる時代だからこそ、こういう道を歩んでるんだろうね」

 日本でも当たり前のようにアメリカ野球の情報が入ってくるようになり、野球を支える構造そのものの違いも見えるようになってきた。海外に魅力を感じる選手も増える一方で、日本を出て勝負するとなると、サッカーのようにグローバルでダイナミックな展開は、野球ではなかなか見られない。もちろん、野球が世界でそれほど普及していないことも事実だ。だからこそ、野球先進国が率先して、野球の価値を広めていくことが求められていると田久保は感じている。その中で、一般的には知られていないヨーロッパ野球にも挑戦し、若い世代の選択肢を広げようとしてきた。高校時代の田久保が感じた、閉鎖的な日本野球界に対する疑問と、世界の野球の魅力が、彼を動かす原動力になっているのかもしれない。

「価値がないなら作ればいい」新たなスタートを切る

 2015年シーズン後、田久保は新たなスタートを切った。現役からは退き、若い選手たちのサポート役に徹することに決めたのだ。秋には、サラリーマンに戻った。会社の業務をこなしながら、できる限り多くの名もなき野球人をサポートしていくつもりだという。それが、海外リーグのコーチとして、精力的に飛び回る三好への恩返しにもなるだろう。三好が海外に出ている間、田久保が日本での選手サポートや、これまで三好が企画してきた野球イベントなどを継続していくこともできる。

 野球界に、新たな価値を見せるために、選んだ道でもある。今まで、「価値がないなら作ればいい」という気持ちでやってきた。これからも、それは変わらない。選手でいることだけが、野球と関わる唯一の道ではない。「野球エリートでなくても、野球で生きていく道はあるはず」。田久保が歩んできた平坦でない道は、これから多くの選手たちが踏みしめ均してゆく一本の光明となるのだろう。

田久保賢植(たくぼ・けんしょく)
1984年、千葉県出身。野球選手、指導者。http://takubokenshoku.com/>

著者/宮寺匡広(みやでら・まさひろ)
1986年、東京都出身。小学校2年生で野球を始め、高校は強豪・日本大学第三高校に進学。2年間の浪人を経て慶応義塾大学文学部に入学し、野球部に所属する。卒業後、一般企業に就職するも1年半で退社、現役復帰。アメリカやカナダ、オーストラリアなど海外の独立リーグを中心に、現在も選手生活を送っている。

ディズニーによって作られた祭りと群がるメディア…広告大量投下でゴリ押し『スター・ウォーズ』の虚像

――このほど公開された映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』。第1作の公開が約40年前とあり、年季の入ったファンが多い同作。本作からディズニーが配給となり興行成績の記録を更新すると意気込み、世間でもお祭り状態だ。一方で、そうした記録を目論むあまりに、強引な営業や不自然すぎるヨイショPRも目立った。果たして、スター・ウォーズは、それほどまでに大騒ぎするほどの作品だったのか? その価値を見なおしつつ、強引とまで言われるビジネスの実態を暴いてみよう。

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最近では広告募集さえ目立つ、繁華街の立て看板でも大々的に宣伝されていた。

 2015年12月18日、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が全世界で公開された。前日譚である『エピソード1~3』(99年~05年)とは異なり、「完全なる新作」だっただけにファンの期待はひとしお。公開初日の先行予約チケットは、発売と同時に東京都内の主要劇場分は即完売した。

 しかし、蓋を開けてみると、日本での初週の週末観客動員数はトップの『妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』が約97万人の動員数だったのに対して約80万人と惜敗。『スター・ウォーズ(以下、SW)』が全国370館958スクリーン、『妖怪ウォッチ』が全国359館434スクリーンという大きく差のついた公開規模だったのにもかかわらず、だ。本当に『SW』は全世界が待ち望んだ新作だったのだろうか?

 確かに本作は前評判の通り、米国では興行収入が7億4220万ドルを超え、歴代1位の『アバター』の記録=7億6050万ドルに並ぶと目されている。日本でも、公開17日間で累計動員数は414万人に達し、興行収入は63億9980万円を記録。大ヒット作であることは間違いない。しかしながら、その成果が作品の価値そのものへの評価だったのかどうかは、疑問が出てくる。一種の「祭り」とも言える『エピソード7』の公開。その本性を解き明かすため、まずはシリーズの歴史を振り返ってみよう。

 1977年5月25日、ジョージ・ルーカスの手によって、シリーズ第1作目『新たなる希望(4)』が世に送り出された。ルーカスが文字通り身銭を切って作り上げた渾身の作品だったが、試写会ではルーカスの盟友=スティーブン・スピルバーグしか作品を褒めた人がいなかったという映画の出来に、配給元の20世紀フォックスは尻込み。公開当時のアメリカ国内での上映館数はわずか32館だったという。しかし「これまでにない映像作品だ」という口コミが広まり、大ヒットを記録。その後、80年に『帝国の逆襲(5)』、83年には『ジェダイの帰還(6)』が公開され、ルーカスの作り上げたSWシリーズは映画史に残る「クラシック」となった。

 しかしながら、その栄誉を葬ったのもまたルーカスその人が作った『エピソード4~6 特別編』と『エピソード1~3』だった。97年に発表された『特別編』は、撮影当時は実現できなかったイメージをCG技術を使って具現化。99年~05年にかけて公開された『1~3』は前3部作の前日譚を意欲的に描いた。ところが、最新技術を駆使した新たな物語に、熱狂的なファンは大激怒。批判の最大の理由は「オリジナルのエピソード4~6が持っていたクラシックな映像表現が失われた」ことだった。

 そして『エピソード3』公開から7年後の12年、ルーカスフィルムはウォルト・ディズニーに買収される。同時に『エピソード7~9』とスピンオフ作品、計5本の制作が発表されたが、ルーカス本人は同シリーズからの引退を表明した。

