「セックスは気持ち悪い行為だと思ってたし、今も挿入に興味はない」109cmのAV監督・にしくんインタビュー
昨年の10月にSODの専属AV監督(1年契約)になることを発表した、「日本一小さいAV監督」にしくん(24)。昨年12月にリリースした1作目から、月に1回のペースでAV作品を発表しています。
彼の身長は109cm。理由は難病にあります。3歳のとき小児ガンを発病したにしくんは、抗がん剤や放射線治療などを施し翌年に完治したものの、今度は6歳のとき、身長が伸びていないことに気付き検査を受けて「ムコ多糖症モルキオ病」との診断を受けました。骨が伸びない上に変形し、車椅子の生活になる可能性もある進行性の難病です。しかし7歳で「ハイリスクな上に効果がない」と言われるも骨髄移植を受けたことが奏功し、以降は病気の進行が止まっています。
自らアダルト業界の道を選んだ彼の学生時代は、ひたすら人に会うアクティブな日々でした。一方で、セックスを「気持ち悪い」と感じ、今でも挿入シーンに興味がないと語るにしくんが、なぜAVを撮るのか?
◆前編はこちら⇒109cmのAV監督・にしくんはなぜAVを撮るのか「障害者のエロはタブーではない」
■関節は柔らかいし、外れやすい。色々と普通じゃない
――AVで絡みの撮影をするにあたって、体に負担がかかることはないのですか? 関節が外れやすい等の症状があるのでは……と。
にしくん 確かに僕の関節は柔らかいし、外れやすいし、色々と普通じゃないと思います。作品中の絡みでも、どっかで何かあるかもしれないけど、それはその時考えます。今のところは大丈夫。
――ご両親は体のことは心配されていない?
にしくん 連絡取ってないんですよ。3年前、家出のように実家を飛び出しちゃったので。妹とはたまに連絡を取り合っているので、家族も僕の居所はわかっていると思うんですけどね。父親は何でもネットで調べる人だから僕が今何をしているか知ってると思うけど、連絡は一切取っていません。母親はネットには疎いから、ある程度勘づいてるかもしれないけれど、調べてはいないと思います。うーん、どこまで知ってるのかわからない。
――家出してたんですね……無事だということさえわかれば、少なくとも安心だと思います。一人暮らしで、生活の不便を感じることはないですか。
にしくん 家の中は全然。外出時も、基本的には誰かに声かけてお願いすればどうにかなることばっかなんで。でもひとつだけ、コンビニのATMはよく行くんですけど、操作画面に手が届かないです。下から見上げて少し影が見えるんで、なんとなくここにこの言葉が書いてあるだろうっていうのを勘でとらえて、皮とかゴム製品のものを使って画面を操作していますね。
――勘で!?
にしくん 感覚ですね。「引き落とし」と「振り込み」くらいの場所は、覚えているので。だから、他は何が書いてあるのかわからないけど、この2つをわかっていればいいかなって(笑)。
――1作目の撮影終了後の打ち上げシーンでお酒を飲まれていましたが、お酒はよく飲むんですか?
にしくん 飲んで大丈夫なのかはわからないけど、健康診断ではとりあえず異常なしなので、なんでも飲みますね!ビール、ハイボール、テキーラ、シャンパン、ウイスキー、日本酒、焼酎……酔いますけど、小さい体の割には飲めます。
■虐待しているようにしか見えなくて、気持ち悪かった
――それにしても、「エロに興味があったわけではない」のにアダルト業界でAV監督、という以前に、にしくんが2015年の「第1回全日本クンニ選手権」で優勝したという情報があるんですが、これは一体……? 人前でクンニしたんですか?
にしくん いきなり話が変わった(笑)。
――日本一クンニが上手い男の称号を手にしちゃってますよね(笑)、どういうことです?
