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TBS『情熱大陸』に出たくてしょうがない漫画家が描く異色のコミックエッセイ『情熱大陸への執拗な情熱』

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『情熱大陸への執拗な情熱』(幻冬舎)

『情熱大陸への執拗な情熱』(幻冬舎)は、『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(新潮社)で話題を呼んだ漫画家・宮川サトシ氏がウェブサイト「オモコロ」で発表した、『情熱大陸』(TBS系)に出たくて出たくてしょうがない日々を描いたコミックエッセイを書籍化した1冊だ。

 宮川氏は、『情熱大陸』に出演すること=“上陸”と呼び、いつでも上陸できるよう心がけている。まずは、毎朝のジョギングを始める。それは健康づくりでもなんでもなく、ただ『情熱大陸』っぽい、という理由から。車を運転する時も、左折しながら受け答えができるよう訓練済みだ。洗濯物をたたむ時も、「この男の朝は洗濯物をたたむことで始まる……」「意外と庶民的な朝である」などと窪田等さんのナレーションを当てる。そうやって、己の生活を『情熱大陸』に寄せながら、日々生きている。

 そんなある日、故郷の岐阜県で小・中学校が一緒だった幼なじみ、海洋生物学者のワタナベ(渡辺佑基)氏が、生物学界のインディ・ジョーンズとして“上陸”を果たす。宮川氏は信じられない思いでオンエアを確認すると、そこには懐かしの彼の実家、そして母校まで映し出されていた。12回くらい見返した結果、ロードバイク通勤などのいかにも『情熱大陸』な“大陸感”がだんだんとしゃくに障ってきたため、「ほかの同級生たちもイラッとしていないか正直なところを聞いてくる!」と、東京の自宅を飛び出す。だが、故郷の町で待ち受けていたのは、同級生たちの称賛の嵐だった――。

 あまりの『情熱大陸』への出たさに、当時連載していた妖怪ギャグ漫画の中に、己の情熱大陸への執着心をなんの脈絡もなくぶち込んだこともあった。しかし、担当編集の感想はいまひとつ。「次からはもっと普遍性のある話でお願いしますね」と言われ、大きなショックを受ける。誰しもが『情熱大陸』への愛があるわけではないのだ。

 さらには「押してばかりではいけない。大陸側を引き寄せよう」と、『情熱大陸』と距離を置く、“離陸”生活を始めたり、『情熱大陸』とは相反する『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)に魂を売りそうになったりしながらも、尽きない『情熱大陸』への愛を描いていく。

 最終話では、本書の担当編集・高部さんとの、こんなやりとりが描かれている。

高部「そもそもあの番組を好きになったきっかけって何なんですか?」
宮川「高部さんは毎日食べてる白いご飯を好きになったきっかけなんて覚えています?」

 そろそろ、葉加瀬太郎氏の「Etupirka」は聴こえてきただろうか? その飽くなき『情熱大陸』への情熱を応援したくなる1冊だ。
(文=上浦未来)

●みやがわ・さとし
漫画家。1978年生まれ。岐阜県出身。東京で暮らす地方妖怪たちの悲哀を描いたギャグ漫画『東京百鬼夜行』(新潮社)で2013年デビュー。最愛の人を亡くした哀しみを描いて多くの共感の声を生んだエッセイ漫画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(同)は、WEBマンガサイト「くらげパンチ」で累計500万PVを突破し、話題を呼んだ。著書に『宇宙戦艦ティラミス』(新潮社)、『そのオムツ、俺が換えます』(講談社)、『僕!! 男塾』(日本文芸社)など。

破壊神ゴジラに命を吹き込んだ男の汗だく昭和史! CGにはない重みと妙味を感じさせる『怪獣人生』

<p> 2017年8月7日、ゴジラ俳優が亡くなった。1954年に劇場公開された大ヒット映画『ゴジラ』で、怪獣ゴジラのぬいぐるみ役者(スーツアクター)を務めた中島春雄さんが88歳の生涯を終えた。14年に新書版が発売された中島さんの自伝『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』(洋泉社)を読むと、怪獣映画の金字塔となる第1作『ゴジラ』の撮影現場の熱気をありありと感じることができる。</p>

<p>「G作品」と表紙に書かれた奇妙な台本を、東宝撮影所で中島さんが渡されたのは25歳のとき。当時の東宝は所属俳優がおよそ200人いたが、スター級の「Aホーム」と大部屋俳優の「Bホーム」とに分かれていた。「Bホーム」はさらに2つに分かれ、東宝に入って5年目になる中島さんはエキストラや吹替え(スタント)もやるB2の役者だった。</p>

「警察庁長官狙撃事件」の真犯人はなぜ黙殺された? 凶悪犯たちの肉声を聞け!『昭和・平成 日本の凶悪犯罪100』

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『昭和・平成 日本の凶悪犯罪100』(宝島社)