『新たなる希望』の公開をリアルタイムで経験した評論家の円堂都司昭氏は、公開当時の印象をこう語る。

「SF映画の王道ともいうべき『2001年宇宙の旅』や『猿の惑星』がそれ以前に話題になっていたこともあり、本格的なSFファンからはチャンバラ活劇的な『SW』はお子様向けと思われていたのは事実です。映像は革新的ですが古臭いストーリー展開なので、どこか『懐かしいなぁ』という印象がありました。また、日本での公開は78年ですが、77年にアメリカでヒットを記録した時点で情報は日本にも入ってきていた。公開に先駆けてサントラ盤やノベライズ本など関連商品を発売して、映画への期待を煽っていました。当時は角川映画がメディア・ミックス的な手法を手がけ始めた時代でしたので、同時代性がありましたね」

 こうしたメディア・ミックスを通じて「お祭り」を盛り上げていく方法は、今回のプロモーションでも用いられている。食品から衣料品に至るまで、あらゆる分野での関連商品の展開はもちろんのこと、カルチャー誌だけでなく女性誌にまで手を広げ、テレビ・スポットを打ちまくるメディア戦略が実施された。一説によると、これには史上最大規模の宣伝費が投入されているという。

 あまりの縦横無尽ぶりに謎コラボも多数出現している。その中でもファンからのヤジが飛んだのは、本編上映前に流れた『ONE PIECE』とのコラボ映像だ。ルフィが『SW』に「エール」を贈るという内容だったが、一部の映画館では不評を考慮して、上映されなかったという噂もある。いくら『SW』が使えるからといって、世界観を無視し、知名度を高めるためだけの無為なコラボレーションには閉口せざるを得ない。

 さらに公開前に話題となったのは、都内約9カ所の映画館が1800円から2000円にチケットの料金を特別料金に設定したこと。ネットを中心に「足元を見てる」「守銭奴」などとファンは猛反発。本社から『アナと雪の女王』超えの興行収入を厳命されているという日本のディズニーの策略が絡んでいるという話もあったが、映画ライターのよしひろまさみち氏は値上げの理由をこう分析する。

「TOHOシネマズは『SW』の新作公開に当たって、音響システムを最新のものに切り替えるなど、設備投資をしてきたんです。客が入らなければスクリーン数が減らされる今のシネコンの現状では、ロングランで大ヒットという昔ながらの映画のヒット作は出し難い。だからこそ短期間で設備投資の費用を回収するために特別料金を設定するというのは、特段おかしいこととは思えません」

 納得できる理由があっても、これだけの反発が出るのは、そのやり口が強引すぎるがゆえだ。それは『フォースの覚醒』の作品性にも表れている。

 ルーカスに代わり、J.J.エイブラムスが監督した同作は、『1~3』でルーカスが『SW』の世界を拡張しようとしたチャレンジは見られず、旧三部作のテイストを踏襲した、徹底的なオマージュ作品となっている。しかしそれが功を奏した。ただ、ルーカスは試写視聴前のインタビューで「『エピソード7』は、レトロで嫌いだ。自分は愛した子を奴隷商人に売り渡した」とまで述べ、作品が自分の手を完全に離れたことを強調していた。

 確かに『フォースの覚醒』からはルーカスの作家性は失われ、精巧に作り上げられた出来のいい“商品”として成立しているように思える。

 巧妙な宣伝戦略と商品作りによって成立した今回の『SW』祭り。本特集では、識者の作品論やビジネス分析などから、全世界を巻き込んだ、この狂騒的な「祭り」のダークサイドを紐解いてみよう。

(文/小田部 仁)

「俺は身勝手な男だった」【元ZOO・CAP】が語った覚せい剤逮捕後の本心、そして懺悔

<p>昨年7月7日、芸能界、そして音楽業界に衝撃が走った――元ZOO・CAPの逮捕。トップ・アーティストの座まで上り詰め、栄光をつかんだ彼が薬物に手を出してしまった理由はなんだったのか。本誌独占で彼の言葉を届けたい。</p>

悲劇の少女か、堂々たる嘘つきか? 獄中インタビューで暴露合戦をする、母親殺害事件の娘と恋人

――犯罪大国アメリカにおいて、罪の内実を詳らかにする「トゥルー・クライム(実録犯罪物)」は人気コンテンツのひとつ。犯罪者の顔も声もばんばんメディアに登場し、裁判の一部始終すら報道され、人々はそれらをどう思ったか、井戸端会議で口端に上らせる。いったい何がそこまで関心を集めているのか? アメリカ在住のTVディレクターが、凄惨すぎる事件からおマヌケ事件まで、アメリカの茶の間を賑わせたトゥルー・クライムの中身から、彼の国のもうひとつの顔を案内する。

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ジェニファー&ポールの幸せだった頃。

 テキサス州ヒルトップ刑務所内に設置された、無数の照明とテレビカメラ。その前で笑みを浮かべながらパイプ椅子に座る、ブラウンヘアーの少女。テレビ番組のリポーターがインタビューを開始すると、少女は静かに語り出す。

「母親の血しぶきが私の膝にかかりました。そして部屋中が血の海となり、私はただただその光景を見ていました」

 煌々と光る照明を浴びながら衝撃の事実を語るこの少女は、もちろんセレブやアイドルではない。現在、母親を殺害した罪で刑務所に収監されている本物の囚人だ。

 犯罪大国アメリカでは、犯罪者の犯した罪の実情にスリルを感じ、興味を持つ者が多いことから、こうしたトゥルー・クライム(実録犯罪物)を扱ったエンターテインメントが1ジャンルとして不動の地位を確立している。テレビをつければ被害者の遺族や、時に加害者までが事件の詳細を語り視聴率を上げているのだ。

