「日本人男性はNG」長崎出身バリキャリ帰国子女が肌で感じた“外国人男性との違い”/上京女子・ケース4
今回で4回目を迎えた、地方から上京した女子の生態を追うルポ「上京女子」。連載を始めた当初から、私にはひとつの疑問があった。
地元から一度も出ずに満足している人がいる一方で、なぜ地元を離れて生活しようとする人がいるのだろう? 両者の違いは何なのだろう? もちろん個々に理由は違うだろうが、上京組には何か共通点があるのでは……と考えていた。
ひとつの仮定として、まず家庭環境が頭に浮かんだ。「家から出たい」という動機が上京を後押しすることもある。しかし私自身、上京しているものの、姉は同じ環境で育ったにも関わらず、一度も地元を離れることなく満足した生活を送っている。早速この仮説は成り立たない。
「それって、冒険DNAがあるかどうかじゃない?」
上京を「冒険」と表現したのは、今回の取材対象者・友梨佳だ。
今日の上京女子/ 友梨佳(仮名) 28歳 外資系企業勤務
友梨佳いわく、人間は「冒険したい派」と「保守派」の2つに別れるという。今いる場所を離れ、新しいものに触れたい、学びたいという欲求がある人が上京組には多いのでは? という推測は説得力があるものだった。
彼女もそんな冒険DNAに溢れた女性のひとり。長崎の田舎に生まれた友梨佳は、高校を卒業すると同時に「広い世界を見たい」とロサンゼルスの大学に進むことを決意する。
「アメリカの大学に行くことに決めたのは、人生で最良の選択だったと思う」
友梨佳にとって、故郷の長崎は決して心の休まる場所ではなかったそう。幼い頃に経験した両親の離婚が今も心に影を落としており、長崎をイメージすると、心温まるどころか「寂しい、心細い」という思いが去来するほどだった。
そんな長崎を飛び出した友梨佳にとって、アメリカは自由で明るく、素晴らしい土地だった。大学卒業後は1年間アメリカで出版社に勤務した後、キャリアアップをもとめて大学院に進学、MBAを取得した。
【長崎→ロサンゼルス→東京】東京は4年目で段々好きになってきた
MBA取得後、「一度、日本の社会でも働いてみよう」と帰国した友梨佳は、先に上京していた妹とルームシェアを始め、日本の企業に就職する。
彼女は、ただでさえハードな広告関係の仕事に就いた上に、久しぶりの日本生活。最初の数年間は戸惑うことが多かったという。
「日本語はめちゃくちゃ下手になってるし、仕事は忙しいし、日本社会独特の風習もあるし……最初は鬱になりそうなくらい大変だった」
日本企業での激務を数年間こなした後、やはり外資のほうが合っていると考えた彼女は、外資系企業に転職。新しい会社では年収も大幅にアップし、多種多様な国籍のチームに配属された。そこはまさに彼女の理想とする職場環境だった。
仕事環境が整ったことで、慣れなかった東京にも段々と馴染めるようになってきたという。
「東京が好きになってきたのも、仕事とかプライベートが上手くいっているからかも」
日本人男性NGな理由「日本人って女性に対する扱いがひどい」
友梨佳には付き合って4カ月目になるフランス人の彼氏がいる。5年間の友達期間を経て付き合い始めた2人だが、彼はフランスにいるため、遠距離恋愛中だ。
友梨佳は背が小さく華奢で、可愛い顔をしているので、日本人男性にとてもモテる。だが、彼女にとって日本人は恋愛対象にはならない。
「日本人男性って女性に対する扱いがひどいと思う」
友梨佳いわく「日本人と外国人では、男性が女性に対して求めているものが違う」とのこと。
「日本人男性は、対等じゃない関係を望んでいる人が多いと思う。群れの中にいる弱い女性を求めているというか。アメリカとかヨーロッパだと、自立している人同士が付き合うことが多いけど、日本の場合はそうじゃない。私は付き合うってなったら、彼氏に見下されたくないし、対等な関係でいたい。日本人男性とは対等に付き合えたことがないんだよね。求められてる女性像が根本的に違うと思うし、私は日本人男性が求める女性像にはなりたくない」
2016年10月に「世界経済フォーラム」が発表した、男女平等の度合いを表す「ジェンダー・ギャップ指数」によると、日本は先進国G7の中で最下位、世界144カ国の中でも111位だった。2015年度の101位からさらに後退している。
日本が、賃金格差や管理職比率において男女差が圧倒的に大きい国だということは明白で、他国と比べると「自立していない女性」や「自立していない女性を好む男性」も多いのだろう。彼女のように、海外生活を経験した女性が、従属を求めてくるような男性との付き合いを避けたいというのも当然だ。
「それに、遺伝子って自分と違うものを求めるって言うでしょ? 自分と違うバックグラウンドを持っている人って面白いし、一緒にいるだけで知らなかったことを学べるし、刺激になるんだよね」
長崎には絶対帰らない。今はここが私の居場所
本連載では、いつも最後に「いつか故郷に帰りますか」という質問をしてきた。でも彼女の場合、聞くまでもなく答えは明らかだった。
「長崎には絶対帰らない」
「当然だ」といわんばかりに友梨佳は断言した。「彼女の居場所はどこなのか」と尋ねると、
「ちょっと恥ずかしいけど、仕事が上手くいって、最高のチームで心の底から笑えた時に、ここが私の居場所なんだなって思う」
さらに、仕事を続けながら、将来的には、アメリカかヨーロッパに移住しようと考えているそう。
「会社の海外支部に転勤させてもらえないか交渉しているところ。なんとなく骨を埋めるのは日本じゃないって気がしてるから」
「激務だし、上手くいかなくてひとりで落ち込むこともあるけど、今は仕事が一番楽しいから、一生仕事は続けたい」
バリバリ仕事に打ち込んでいる彼女だが、いつも仕事が順調なわけではもちろんない。それでも彼女の冒険は、まだまだ続きそうだ。