にしくん あれは本当にノリだったんですよ! AV男優の田淵正浩さんがクラブイベントをやった時に、イベントスタッフとしてお手伝いしに行ったんです。その時に出会った人が「クンニ選手権」のイベントページをシェアしていて、「こんなのあるよ、にしくん出てみる?」という流れで、軽い気持ちで参加したんですよ。当日、会場に着いたらガチで目の前でクンニをしてるし、されてるし、ビックリしたけど来ちゃったもんはしょうがない、ま、いっか! って挑みました。
――クンニ勝負はどのようにジャッジをつけてるんでしょう。
にしくん 競技場では女性がM字開脚で3列に並んでいて。トーナメント方式なので、対戦する2名が交代で1人の女性をクンニして、クンニされた女性にどちらが良かったかを選んでもらうんです。選ばれた方が勝ち進むという流れで……なぜか勝ち上がってしまっただけです。
――なぜかって。舌技に自信があったんですか?
にしくん そもそもクンニの経験がなかったです。
――ビギナーズラックですか! それはつまり童貞だったのですか?
にしくん 童貞……ではなかった。でもクンニは、もちろん行為としては知っていたけど、わざわざしたことがなかったというか。性の目覚めも僕、遅かったですよ。
――何歳くらいですか?
にしくん どちらかというとエッチなことを喜ぶというよりも、気持ち悪い・怖いって思ってました。男子校だったんで、教室でも廊下でも下ネタは飛び交ってたし、先生も堂々と授業中に猥談を話すようなオープンな環境でした。だから「男としてエロ好きなのが当たり前のことなんだ」って納得するしかなかったけれど、「でも僕は気持ち悪くて受け入れられない」っていう思いもあって、葛藤がありましたね。
――「気持ち悪い」というのは、女性器が?
にしくん いえいえ、もう、その行為が。今でも覚えているんですけど、中学1年生の頃、同級生が「AVって知ってる?」って、ネットで検索した画像を見せてきたんですね。それがフェラ画像だったんですが、僕にはそれが、女性を虐待してるようにしか見えなかった。チンコを口に入れるなんて気持ち悪い行為にしか見えなかったけど、周りは興奮してるし……。葛藤してたけど、どこで受け入れたのかな……今は気持ち悪いとは別に、思っていないです。
――二村ヒトシさんや森林原人さんも男子校出身者ですが、エロに詳しいと学校の同性から人気者になれるとおっしゃってました。
にしくん 僕はそういったことは避けて、ひとりで端っこでご飯食べて、勉強してましたね。
――性行為を気持ち悪いと思っていた中学生の時はオナニーもしなかったですか?
にしくん まだその行為をちゃんと理解してなかったと思いますけど、中学2年生が最初ですね。射精しなかったから覚えています。3年生くらいから、精液が出るようになった。それから、毎日オナニーをしてるような時期もありましたけど、今は週1~2の頻度で。性欲がそんなに強くない感じはしますね。
――インドア派でゲーム好きでエロ嫌いだった中学時代を終えて、高校進学と同時にいきなり外の世界に出て行ったんですよね。そこで価値観というか、セックス観に変化があったのでしょうか。
にしくん いきなりというよりは、徐々に……ですかね。色々と見聞きして知識が増えて、慣れたのか気持ち悪いという感情も減って。ただ、男子校ゆえに、女性とのコミュニケーションが上手にできなかったし、関わることも少なかったと思います。
――恋愛は苦手でした?
にしくん 幼稚園の頃が初恋になるとすれば、好きな女の子はいたし、その子とはよく遊んでました。高校のときも、好きな子は出来たけどうまくいかず。その時に、本当に好きなのか、ただエロい事がしてみたいだけなのか、どっちなんだろうって、また葛藤。で結局、高校のときは経験してないですね。
■挿入よりドラマでヌキたい
――アダルト業界に入るより前、AVを見ていましたか?