 冒頭で紹介した少女もまた、テレビ番組が企画した獄中インタビューに答える加害者の一人。かつてアメリカを大きく揺るがした母親殺害事件の真相が、赤裸々に語られた。

シングルマザーの母と非行少年の弟、初めてのボーイフレンド

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それぞれ獄中インタビューに応えるジェニファーとポール。

 テキサス州ダラス郊外の閑静な住宅街で、ジェニファー・ベイリー(当時17歳)は4歳年下の弟・デイビッドと母親の3人で暮らしていた。地元の高校に通い、医者になることを夢見るジェニファーは、社交的な性格でこそなかったものの周囲からの評判も良く、ファンタジー小説を愛読するどこにでもいるティーンエイジャーだった。

 ジェニファーの母親は夫との離婚後、2人の子供たちを女手一つで育てるために夜遅くまで働くシングルマザー。母子家庭でありながら子どもたちが他の子どもたちと同じような生活が送れるよう、2つの仕事を掛け持ちして毎日夜遅くまで働いていた。

 仕事で家を留守にし、ほとんどの時間を子どもたちと過ごすことができない母親には悩みがあった。それは弟デイビッドの非行だ。デイビッドは通っていた中学校でたびたびトラブルを起こし、さらに自傷行為を繰り返していたのだ。“離婚がきっかけでデイビッドは変わってしまった”――そう考えた母親は、自分を責め立てる毎日を過ごした。

 そして、日々エスカレートするデイビッドのトラブルを心配した母親は姉のジェニファーに対してある言いつけをする。それは、四六時中デイビッドに寄り添い、自分の代わりに面倒を見て欲しいということだった。

 この言いつけによって、ジェニファーの生活は一変した。学校が終わると友人たちと遊ぶ暇もなく帰宅し、母親の代わりに家の掃除をし、食事を作り、デイビッドの世話に明け暮れた。やがて彼女は、その生活に不満を持ち始める。掃除や洗濯、食事の準備に少しでも手を抜くと母親はジェニファーに厳しく当たったからだ。ジェニファーは反発を繰り返し、母親との口論は日常化するようになっていった。それでも母親の言いつけは変わらない。学校と家とを往復するだけの毎日の中で、友達と遊ぶ時間もなくなり、勉強もしなくなり、医者になる夢もジェニファーはいつしか忘れていった。

 そんな矢先、彼女はある男子生徒に出会う。それは、同じ学校に通う1歳年下のポール・ヘンソン(当時16歳)だった。ポールは校内では有名な異端者で、悪魔崇拝に夢中になるGOTH少年だった。すらっとしたやせ形で身長は高く、伸びっぱなしの長髪が特徴的で、ハンサムというわけではなかったが、まるでファンタジー小説の登場人物のような独特のオーラで、ジェニファーは恋に落ちた。

 ジェニファーとの交際を開始したポールは、母親が一日中家を留守にすることが多かった彼女の家に入り浸るようになる。2人でエモ(エモーショナル・ハードコア)を聴き、ロールプレイングゲームを楽しみ、ジェニファーにウィッカと呼ばれる魔術の魅力を教えた。初めてのボーイフレンドであったポールの存在は、家庭環境に悩んでいたジェニファーにとってなくてはならないものとなっていった。

母vs娘&GOTH少年、繰り返す口論と家での果てに――

 しかし、ジェニファーの母親は、家に入り浸るポールを良く思わなかった。初めて会った時から激しい嫌悪感を示し、ポールの存在によって変わりゆくジェニファーを心配した母親は、ポールとの接見を禁止した。しかし、彼女は母親の思いに逆らうようにポールと会うことを辞めなかった。そして母娘はポールについて頻繁に口論をするようになり、2人の関係はさらに悪化していった。ポールにとっても、自分を否定するジェニファーの母親は目障りな存在だった。2人はそんな母親から距離を置こうと何度も家出を決行したが、行き場のないティーンエイジャーはすぐに発見され、その度にお互いの家へと引き戻されていた。

 そうした中、母親は自分に反抗し続ける娘との関係を修復したいという思いから、ジェニファーと向き合い、話し合いを設ける。そして自分への不満を一つ一つ聞き、謝罪をした。母親はまた普通の親子に戻れると信じていた。

 しかしそんな矢先、ポールが自宅から失踪したとして父親から通報を受けた警察が、ジェニファーの家へと捜査に訪れる。警察はこの時、家の中からポールの存在を発見することはできなかったが、ジェニファーの部屋からポールの衣類が入ったスーツケースを発見した。ジェニファーは家出してきたポールをかくまっていたのだ。

 この出来事で、母親はジェニファーに対して再び激昂する。そしてポールと距離を置かせるために、しばらく祖母の家か父親の家で過ごすようジェニファーに言いつけ、再び母娘は激しい口論を繰り広げた。 

 一度は埋められるかと思った母との間の亀裂が、より深いものになったジェニファー。そんな彼女に、ポールはある提案を持ちかける。それは、自分たちの関係を邪魔する母親を、殺害することだった。

笑いながらの殺害、そして幼稚な逃亡劇

 2008年9月25日、激しい口論の翌日だった。

 ポールはジェニファーの家で仕事から帰宅する母親を待っていた。深夜、何も知らずに仕事から帰った母親は2階の寝室に入ると悲鳴をあげた。そこにはナイフを持ったポールが待ち伏せしていたからだ。羽交い締めにされナイフを突きつけられた母親は、現場に居合わせたジェニファーに向かって「警察に電話して!」と叫んだ。しかし、ジェニファーは母親の願いを拒み、その場に立ち尽くしたという。そして、ポールは母親の首をナイフで切り裂き、時おり笑みを見せながら26回もナイフで刺し、殺害したのだ。

 ポールとジェニファーは、弟のデイビッドとペットの犬を連れて母親の車を盗みカナダへと国外逃亡を試みた。しかし、この無鉄砲な逃走劇は自宅から約1120km離れたサウスダコタ州で閉店後のガソリンスタンドに停車していたところを警察に見つけられ、逮捕されてあっけなく幕を閉じる。