 いつの時代も、殺人、強姦、強盗、放火など、スキャンダラスな事件が起こるたびに報道合戦は過熱、疑者の生い立ちや精神分析、近所の住人のコメントなど、さまざまな側面が取り沙汰される。だが、過熱するメディアの報道が、本人の声を取り上げることは少ない。そして、一定の時間がたつと、「世間を震撼させた」事件のニュースバリューはなくなり、別の話題へと移り変わっていく。

 別冊宝島編集部による『昭和・平成 日本の凶悪犯罪100』(宝島社)は、凶悪犯罪の犯人たちの肉声を取材したルポライターによる記事を集めた一冊。塀の中で、凶悪犯たちは深い反省に沈むばかりでなく、時に冤罪を主張し、時に意気揚々と自分の「功績」を語っている。そんな彼らの素顔を、本書からのぞいてみよう。

 2015年、淡路島で5人を殺害した平野達彦は、神戸拘置所の面会室でルポライター・片岡健に対面すると、真顔で事件の真相を「ブレインジャック」と答えた。犯行の数年前からFacebookやTwitterなどで「日本政府は何十年も前から各地で電磁波犯罪とギャングストーキングを行っている」と訴え、近隣住民を「日本政府の工作員」と中傷。裁判では「被害者は私であり、私の家族です」と語っている。判決公判で死刑を宣告されるも、顔色ひとつ変えなかった理由について「電磁波攻撃という、死刑以上のことを何年もされていますからね」と、悪びれる様子もない。彼は、いまだ被害者に謝罪するどころか、電磁波攻撃という妄想をまくし立てている。

「桶川ストーカー殺人事件」は、一定以上の年代であれば、ほとんどの人が覚えている事件だろう。1999年、JR桶川駅前で女子大生の猪野詩織さんが、元交際相手・小松和人の配下の男によって刺殺されたこの事件。主犯である和人が屈斜路湖で自殺したことにより、真相解明は困難を極めた。裁判の結果、和人の兄である小松武史がこの事件の首謀者のひとりとされたものの、彼はその容疑を否認し続けている。取材に対して、武史は「脅しをかけられた」「恐ろしい」と、弟に対する恨みつらみを証言。また、実行犯である久保田祥史も、裁判の中で「武史からの依頼であると、虚偽の供述をしていた」と認め、冤罪の可能性は高まる。この事件では、埼玉県警上尾署が詩織さんからの被害相談に対してずさんな対応をしていたことから批判にさらされたが、その裁判の結果も同様にずさんなものだった可能性が持ち上がっているのだ。 

 地下鉄サリン事件の直後となる、95年3月30日に、当時の警察庁長官・國松孝次が狙撃され、重傷を負った事件は、犯人が見つからないまま、10年に時効を迎えた。しかし、この事件の「真犯人」だと自ら主張しているのが中村泰という人物。02年に名古屋で現金輸送車を襲撃し、無期懲役刑に服している中村は、チェ・ゲバラに憧れ、ニカラグア革命戦争に参加すべくアメリカで射撃の腕を磨く。そんな彼は、地下鉄サリン事件以降も、容疑者を検挙できない警察の対応に業を煮やし、オウム信者を装って警察庁長官を狙撃することで警察のオウムに対する危機感を煽ろうとした。長官狙撃事件をオウムによる犯行と踏んだ警察は、次々と信者を逮捕。中村のもくろみは成功を収めた。だが、「世に知られないままに消えてしまうことに多少とも心残りを覚えていた」という中村は、時効成立前から狙撃事件の犯人であることを自供する。しかし、そんな「真犯人の証言」は、警視庁公安部がかたくなに否定したといわれている。真相は、いまだ闇の中だ。

 凶悪犯たちの胸の内は、必ずしも裁判だけで明らかにされるものではない。塀の中までを取材し、事件の真相を解明しようとするルポライターたちの執念に脱帽するばかりだ。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

た、たまらん! ちっぱいから巨乳まで、全男子の夢をかなえる写真集『原寸大おっぱい図鑑』がヤバい!!

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『原寸大おっぱい図鑑』(一迅社)

 人気グラビアアイドル総勢30人のおっぱいを原寸大で掲載した写真集『原寸大おっぱい図鑑』(写真:須崎祐次/一迅社)が、ネット上を中心に話題となっている。

 8月1日の「おっぱいの日」の翌日に発売された本書は、菜乃花や青山ひかる、森田ワカナをはじめ、A~Kカップまでを網羅。さらに、独自の“π周り”データ(脇から谷間までの距離)や“やわらかさ”まで掲載されているというから、まさに男性にとっては夢のような写真集だ。

 担当編集の前田さん(女性)によると、「もともとは職人さんやお相撲さんの手のひらを原寸大で載せて比べるという企画を考えていたんですが、それでは面白くないということで、『じゃあ、おっぱいだったらどうですか?』と提案したら、編集部内ですごい盛り上がりまして……」という。