にしくん アダルト動画や画像を適当にネットで検索してました。AVはこの業界に入るまで買ったことなかったですね。僕の場合、あんまり他人のセックスに興味がなくて。学校や病院など、設定のあるドラマが好きで、男女が盛り上がっていく過程を楽しみたいので、絡み(挿入)になったら消しちゃうんです。
――ストーリー飛ばして絡みだけ観たいユーザーと真逆ですね!
にしくん 逆ですよね。僕は、裸になるまでのストーリーと、裸になってから挿入前までが好きです。フェラのシーンも好きだけど、挿入した瞬間、もうどうでもいいの。絡み自体に興味がない。女性の体や、そこまでの経緯とか人間模様には興味がありますけどね。
――撮影では男優としても出演してるわけで、挿入シーンの撮影もありますよね。そこに対しての抵抗は?
にしくん 心の中では抵抗はないつもりだし、女性の体は好きだけど…・・・実は全然勃たないですね。どう映ったら面白いかを考えたりしちゃうから、興奮よりも冷静が勝っちゃってるのかもしれないですね。酔ってれば興奮できるのかもしれないけど、酔ってなければ冷静(笑)。
――契約終了までに、にしくん自身が大興奮できるAVを撮ってみてもらいたいですね。でも「109㎝の変態・にしくん」というキャッチコピーですが、常に理性があるってことは、変態じゃないですよね。
にしくん ぽいですよね(笑)。
――とすると、にしくんがヌケる作品と、男性ユーザーがヌケる作品は、方向性が違うものになってしまうんでしょうか。
にしくん そんな気がします。男性ユーザーがヌケる作品は、なるべく男優が目立たなくて、純粋に女優さんの好みやエロさで選ぶものなのかなと思います。うーん、僕は、そもそもAVでヌキたいと思ってないかも。
――挿入シーンよりストーリー性を重視するなら、女性向けAVの方が好きかもしれないですね。
にしくん まだそっちの方が好きかもしれないですね。でも、それならドラマでいいんじゃないの? とも思っちゃいますけどね。映画とドラマでいいじゃんって。
――AVではなく、普通の映画やドラマでもヌケるってことで考えると、ある意味、変態かもしれないですね。でも、そこまでセックス自体に強い興味を持ってなかったのに、AVの監督や出演することに抵抗はなかったんですか?
にしくん それはなかったですね。専属契約をする前からAV業界の人と仲良くなる機会が多かったのもあると思いますが、実際にAV監督さん、女優さんや男優さんとイベントで会うこともあって、普通の人なんだ~って思うことが多くて、特に抵抗はなかったですね。
■プライベートで楽しかったセックスは、ない
――すごく淡々と語られていますけど、プライベートのセックスで、楽しいとか気持ちいいという気分になったことは?
にしくん フェラだと純粋に「すごい! 気持ちいい」っていうのはあるけど、挿入ではないかも。僕、あんまり良いセックスの思い出がないんですよ。
――えっ。初体験は高校卒業後に恋人と、でした?
にしくん 彼女が出来たことは……、厳密にはないですね。
――厳密にはない……。
にしくん 付き合うっていう感じではないですよね。仲がいい友達の延長のような。
――付き合うっていう定義は人それぞれだと思いますが、「好きです、付き合おう、イエス!」みたいなことはないってことでしょうか。
にしくん みたいな(笑)。お互いに付き合ってると認めたら、それは付き合ってるんでしょうけど、僕はそういうのはなくて。セックスもゆきずりの女性としかしたことないんです。
――ゆきずり!?
にしくん 酔っ払って、気が付いたら……ですね。そもそも人生でちゃんとしたセックスをした記憶がないです。全部酔っ払ってる。大体、相手は飲み屋で知り合った女性なんですけど。酔っ払ってついていって、起きたら知らない女性が隣にいる(笑)。
――じゃ、AVの作品がちゃんと記憶のあるセックス?
にしくん そう、あれだけです、ちゃんと記憶があるのは。
――相手女性のこともあまり覚えてないんですか?