 2人は逮捕後、仮釈放なしの終身刑に課せられる可能性があったが、司法取引に応じたためそれぞれ懲役60年を言い渡された。
 そして、事件から4年後の2012年、ジェニファーは冒頭のテレビ番組が企画した獄中インタビューに答え、ポールが行った残忍な殺害の手口、そして母親への懺悔を口にした。
  

7年越しの獄中インタビュー映像が巻き起こした波紋

 このインタビューの効果もあってか、「GOTH少年・ポールに操られた悲劇の少女」という印象を与えてきたジェニファーであったが、2015年11月に事態は再び動く。この事件を追った本『Let’s Kill Mom』が出版されたのだ。彼らが犯行に至った経緯を丁寧に描いた『Let’s Kill Mom』は、元新聞記者でノンフィクションライターのドナ・フィルダーによる粘り強い取材によって、家族のあり方や、社会に対して問題を投げかける問題作となった。

 こうした動向を受けて、テレビ番組も再びこの事件のドキュメンタリーを制作。アメリカでは家族や友人が受刑者と面会ができるように、メディアもまたそれと同等の権利を持っているため、受刑者が承諾さえすれば獄中インタビューができる仕組みになっている。刑務所によってはカメラを持ち込むことができない場合もあるが、ジェニファーやポールが収監されている刑務所では、カメラでの撮影が許可されていた。結果、冒頭のジェニファーのインタビューのみならず、新たなドキュメンタリー番組ではポールまでもが獄中インタビューに出演。そこで、「実は、母親殺害計画はジェニファーの提案だった」と衝撃の告白を行ったのだ。ジェニファーはあくまで殺害は全てポールの仕業と証言しているが、『Let’s Kill Mom』の中では、後の捜査によってジェニファーも母親殺害を手伝ったと記述されている。
 
 事件からおよそ7年たった今、獄中で過ごすジェニファーは日々、聖書を読みながら釈放までの日を待っているという。

井川智太(いかわ・ともた)
1980年生まれ。育英工業高等専門学校卒業。印刷会社勤務を経て、テレビ制作会社に転職。アシスタント・ディレクターを経てディレクターとなり、2011年よりニューヨークの日系テレビ局でディレクターとして勤務。また、その傍らフリーのライターとしてウェブを中心に執筆中。

SMAPの会見に思う――。アイドルは幸せでなくてはいけません。それを信じる人の幸せとつながっているから

――女性向けメディアを中心に活躍するエッセイスト・高山真が、芸能報道を斬る。男とは、女とは、そしてメディアとは? 超刺激的カルチャー論。

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SMAP 「スマップ・エイド」

 1月18日の『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)内の生放送での、5人による会見(あれを「謝罪会見」という言葉では表現したくない私がいます)は、SMAPファンではない人たちにも大きな話題を呼びました。多くは「ショック」という意味合いで。

 1年半ほど前になるでしょうか、私は別のコラムで、自分なりの「アイドル論」を書いたことがあります。以下、少し再現します。

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「私は、私たちは(ぼくは、ぼくたちは)、なんだってできる」とその存在で語るアイドル(私にとってのジャンヌ・モローや1987年くらいまでの松田聖子、80年代の伊藤みどりや96年に一度目の引退をするまでの伊達公子)、あるいは「私には、私たちには(ボクには、ボクたちには)、できることは限られている。でも、だからと言って、自分たちの上にいる、力の大きなヤツらに迎合も服従もしたくない」とその存在で語るアイドル(昔ならジェイムズ・ディーンとか、パンク、ロック系のアーティストなどはこちらの枠。尾崎豊もこちらだと思う。最近なら1990年代の安室奈美恵とか2002年ごろまでの浜崎あゆみの歌の世界観もこっちだと思う。同性のカリスマになるのは、たいていこちらのタイプ)が、10代の子たちにどれだけの勇気やなぐさめを与えてくれるか。

 ここに「AKB」の名前を出さなかったのには、理由があります。「歌がヘタ」だとか「可愛い子と思える子がいない」とか、そんなことはこの際どうでもいい。「AKB(と、派生するグループ)」は、私の考える「アイドル」とは真逆であることが最大の理由なのです。「大きなものが決めたことに迎合し、従わなければ、そのグループで活動を続けていくことさえ難しい。それが大前提になっている子たち」を見るのは、どうもね、つらすぎるのよ。「年端もいかない子が、お金も力もある大人に翻弄される」様子を、「物語」とか「試練」として気持ちよく消費することが、心情的にできないわけ。それは私にとって、「運営側・制作側が隠そうともしない残酷さ、酷薄さに乗っかる」みたいな部分があるのです。
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…と、こういうことを書いたのが1年半前。そして今年の1月15日にアップした、この連載の前回のコラムではこういう感じのことを書きました。

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 アイドルとは、ただ『テレビやステージでキラキラ輝いている人』のことではない。その人たちが輝いている姿を見ると、ほんの一瞬でも『生きていくのが怖くなくなる』というほどの切実さで、多くの一般人が応援している人。それがアイドルである。

 しかし、松田聖子にしろSMAPにしろ、「若さをベースにしたキラキラを放出する時期」が終わってもなお、「10年、20年、30年の長きにわたってこの『任務』を成立させるアイドルが出てきた」いうことは、同時に、「多くの人たちにとって、生きていくことが、いつまでたっても怖くなくならない」ことも意味するのです。

 やっぱりダメよ、解散なんて。くどいようですが私はSMAPオタではありません。でも、曲が好きなの。彼らのステージを見るのが好きなの。そして、そのステージを見ることで、一瞬でもいい、「つらさ」を忘れる人たちがたくさんいることを感じるのが好きなの。「いい大人になっちゃったけど、昔から好きなことが、自分のそばに、まだある。だから、なんとか生きていける」と思える人がたくさんいる。そのことが好きなの。だからダメよ、解散なんて。
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 そして、1月18日の生放送での、SMAPの会見。あの会見を見た後で、私は前回のコラムに書いた「感想」を変更するのではなく、ひとつだけ、新たな「感想」をつけ加えたいと思います。

