高級和菓子は毒親の味!? 視聴率は下降するもメディアの暴力に斬り込んだ『明日の約束』第3話
「楽しければいいって人間も、世の中にはいるんです。理由があれば騒げるし、憂さを晴らすこともできる。ハロウィンも事件を楽しむのも同じですよ。無関係な奴らは、当事者や関係者たちを叩くのが楽しいんです。世間にとって、あなたたちは生徒を殺した悪者だ」
高校生の息子を自殺で失ったことから、セレブ主婦・吉岡真紀子(仲間由紀恵)から「息子は学校に殺された」と犯人扱いされているスクールカウン…
「長野辰次」の記事一覧(4 / 5ページ)
「楽しければいいって人間も、世の中にはいるんです。理由があれば騒げるし、憂さを晴らすこともできる。ハロウィンも事件を楽しむのも同じですよ。無関係な奴らは、当事者や関係者たちを叩くのが楽しいんです。世間にとって、あなたたちは生徒を殺した悪者だ」
高校生の息子を自殺で失ったことから、セレブ主婦・吉岡真紀子(仲間由紀恵)から「息子は学校に殺された」と犯人扱いされているスクールカウン…
「ランドセルの中にしまってあったラブレターは破って、捨てておきました。日向(ひなた)がこんなにいやらしい子だったなんて、ママはショックです」
井上真央主演の社会派ミステリー『明日の約束』(フジテレビ系)。なんか古臭くて野暮ったいタイトルだなぁと思っていたら、日向が小学生の頃に母親の尚子(手塚理美)から強制的に書かされていた交換日記の名前だったんですね。第1話に増して、第2話の…
フジテレビ系『明日の約束』番組サイトより「わたしは母親が好きになれない。中学のとき、ブラジャーを買ってくれなかった。小学生のときは、むりやり交換日記をつけさせられた……」
さわやかな朝の始業シーンで、井上真央演じるスクールカウンセラー・日向(ひなた)先生が母親をディスするナレーションで幕を開けた『明日の約束』。井上真央の連ドラ主演は、視聴率の低さしか話題にならなかったNHK大河ドラマ『花燃ゆ』以来、民放では『トッカン 特別国税徴収官』(日本テレビ系)以来となる5年ぶり。嵐の松本潤との結婚間近と囁かれていた井上真央がドラマ復帰作として選んだのは、謎の自殺を遂げた高校生を追い詰めた真犯人を見つけ出すという超シリアスな社会派ミステリーです。実在の事件を題材にしているだけに、関西テレビがどこまで人間の心の闇をリアルに描いてみせるのか興味津々。あえてイバラの道を進もうという井上真央の女優魂もあっぱれです。
テレビ朝日が『ドクターX』『相棒』『科捜研の女』と盤石の人気シリーズをシフトした今秋のドラマレースの中で、スクールカウンセラーが子どもたちの心の闇、その闇を生み出す元凶となっている“毒親”と対峙することになる本作はダークホース的な存在でしょう。所属事務所を移籍し、今年30歳を迎えた井上真央が背水の陣で挑む主演ドラマとして注目されていますが、いちばんの見どころは最凶毒親・吉岡真紀子を演じる仲間由紀恵の不気味さ。夏休み明けから不登校状態が続いている高校1年生の息子・圭吾(遠藤健慎)の下駄箱にあるシューズが微妙にズレていることを見逃さず、「外出するときは、ママにちゃんと言ってね」とにっこり。また、圭吾がバスケット部の先輩にメールを送るときは、背後にぴったりと張り付いて文面をしっかり検閲。仲間由紀恵の映画初主演が『リング0 バースデイ』(00)の貞子役だったことを思い出し、背筋がブルッとします。
20分拡大となった初回スペシャルでは3人の毒親が登場。バスケット部のマネージャー・増田希美香(山口まゆ)は、遊び好きな母親・麗美(青山倫子)のネグレクト地獄の真っただ中。17歳の誕生日なのにプレゼントはおろか食事代さえもらえないことから、空腹に耐え切れずに希美香はスーパーで安そうなショートケーキを万引き。あっけなく、スーパーの店員・香澄(佐久間由依)に見つかる騒ぎに。それでも男のことしか考えていない麗美にブチ切れ、自分の母親を流血させてしまう。病院で塞ぎ込む希美香に、「わたしはアドバイスすることしかできない。でも、母親から自由になるという選択肢もあるってことを覚えておいて」と優しく伝える日向先生。保護者でもなく、教育者でもない、第三者であるスクールカウンセラーならではの冷静な判断です。
カウンセラーとしては有能な日向先生ですが、そんな彼女が手を焼いているのが実の母親である尚子(手塚理美)。交際中の本庄(工藤阿須加)と居酒屋デートして夜遅くに帰ってきた日向に、「一緒にケーキ食べよう」と無理強いする尚子。善意の仮面を被った毒親に、ずっと優等生で過ごしてきた娘は逆らうことができない。一発一発のパンチはささいでも、毎晩のように浴びるとこれはキツい。さらに輪を掛けて強烈なのが、仲間由紀恵演じる吉岡真紀子。息子の圭吾を自分の監視下に置いておきながら、圭吾が自宅から抜け出すと、日向が勤める高校に電話して、「取り返しのつかないことになったら、どうするんですか!!」と教員全員に息子探しを強要する。モンスターマザーは自分が動かずとも、他人を操るのが抜群にうまい。
プチ家出した圭吾を、いち早く見つけたのは日向先生。夜の体育館で圭吾の悩みに寄り添おうとした日向先生に、圭吾は「先生にお願いがあるんです。僕とつきあって」と告白。まぁ、これはカウンセラーとクライアントにありがちな事例でしょう。「それはできないわ」と大人の対応をする日向先生。ところが翌朝、自宅に戻った圭吾は部屋で首を吊ってしまうという衝撃の初回ラスト。次回からは真紀子が息子の自殺の原因は学校側にあると大攻勢を仕掛けてくることは必至。職場に行けば真紀子の過激な口撃にさらされ、自宅に戻れば母・尚子のネチネチした嫌味に耐えなくてはいけない。日向先生どーなる!?