にしくん うーん、そんなこともないですけど。タイプはバラバラな気がするんですよね。でも、年上が好きですね。酔っ払ってついていったことがある女性は、20代前半から40代くらいまでです。
――どういう流れでゆきずりセックスになるんですか。
にしくん 酔っ払ったら、なんとなく女性の膝の上で寝て、なんとなくチューしちゃって、なんとなく眠いとか何とか言って、気が付いたら一緒に帰ってるっていう。場所はほとんど相手の家です。最初にしたのはカラオケでしたけど。
――その知らない女性とイタしたあと、また会おうよとはならないんでしょうか。
にしくん なんとなくお互いに連絡交換をしないまま別れてしまうので……。だから、相手の女性はいつも違う人。1番最初の時は連絡先を交換していたのに音信普通になってしまいましたけど。
――初体験の後、音信不通に……?
にしくん あれはまだキスもしたこともない19歳の頃でした。渋谷で終電を逃して朝までどうしようかなっていう時に、ギャル系のキレイな女性が声をかけてきまして、一緒にカラオケに行ったんですよね。流れでイチャイチャして、キスして。僕が「今のファーストキスなんです」って言ったら、「経験ないの?」って相手が勝手に盛り上がっちゃって、どんどん脱いでいくから、僕は「ここから先は好きな人とやりたい」って断ったんですよ。そしたら、「じゃ、私たち付き合おうっか」って言われまして。
――いや、なんとも強引な。
にしくん 流れで進んでいっちゃって。僕はちゃんと勃たない状態だったけど、なんとかコトを終えて、「明日、ちゃんとやろう」ってバイバイしたんです。ところが翌日、電話しても出てもらえなくて……。めっちゃ傷つきましたね。
――それはちょっと悪質……強姦じゃないですか。
にしくん 今思えば。その傷が今もちょっと残ってる感じかな。
■書く・話す・歌う・踊る…手を出すのは自由
――SODの専属契約もあと残り半年ほどですが、やりきりたいことは?
にしくん 「もう1年やろっか」って言われるだけの結果を残したいです。
――売れる、ってことですよね。仮にもう1年延長したとして、さらにその先、アダルト以外の方面でビジネスをしていこうと考えていますか?
にしくん 興味のあることはめちゃくちゃいっぱいあって。3月からチーズの学校に週1で通って、チーズプロフェッショナルという資格を取得するための勉強をしてます。受験資格は特になくて誰でも受けられるから独学でも出来るんですけど、学校に行けば毎週8種類のチーズを食べられるから(笑)。
――チーズプロフェッショナル取得して何の仕事につなげる?
にしくん 飲食店経営もやってみたいんです、そのうち。何料理ってジャンルは特に決めてないけれど、どんな店をやるにしても何かしらチーズは絡んでくるな、勉強しとこ! って。お笑い芸人の養成所に通うか、チーズを学ぶか悩んだんですけど、とりあえず先にチーズを学ぶことにしました。いずれお笑いの勉強もするかもしれない。
――お話を聞いている感じだと、お笑い芸人の養成所に通っても、芸人で天下取ったるでーとかではないんでしょう?
にしくん 表現をすることが好きなので、書くか話すかをしたいんですよね。本を書いたり、講演会などもしたいし、そういう仕事にチャレンジしてみたいです。ネットは得意なので、ウェブサービスを作っちゃうのもいいし、事務所を作って、運営する側っていうのもアリかなと思ってます。タレントさんのマネジメントとか、多分そっちの方が僕の性格的に向いてるはず。時代の変化を見ながらどう稼ごうかって考えていこうと思います。
――本当にすごいバイタリティですよね。中学卒業の春休みに外に出たときから、ずっと走っているような。
にしくん 色々なもの、何でも手を出してみるのは自由なので、歌ってみよう踊ってみよう、っていうのも面白いですよね。特に自分を制限することなく、ガンガン稼いで興味の向くもの全部やっていきたいです。