「アイドルは、幸せにならなくてはいけない」と。

 アイドルとは、何も芸能人だけが背負う「使命」ではありません。スポーツ選手をアイドルにしている人、文筆家をアイドルとする人…、本当にさまざまなアイドルがいます。現実世界に存在しない何かしらのキャラクターをアイドルにする人もいれば、海外住まいの私の友人がマザー・テレサを挙げたように、崇高な活動をしている人をアイドルにしている人もいるでしょう。

 アイドルは、私を含む一般人に、「キラキラ」を見せてくれるだけではありません。想像すらできなかった高い壁を超えたり、分厚い殻を破る姿を見せてくれる。そして、自分の力だけでは見えなかった景色を見せてくれる。少なくとも若かりし頃の私は、アイドルのそんな姿を見て、「私ももう少し頑張れるかもしれない。自分の壁はもっと低いんだから。自分の殻はもっと薄いんだから」といった「励まし」をもらってきました。

「生きていくことの怖さ」を単にやり過ごすだけではなく、乗り越える強さを、会ったことがない他人や現実にはいないキャラクターからもらってきたのです。これは私を含む「SMAPファンではないが、自分なりのアイドルがいる人・いた人」にもわかっていただけると思います。

 だから私は、自分のアイドルには幸せでいてほしい。幸せになってほしいのです。彼ら、彼女たちの強さが、自分の強さにほんの数%でも影響を与えてくれるのを知っているから。彼ら、彼女たちの幸せが、自分の幸せと見えない場所でつながっているのを知っているからです。

 私は、それがどこまでも利己的な感情だと知っています。

 でも、同時に「それが利己的な感情だ」ということを認められる程度には大人です。だからこそ、あの会見を見たときに、SMAPファンの人たちのためだけでなく、自分のためにも思ったのです。「SMAPには幸せになってほしい」と。

 芸能界におけるアイドルが、2~3年で入れ替わるのではなく、驚異的に長いあいだ人気を博すようになった理由に、「若さをベースにしたキラキラ」だけではなく「メンバー同士の関係性」が消費されるようになったから…ということは、一般にもかなり共有されていると思います。「関係性萌え」の人は、今さら「アイドルとつきあえるかも」みたいな妄想を抱くほど子どもではない。しかし、「自分のリアルな世界、その世界にいる人々との関係性にしんどさを抱えている人が、彼らの関係性から力をもらいたい」と、心のどこかでは思っているのではないか…。私は自分の経験からそう感じるのです。

 グループ単位のアイドルが見せる「キラキラした関係性」に希望を見出していた人たちが、メンバーの誰ひとり幸せに見えなかったあの会見に動揺したりショックを受けただろうことは、容易に想像がつきます。本当に若い頃に「自分の周りの人々との関係性」にしんどい思いをしていた私自身にとって、その動揺やショックは他人事ではないからです。だから、あの会見以来、私の心の中には、薄くてぼんやりしているけれどどうにも剥がれない膜がかかったような感じになっています。

 生きることに不器用だったり、周りの人たちとの関係性に不器用だったり…アイドルは、そんな人たちのために存在します。不器用であることが「悪」だなんて、私はとても思えません。「不器用であること」を受け入れつつも生きていかなくてはいけない人たちの、その負担の重さは、かつての自分が抱えていた重さそのものでもあるからです。だからこそSMAPは幸せになってほしい。傲慢な希望だということは百も承知で、メンバーだけでなく、SMAPを作った人、SMAPを動かしている人たちも一緒になって、SMAPを幸せにしてやってほしいのです。SMAPのため以上に、アイドルを信じるすべての「ちょっと不器用な人たち」のために、強く願っています。

高山真(たかやままこと)
男女に対する鋭い観察眼と考察を、愛情あふれる筆致で表現するエッセイスト。著書に『愛は毒か 毒が愛か』(講談社)など。新刊『恋愛がらみ。 ~不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)が1月下旬に発売予定。

SMAPは解散してはいけない。木村拓哉がそれを知らないはずがありません

――女性向けメディアを中心に活躍するエッセイスト・高山真が、芸能報道を斬る。男とは、女とは、そしてメディアとは? 超刺激的カルチャー論。

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SMAP 「世界に一つだけの花」

 前回の連載の「紅白レビュー」でも書きましたが、私はジャニオタではありません。

 で、今回のSMAP解散報道については、いくつかのスポーツ新聞と週刊新潮に書いてある程度のことしか頭に入れていません。要するに「木村拓哉以外の4人は、自分を育ててくれた大恩あるマネージャーについていくことを選び、事務所を出て行く意思がある。事務所に残る意思を表明したのは木村拓哉だけ」「中居正広、草なぎ剛(変換が出ないので一文字ひらがなで失礼)、稲垣吾郎、香取慎吾の4人が脱退の意思を表明した時期より、木村拓哉が残留の意志を表明した時期のほうが遅い」というニュースを目にしたくらいです。

 先ほど、「私はジャニオタではありません」と言いましたが、かと言ってSMAPのことを何も知らないわけではありません。曲のクオリティがとても高いとか、中居くんの生歌が味わい深いとか、いろいろある「知っていること」の中のひとつに、「木村拓哉の『カッコいい』に対する嗅覚と執着」ということがあります。