放送上ではクレジットされていないものの、本作の原案的な存在となっているのがノンフィクション小説『モンスターマザー 長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』(福田ますみ著、新潮社刊)。長野県のスポーツ名門校で実際に起きた高校生の自殺の原因をめぐり、保護者だった母親が高校の校長たちを殺人罪などで訴えた裁判の顛末を追ったもの。地元ではかねてから問題視されていた虚言癖のある母親の巧みな言葉に、ベテラン人権派弁護士や県会議員、有名ジャーナリストたちがすっかり丸め込まれたために騒ぎが大きくなり、裁判に巻き込まれた生徒や教員たちに深い心のキズを残す結果に。また、学校側が開いた記者会見の様子をセンセーショナルな演出で煽ったテレビ局をはじめとするマスメディアが、事件の真相を大きくミスリードさせてしまったのです。ひとりの高校生の心の闇が、現代社会の歪みとシンクロして広まっていった実に恐ろしい事件でした。
鎌倉を舞台にした『明日の約束』は、脚本家・古家和尚のオリジナルストーリーとなっていますが、そんな真っ暗な社会の闇に一条の光を差し込ませることができるのでしょうか。初回視聴率は8.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、シリアスなドラマとしてはまずまずの数字だと思います。重いテーマに、これからさらに数字を落としていくのか、それとも井上真央 vs 仲間由紀恵の闘いがエスカレートして数字をじわじわ上げていくのか。手塚理美と文鳥のピッピちゃんのやりとり&「明日の約束」と名付けられた交換日記の内容ともども目が離せそうにありません。
(文=長野辰次)
<p> 現代社会に甦ったアドルフ・ヒトラーが毒舌コメディアンとして人気を博し、マスメディアをたやすく牛耳っていくブラックコメディ『帰ってきたヒトラー』(15)はドイツ本国で大ヒットしただけでなく、日本でも2016年に劇場公開され、単館系では異例といえる興収2億円のヒット作となった。『帰ってきたヒトラー』のほかにも、ホロコーストを指揮したアドルフ・アイヒマンに焦点を当てた『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』(15)や『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』(15)、アウシュビッツ裁判が開かれるまでのドイツの実情を暴いた『顔のないヒトラーたち』(14)、ナチ犯罪の爪痕を描いた復讐劇『手紙は憶えている』(15)など様々なヒトラー&ナチ関連映画が日本で公開され、それぞれ話題を呼んだ。</p>
<p>テレ東や ラッパーどもが 夢のあと。</p>
<p> 地方都市で燻り続ける30男たちが、ダラダラした青春にケジメをつけるために東日本を縦断した深夜ドラマ『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』も今回が最終話。川崎クラブチッタでの初ステージというサイコーの祭りを終えた直後の高揚感と地味な日常へと帰っていく侘しさが入り交じった珠玉のエンディングとなった。</p>
<p> 毎週流れたライムスターが歌う主題歌は、今回は特別バージョンの「SR Remix」。オープニングからスペシャル感が漂っている。前回から引き続き、「SHO-GUNG」のチッタでのライブが臨場感たっぷりに映し出される。1曲目の『SRサイタマノラッパー』のテーマ曲で観客の心をつかんだIKKU(駒木根隆介)、TOM(水澤紳吾)、MIGHTY(奥野瑛太)たち。DJの和夫(ロベルト吉野)はすでに汗だくになっている。</p>
<p>青春の残像を追い求めて東北路を旅した「SHO-GUNG」たちも、ついに旅の終着点・川崎クラブチッタに到着した。ラス前となった『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第10話では、ライブステージが幕を開け、同時に彼らの青春のフィナーレのカウントダウンも始まる。</p>
<p> 前回、極悪系ヒップホップグループ「極悪鳥」の赤羽アジトからひと晩がかりでようやく脱出することに成功したMIGHTY(奥野瑛太)。群馬から大森へと向かう元女子ラッパーのアユム(山田真歩)とミッツ(安藤サクラ)の乗る車に同乗し、川崎へと向かう──。ところが車が走り始めた途端に、アジトを棄てて逃亡をはかる「極悪鳥」の大河(橘輝)と海原(板橋駿谷)を見つけ、車を停めてしまうMIGHTY。自分を拉致した上に暴行を加えた大河たちに、わざわざクラブチッタに行くことをバカ正直に伝える。「なんで、すぐ逃げずに戻ってきた?」といぶかしむ大河。</p>
<p>MIGHTY「もう逃げるのやめようと思って。新しい人生やり直したいんで」</p>
