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「八方ふさがり」を認めざるを得ない……東京ビッグサイトの会場問題 再び都庁デモを実施へ

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 もはや現状は「八方ふさがり」と、関係者の多くが口にする事態となっている東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う東京ビッグサイトの会場問題。

 そうした情勢の中で、9月29日に小池百合子東京都知事が記者会見において「コミケ関連で使えるように調整をしている」と語ったことが注目を集めている。

 記者会見での小池知事の説明によれば2020年の5月1日から5日までを「コミケ関連で使えるようにさせていただくということで、いま関係者とも調整をしているところ」として、西展示棟を「コミケ関連」利用できるとしている。

 直後から、賛否を含めて注目を集めている小池知事の発言だが、この案は、すでに示されている東京ビッグサイトの使用制限が予定されている19年4月以降の対応と、なんら変わりがないものである。「コミケ関連」とはいうが、毎年ゴールデンウィークの恒例となっている「Comic1」(こみっくいち)や「スーパーコミックシティ」なども念頭に置いて5日間の使用を提示しているのかも謎。大前提として、設営などを含む5日間なのか、設営日は別なのかもわからない。前者であるとすれば、実際の利用できる日数はさらに少なくなる。

 では、実際にこの日程で行うとして、西と南の展示棟で、どれくらいのサークルが出展することができるのか。

「ちゃんと計算したことがないのでわかりませんが、1日あたりの出展数は1万サークルに満たないものになると思います」(即売会関係者)

 05年3月に開催された「コミケットスペシャル4」は、西展示棟のみが用いられたが二部の入れ替え制で出展サークル数は3,400サークル。

 広さを見ると西展示棟の1階部分の展示面積は1万7,760平方メートル。新しく建設予定の南展示棟は2万平方メートルとなっている。つまり、1万サークルに満たないどころか、かなり出展サークル数は絞られることが予想される。

 ただ、これは同人誌即売会に限った話。かねてより問題解決を訴えている東京ビッグサイトを利用する企業など、さまざまな産業に対しては満足のいく回答は、まったくなされていない。9月26日には日本経済新聞に日本展示会協会の有志による意見広告が掲載された、しかし、関係者の誰もが「事態は八方ふさがりになっている」とこぼす。

 ある展示会関係者は、以下のように語る。

「主催者側の企業は、現状の使用制限に反対する一方で、制限された場合もその部分で利用する前提でスケジュールを立てています。そこに、関連産業の事業者との温度差があることは拭えません」

 また、ある事業者からは、こんな不満も。

「さまざまな政治家が解決を訴えていますが、事態が進展しないことに不信感もあります。オリンピック期間中に東展示棟だけでも使えるようにと働きかけていた山田太郎・前参議院議員に対しても『旗色が悪くなってきたから、フェードアウトしようとしているんじゃないか』という声すら出てきています」

 そうした中、10月5日には、展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会の主催で再び東京都庁を一周するデモが予定されている。この告知文では「まさしく八方ふさがり」と率直な言葉を使い問題解決を訴えている。

 埋めがたい温度差と思惑が渦巻く中で、時間だけが過ぎていっている。
(文=昼間たかし)

2020年会場問題|署名特設サイト(デモの告知)
https://2020event.tokyo/topics/53/

問題は認識されるも、事態は何も変わらず……「2020年東京ビッグサイト問題」の行方

問題は認識されるも、事態は何も変わらず……「2020年東京ビッグサイト問題」の行方の画像1

 結局、事態はなにも動いていない。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、東京ビッグサイト(東京国際展示場)の利用が大幅に制限されることに対して、多くの利用者が反発している問題。すでに大手メディアが報じることも増え、問題解決について発言する政治家も出てくるようになったが、いまだになんら具体的な動きは見られていない。

 今年4月、東京ビッグサイトでは企業向けの説明会を実施。ここでは、当初よりも幾分か計画を「改善」。青海に設けられる仮設展示場が利用できる期間を5カ月間延長するほか、西展示棟と南展示棟の利用不可期間が2カ月短縮された。だが、20年7月~9月は全施設利用不可という状況は変わっていない。

 これは、オリンピック・パラリンピック開催期間中に、近隣でイベントを開催するとセキュリティなどに支障を来すとされているためである。

 これが東京ビッグサイト側の現段階での最終回答となっている。すでに国際的なイベントとして五輪のスケジュールが決定されている以上、これ以上の変更も、代替施設の検討も困難というわけだ。

 今年6月には、実際に利用制限によって損害を受ける展示会関係者「展示会産業で働く人々の生活と雇用を守る会」によるデモが開催された。また、MANGA議連会長の古屋圭司衆議院議員(自民)は、問題解決に向けて積極的に発言しているが、事態は遅々として動いていない。また、コミックマーケット準備会の市川孝一共同代表は「可能な限りビッグサイトを前提としてやりたいと思っている」としているものの、推移を見守っている状況である。

 つまり、現状で問題を解決するためには、東京ビッグサイトを利用する事業者による強い働きかけと、それに呼応して政治家が政治力を用いてなんらかの方法で打開策を提案することだけ。とはいえ、それは困難なことである。

 実際、6月のデモを見ても、中心となったのは会場の設営などを行う一部の業者のみ。実際に会場を利用している企業や事業者の参加は、ほとんど見られなかった。

 これまでの取材の中から見えてくるのは、この温度差。各種イベントの主催者側は「なるようにしかならない」「規模を縮小して代替会場を使用するのも仕方がない」という考えが主流。対して、一度、イベントが中止にでもなれば大損害を被る事業者は、なんらかの打開策を求めている。

 この温度差が不協和音になり、社会全体の問題、あるいは政治問題へとステージが上がる前で足踏みをしているわけだ。

 もはや、東京ビッグサイトがおいそれと予定を変更することはあり得ず、ただ混乱だけが激化していくことになるだろう。

 もう、なんらかの事情で五輪の開催が返上されるくらいしか、事態の解決はあり得なそうに見える。
(文=昼間たかし)

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