 ドラマで演じる役どころや歌っているときの様子はもちろん、バラエティ番組に出ているときでさえ、木村拓哉は何よりも「カッコいい」ということを追求しているように映ります。とは言え、人間のやることに「100%の成功率」というのはありえませんから、ファンなら「見なかったことにする」、それ以外の意地悪な人間(私含む)なら「ネタにする」になってしまう言動・行動もあります。木村拓哉の場合は主にそれが「英語がらみ」で起こるようですが。フリップに書いた英単語が激しく間違っていたり、外タレに英語で話しかけたのに横にいる通訳に聞き直されてしまったり。ただ、結果としてそうなったとしても、動機そのものは「カッコいい」の追求だったわけです。

 で、その「カッコよさ」を、「芸能界の外」にいる「視聴者」だけに向けているわけではないことも、様々な機会で目にしたり耳にしたりします。印象的だったのは、2011年8月、『大竹しのぶのオールナイトニッポンGOLD』にゲストで出演した、しのぶの元夫・明石家さんまが話したこと。東日本大震災のあと、木村拓哉に電話で「お金じゃなくて、僕たちに何かできることはないですかね」と言われるも、あの震災の規模のあまりの大きさを思ったさんまが「俺は…ないなあ」と答えたら、さんまいわく「えらい怒られた」とのこと。そこまでプライベートな電話の内容を「さんまがどこかで話してくれること前提」で木村拓哉が口にしていた、と考えるほどの意地悪にはなれない私は、それを聞いたときに、「ああ、木村拓哉は『内』と『外』で、あまり変わらないんだな」と思ったのです。

 で、今回、木村拓哉のみが残留の意思を表明したという報道に関して、さまざまな意見が飛び交っているようです。「裏切り」とか「保身」なんて単語も目にしました。このコラムを書いているのが1月14日。現時点で木村拓哉のコメントは聞けていない(15日夜にラジオがあるらしい)のですが。その大前提のもとに言わせていただくと、私はかなり違った考えです。

 最初に挙げた、私がかろうじて知っている、今回の報道についての2つの事柄。「これが真実である」と仮定すれば、木村拓哉は「SMAPという『名前』の残し方」を考えていたのではなかろうか。私はすぐにそう感じたし、いまでもその考えは変わっていません。

 5人が5人とも事務所を辞めてしまえば、「SMAP」という名前は、かなりの確率で永久に消えてしまうでしょう。詳しい権利の名称・詳細は素人なのでわかりませんが、「SMAP」という名前そのものにある「権利」は、たぶん事務所のほうが持っているでしょうから。SMAPのファンにとって、「もう『SMAP』という存在が見られない」ことこそが、何より悲しいことなのは、ファンでない私にもわかる。それを防ぎたいのだとしたら、5人(と、マネージャー)の中で、誰かひとりでも、事務所と「SMAPを名乗り続けること」に関して交渉できる人物が必要になってくる。それもできれば、もっとも発言力の強い人間が「SMAPを名乗り続けることを許された」うえで、「許される人の数を増やしていく」交渉を続けていくことが最良の方法なのでは、と。ジャニーズ事務所では初の試みになるでしょうが、「所属事務所をまたいで、ひとつのグループを形成する」という、トライアル。過去には、山口百恵・桜田淳子・森昌子の「中三トリオ」とか、ちょっと前の「羞恥心」とか、いまならAKBグループが該当しますが、それをジャニーズ事務所でも可能にするならば、残るのは木村拓哉しかいないと思います。

 木村拓哉が最後まで去就の意思を表明しなかったのは、もしかしたら、4人の意思を確認し、その意思を尊重したうえで、自分の「仕事」を確認したのではないか、と思っているのです。

 これはあくまでも私の妄想にすぎません。「木村拓哉に過剰な思い入れを持ちすぎ」というご感想を持つ方がいても当然だと思います。ただ、「派閥」という言葉が、私が目にした週刊誌と新聞ですら公然と使われるようになった現在でも、私は、そうした「力学」への興味より、ファンの気持ちばかりに心を持っていかれてしまっています。つーか、「ファン」とは言えない私ですら、SMAPの歌の何曲かはすごく好きだし、解散はショックなんですよ。ファンの心中たるや察するに余りある。解散するならするで、誰よりもファンが納得する形で幕を引いてほしいし、いまはまだ、そんな状況でもタイミングでもないでしょうに。そして、賭けてもいいですが、そんなことを知らない木村拓哉じゃないでしょうに。

「アイドルとは、ただ『テレビやステージでキラキラ輝いている人』のことではない。その人たちが輝いている姿を見ると、ほんの一瞬でも『生きていくのが怖くなくなる』というほどの切実さで、多くの一般人が応援している人。それがアイドルである」と、私は以前、別のコラムで書いたことがあります。数年単位で現れては消えていくのではなく、10年、20年、30年と続いていく「アイドル」。若さをベースにした「キラキラ」だけでは存続しようがない「アイドル」。日本の芸能史において、そんな無理難題を女性アイドルで最初にクリアしたのが松田聖子なら、男性側でそれをさらにバージョンアップさせた形で実現したのは間違いなくSMAPでしょう。

 しかしそうした現象は同時に、「多くの人たちにとって、生きていくことが、いつまでたっても怖くなくならない」ことの裏返しでもあります。「それは昔から変わっていない」と言われたら確かにその通りですが、だとしたら「少なくとも、そんな思いの受け皿になってくれる存在、そんな思いを抱える人たちと一緒に年を重ねてくれる存在は出てくるようになった」とお答えしたいのです。

 やっぱりダメよ、解散なんて。くどいようですが私はSMAPオタではありません。でも、曲が好きなの。彼らのステージを見るのが好きなの。そして、そのステージを見ることで、一瞬でもいい、「つらさ」を忘れる人たちがたくさんいることを感じるのが好きなの。「いい大人になっちゃたけど、昔から好きなことが、自分のそばに、まだある。だから、なんとか生きていける」と思える人がたくさんいる。そのことが好きなの。だからダメよ、解散なんて。

高山真(たかやままこと)
男女に対する鋭い観察眼と考察を、愛情あふれる筆致で表現するエッセイスト。著書に『愛は毒か 毒が愛か』(講談社)など。新刊『恋愛がらみ。 ~不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)が1月下旬に発売予定。

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『スマスマ』は3月で終了!? SMAP解散報道の裏でテレビ局が右往左往!育ての親・飯島氏の行方は?