<p> かっこ悪いということは、なんてかっこいいんだろう。最終回まで残り2話となった『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』第9話だが、今週のIKKUとMIGHTYはいつも以上に超ダサい。周回遅れのドンジリもいいところだ。そんなメンタリティー&コンディションで、クラブチッタのステージに立つことができるのか?</p>
<p> これまで一度も東京に足を踏み入れたことがなかった埼玉在住のほぼニート男・IKKU(駒木根隆介)が、川崎へ行く手前の東京都北区赤羽で途中下車した前回。クラブチッタでのライブまで残り2日、兄タケダ先輩(上鈴木伯周)が「SHO-GUNG」のために作ってくれた新曲を手に入れて盛り上がっていたIKKUとTOM(水澤紳吾)だった。ところが、ひとりシミジミとタバコの煙をくゆらせていたMIGHTY(奥野瑛太)は、かつてパシリをさせられていた極悪系ヒップホップグループ「極悪鳥」の大河(橘輝)、海原(板橋駿谷)たちに見つかり、拉致されてしまう。<br />
</p>
<p> 1話につき正味20分しかないため、なかなか青森から川崎まで辿り着くことができない『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』。だが、第8話はかつてなかった大展開。伝説のタケダ先輩が兄弟で並び立ち、ついにIKKUが東京都内に足を踏み入れるという、『SR』史上に残るメモリアルなエピソード回となった。</p>
<p> ここまでの流れを簡単に振り返ると、埼玉県にある福谷市で暮らすほぼニート男・IKKU(駒木根隆介)が川崎クラブチッタでのライブイベントのオープニングアクトに応募したところ、抽選に当たったことが旅の始まり。もうすぐ嫁との間に子どもが生まれる相棒・TOM(水澤紳吾)を強引に誘って、ヒップホップグループ「SHO-GUNG」を再結成。そして、かつて仲間だったMIGHTY(奥野瑛太)を連れ戻しに、青森県大間へと向かった。前科者であることから実家に戻ることを拒んでいたMIGHTYだったが、「人生をリセットする」ために最初で最後のステージに立つことを決意する。<br />
</p>
<p> 30歳をすぎた男たちが定職に就かずに、自分たちが唯一熱くなれたヒップホップ道を極めんと東北を旅する『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』。川崎クラブチッタでのライブステージまで、残り3日間というカウントダウン状態を迎え、第7話は「SHO-GUNG」の中心メンバーであるIKKU(駒木根隆介)が「おいおい、そりゃねぇだろ~!」と全視聴者がツッコミを入れたくなる迷いを見せ始めた。単にドラマの後半戦を盛り上げるためのハードルではなく、IKKUのアイデンティティーに関わる重要な問題らしい。</p>
<p> 前回に続いて、福島県猪苗代湖近くにある世にも珍しいヒップホップ寺「竹田寺」で修業を始めたIKKU、TOM(水澤紳吾)、MIGHTY(奥野瑛太)の3人。これまでグウタラ生活を送ってきた3人にとっては、朝早い寺での規則正しい生活はかなりしんどい。『SRサイタマノラッパー』(09)では東京に向かって走るトラックをBB弾で撃つという、狂気をはらんでいたTOMだったが、修業僧から水鉄砲で起こされるとは感慨深い。</p>
<p> 東北道を縦断するロードムービー『SRサイタマノラッパー~マイクの細道~』。自分たちに直接関わること以外には関心のなかった「SHO-GUNG」のメンバーが、被災地にどう向き合うのか気になっていた視聴者も多かったはずだ。2011年4月、入江悠監督は『SRサイタマノラッパー』(09)、『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(10)に続く新作『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)の劇場公開を控えていた。大震災の直後であり、公開は延期すべきという声も上がるピリピリした緊張感の中で、『ロックンロールは鳴り止まないっ』は上映された。先行き不透明な社会状況に不安を感じている人たちへ、ほんの少しでも励ましになれればいい―そんな想いでの上映だったと思う。</p>
<p> その後、入江監督は『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12)で震災後ますます経済格差が顕著になっていく下流社会を描いているが、メジャー系の作品では震災について直接的に触れる機会はなかった。震災から6年。入江監督、そして入江監督の分身でもある「SHO-GUNG」の3人はようやく被災地に立つことになった。</p>
Copyright (C) 2025 恋愛相談.com All Rights Reserved.