※1月18日発売の『サイゾー』2月号に掲載予定の記事を、事態の急変を受けて加筆修正しております。

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ジュリーさんの、政治の道具にされてしまったキムタク。今後は仲良く?

 昨年末の音楽特番に向けた動きなどから、ジャニーズ事務所内部と周辺の混乱が漏れ伝わり、2016年は新たな局面を迎えた。 1月14日発売の「週刊新潮」(新潮社)に、「辣腕『女性マネージャー』は追放! 『国民的アイドル』修復不能の内部対立 4対1に分裂! 『SMAP』解散への全内幕」と報じ、それと前後してスポーツ紙などで一斉に報道されたSMAPの解散説。こうした動きは、昨年秋ごろから具体化し、事務所内でその権利をめぐって調整が続いていたという。

「これまで、サイゾーさんでも散々いろんなうわさ話を報じていましたが、ジャニーズ事務所内の派閥争いが、一段落しそうですね。

 それにともなって、ジャニタレの出演がもろに視聴率に影響するテレビ局各局では、この1年をかけて事務所の“正統なる後継者”、藤島ジュリー景子代表取締役副社長率いる “ジュリー派”寄りにシフト【1】しているようです。SMAPマネージャーで同事務所マネージメント室長の飯島三智氏預かりの“飯島派”のジャニタレを使った番組や、番組へのグループ単位での起用を極端に減らす方向で調整しているように見えますね。特に日本テレビは露骨で、続いてTBSとフジテレビも徐々に番組を減らしているようです。『SMAP×SMAP』(フジテレビ)は、3月で放送終了だとか」(某芸能事務所役員)

 ちょっとした芸能通ならご存じだろう。昨年の1月、ジャニーズ事務所の女帝・メリー喜多川副社長は、「週刊文春」(文藝春秋/1月29日号)に掲載されたインタビューで、飯島氏とジュリー氏の後継者争いの有無について、真っ向から否定。後継者はジュリー氏であると明言した上に、取材中に突然飯島氏を呼び出し、もしジュリー氏と対立するのであればSMAPを連れて会社を辞めるよう叱責するなどしていた。

「いくらメリー氏が否定しても、各局には、それぞれ派閥の担当が決められています。例えばテレビ朝日ならジュリー派をJ1、飯島派をJ2と呼ぶといふうにね。担当者は、各派閥に属するタレントの出演番組を受け持つことになります」(同)  

 こうした担当者は、ジャニーズ事務所の要望とあればすぐに飛んでいき、時には自分と関係ないことであっても呼び出しを喰らうこともある。例えば、ドラマのプロデューサーが、自局のバラエティ番組の件で、呼び出された……といった話は日常茶飯事のようだ。

「一例としてテレビ朝日では、15年3月末まで『関ジャニの仕分け∞』を放送していましたが、そもそも視聴率が振るわずいつ打ち切られてもおかしくない状態だった。そこでジュリー氏は、15年4月クールの『アイムホーム』で、テレ朝初主演となった木村拓哉の起用を指して、『なんで木村なんかを主演に使うのよ!』とバラエティ担当に激怒。関ジャニ∞の同局引き上げをちらつかせて、新番組『関ジャム 完全燃SHOW』を強引にねじ込んだそうです」(同)

 さて、テレビ局がジュリー派に傾き、俄然注目が集まっているのが、飯島氏の動向だ。独立自体は間違いないものの、その具体的な動きは、いまだ憶測が飛び交っている状況。かねてから、独立のうわさは流れていたが、昨年秋頃から頻繁にそうした話が飛び交うようになってきた。時を同じくして、「ちょうどその頃、飯島班のスタッフが、突如異動になって現場に来なくなりました。仕事ができる人が多かったので、てんやわんやです」(制作会社スタッフ)という話も聞かれ、事務所のほうにも動きが見られていた。

 その原因は、やはり昨年初頭のメリー氏のインタビューでプライドを傷つけられたこと。また、それ以降のテレビ局のジュリー派シフトにより、仕事がしづらくなったことにあるという。一部報道では、昨年末の紅白も飯島氏はキムタク、もしくはSMAPでの司会をNHKに打診し、そのためにほかの出演者の調整にも一役かっていた。ところが紅白は、長らく嵐が司会を務めており、ジュリー氏としても飯島氏にその流れを持っていかれるわけにはいかないと、阻止するべく動いたのだという。

 ただし、ある芸能記者は、こうしたうわさに否定的だ。

「正直、飯島さんがジャニーズから独立するメリットが見当たらないんですよね。もともと、事務所のみそっかすだったSMAPを芸能界のトップグループにまで成長させた功績は確かです。そうは言っても、やっぱり事務所の一社員、後継者としてジャニー喜多川氏の後釜に座るなんて、とんでもない話ですよ。飯島氏は、事務所のマネージメント室長や子会社である『Jドリーム』の取締役に就いていて、トップクラスの待遇を受けていますし、いくらテレビ業界に影響力があるからといって、独立なんてしたら仕事は一斉に来なくなるはずです。もちろん、ジャニーズ事務所に代わる強力な後ろ盾があれば別ですが、そんな苦労をしてまで事務所を出る理由が飯島さんにあるのかはやっぱり疑問ですね。

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年末年始の動向で、注目が集まる山P。しばらくは、舞台裏でも目が離せないキーマンになりそうだ。

 ただひとつには、もともとSMAPの一マネージャーだった飯島さんですが、ジャニーさんからその手腕をみ込まれてたくさんの“不良債権”を抱えさせられています。NEWSを脱退した山下智久や、Kis-My-Ft2など、現在テレビで活躍できているのは彼女の交渉術の賜物。とはいえ、飯島さんはすべての仕事を自分で抱えてしまうタイプです。SMAPの人気がジリ貧になりつつあり、事務所内部からも仕事に横やりが入る状況では、仕事が大変。今年の9月にSMAPが25周年を迎えるにあたって、もっと力を入れたいという思いはあるでしょうね」

 確かに、ジャニーズをやめたタレントは、テレビ局が事務所の意向に気を遣うあまり、芸能界でなかなか活躍の場が見いだせずにいる例は多い。郷ひろみや本木雅弘などは、バーニングやフロムファーストのような大手プロに移籍することで、現在もスターとして活躍できている。一方で、飯島氏は各テレビ局に強い影響力を持っており、下積みが長かったKis-My-Ft2をSMAPと抱き合わせでテレビに出演させ、人気を上げた。現場では、圧力をかけるばかりのジュリー氏よりも、細かい気配りができる飯島氏びいきのスタッフが多いという。それだけ影響力があるとすれば、逆に単独の独立だと、事務所からの横やりが入り一層テレビ局内で仕事がしづらくなることも考えられる。

「そこで飯島氏は、芸能界で強い影響力を持つ大手プロに移籍するという話が浮上しています。飯島さんは、ジャニーズとは敵対するバーニングプロとも良好な関係にあるほか、手を上げたのは、田辺エージェンシーとケイダッシュ、と言われています。紅白の一件で今後、テレビ業界はジュリー派が優勢になったと見られる。ジャニーズにいても、飯島氏は仕事がしづらくなる一方でしょうね」(前出・芸能事務所役員)

 こうした状況を受けて、ファンが気になるのは、SMAPをはじめとした飯島派ジャニタレの行方だ。これまで報じられてきたのは、飯島氏がSMAPを引き連れて独立するという話だが……。

「飯島派と言われる山下智久は、出ないとされていた昨年末の『ジャニーズカウントダウン2015-2016』(カウコン)にサプライズで出演し、続いて年始の事務所の初詣にも5年ぶりに顔を出しています。また、ABC-Z、SexyZoneに加え、一昨年のカウコンには出なかったキスマイとデビュー前だったジャニーズWESTも昨年末には出演。徐々にジュリー派に移っているのかもしれません。

 結局、出ていないのはSMAPだけですね。飯島氏とSMAPの絆は強く、独立ともなれば共に、という話でしたが、さすがにそこまで抱えきれるかどうか……。

 一部報道では、飯島さんは単独で独立したいが、SMAPとの深い絆があり、キムタク以外のメンバーは共に独立するとのこと。要は、キムタクはジャニーズ事務所の人質みたいなもんなんですよ。事務所としては、飯島氏とSMAPが全員で独立して、一緒に活動されたら困るので、キムタクだけ残して、コンサートの時だけ貸し出す……という方向で調整を進めていたようです。現在はSMAPの権利関係を中心に、事務所との協議が続いていて、2転3転しているようです。飯島さんが、権利ごと……と主張したら、事務所側はキムタクを盾にして権利の主張をするのではないでしょうか? どちらにしてもこれの結果次第では、二度と本人たちからは聞けない楽曲がたくさん出てくるでしょうね」

 さて、独立の時期だが一説によれば、飯島氏の独立は、ジャニーズのカレンダーが発売される3月か、SMAPが25周年目を迎える4月とされている(CDデビューは9月)。今月末にも事務所が記者会見を開くというが、果たしてどんな着地を見せるのか?

(黒崎さとし)

【1】“ジュリー派”寄りにシフト
各派閥のタレントは以下のように言われている。ジュリー派:嵐、関ジャニ∞、NEWS、TOKIO、KAT-TUN、Hey!Say!JUMP、V6。飯島派:SMAP、Kis-My-Ft2、山下智久、Sexy Zone、ABC-Z、ジャニーズWEST。ただしWESTはすでにジュリー派に移ったという話もある。なお、それ以外のグループやメンバーは、ジャニーさん派と言われている。

「まるで酒井法子みたい…」「白シャツがあざとい」ベッキーの不倫謝罪会見でCMスポンサー総スカン!?

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ベッキーの公式ブログより。

 今日7日発売の「週刊文春」で、不倫熱愛が報じられたタレントのベッキーとバンド「ゲスの極み乙女。」のボーカル・川谷絵音。週刊誌の発売に先だって、6日夜に所属事務所であるサンミュージックプロダクションでベッキーの謝罪会見が行われた。

「会見はベッキーの一方的な謝罪のみで、記者からの質疑応答はなし。さらに川谷とは『ただの友人関係』を強調していましたが、これには現場の記者たちも呆れ顔でした。LINEでの生々しいやりとりや、ツーショットの写真など、かなりの証拠が揃っていますから、さすがに『ただの友人関係』と言うには無理があった」(記者会見に参加した記者)

 さらに今回の会見には、ただの謝罪だけではない事務所側の思惑が透けて見えるという。

「ファンや関係者への謝罪を述べていましたが、本音はCMスポンサーに対してアピールをしたかったのだと思いますよ。現在ベッキーは10社ものスポンサーと契約していますが、彼女がこんなに起用されるのは女性からの人気が高かったから。女性消費者に支持されないタレントは、CMには起用されません。それなのに”不倫”という、女性から一番嫌われる、最悪のスキャンダルを起こしてしまった。これは絶対にCM契約にもひびくことになりますよ」(芸能事務所関係者)

 イメージダウンは避けられそうになく、今あるCM契約が今後どうなるかは、危ないところだ。一方で、週刊誌発売前にも関わらず迅速に記者会見をひらいたサンミュージックにも、「スキャンダル慣れ」した芸能事務所の手腕がうかがえるという。

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