 実は前田さん、これまでに天木じゅんの写真集『もしもうちの猫がかわいい女の子になったら』や、『なぞって楽しむ おっぱい練習ドリル』『wrap the BOOBs 着衣巨乳写真集』などを手がける、一迅社の“おっぱい担当”。本書には、女性ならではのこだわりも光っているようで……。

「“図鑑”ということで、あまりゲスい感じにならないよう、資料みたいな感じで、きれいめなデザインにしました。また、おっぱいを美しく見せるために、見開きではなく単ページにおっぱいを掲載しました。その結果、B4サイズという、かなり大きめの書籍になってしまいましたが(笑)」(同)

 今回登場する30人のグラドルは、ネットなどで人気をリサーチし、最終的に50人からセレクトしたという。AカップからKカップまで網羅するというコンセプトだったが、意外にもAカップは少なく、見つけるのに苦労したとか。逆に一番多いのはEカップだったという。

 ちなみに、本書に掲載されている“π周りデータ”とは、いったいなんなのか?

「これは完全にオリジナルなんですが、結局、カップ数って、トップとアンダーの差になるので、トップがすごくあってもアンダーが大きかったりすると、カップ数も下がってしまうんです。でも、今回は純粋におっぱいの大きさが知りたいということで、おっぱいの円周というか半周を測りました。あとは、やわらかさもあったほうが妄想しやすいかなと(笑)。やっぱり紙の難点は触れられないことなので……」

 そのほか、巻末ではおっぱいの形についても解説。前田さんいわく、「しずく型(正面から見るとしずくが垂れているように見えるおっぱい)って、あまりいいイメージがない方もいると思うのですが、大きくなればなるほど、しずく型になる傾向にあるので、実は幸せな形なんです。また、今回登場したグラドルの中には、なかなかお目にかかれない半球型(全体に均等のふくらみがあり、バランスのとれたおっぱい)の方や、マンガでしか見たことのないつりがね型もいらっしゃいました」とのこと。

 現在、第2弾も構想中で、「今度はグラドルではないバージョン」ということなので、楽しみに待ちたい。

印刷しすぎて!? 村上春樹の『騎士団長殺し』バカ売れでも“大赤字”の怪現象

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『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』(新潮社)

 今年の上半期、出版業界で大きな話題を集めたのが、村上春樹の最新作『騎士団長殺し』(新潮社)だ。発売時には大きな話題となり、ベストセラーランキングでも上位に入っている同作だが、業界内での評価は違うようだ。

『騎士団長殺し』は、村上春樹にとって『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)以来4年ぶりの長編小説。発行元の新潮社は、初版で異例となる100万部を刷ると、発売前にさらに30万部の増刷をかけ、計130万部を用意した。これについて、書店関係者は語る。

「これだけ大量に刷るというのは、もちろん『売れる』という自信があったからでしょうが、背景には近年の書籍の売上傾向もあると思います。ここ最近、出版界ではごくごく少数の本が爆発的に売れる状況が完全に定着しており、一度勢いがつくと、いつまででも売れ続けます。村上春樹レベルになると、新作が出るだけでニュースになりますので、ロケットスタートを狙ったのでしょう。売る側の書店としても、『村上春樹の新作が○万部到達!』というのがニュースになれば、普段はあまり書店に立ち寄らないような人が来店してくれることが期待できます。『売れているから読んでみよう』という人が必ずいますから」

 こうした販売戦略が実り、大手出版取次・日販(日本出版販売)が発表した2017年上半期ベストセラーランキングで、『騎士団長殺し』は総合2位、文芸書ランキングでは1位にランクインした。しかし、業界内ではあるウワサがささやかれているという。大手出版社社員が語る。

「上半期ランキング1位の『九十歳。何がめでたい』(佐藤愛子著/小学館)が累計90万部ですから、2位の『騎士団長殺し』は、それ以下。しかも『九十歳。何がめでたい』は昨年8月発売なので、さらに割り引かなくてはいけません。『騎士団長殺し』は、我々が伝え聞いたところでは60~70万部しか売れていないようです。ほかの業界の方には、『本なんて紙とインクだけでしょ』『本なんて腐らないんだから』などと言われますが、印刷・製本には莫大な費用がかかりますし、売れ残った何十万部の本をストックしておくのはこれまた費用がかかりますし、税金の問題もあるので、返本は程なく断裁に回されることになります。ハードカバー本の断裁にも当然莫大な費用がかかりますので、“本当に”130万部刷ったのだとすれば、断裁率は5割近く。これでは出版社は大赤字だと思います」

 コンスタントに数十万部を売り上げる作家など、日本には片手で数えるほどしか存在しないが、それでも判断を見誤ると赤字とは……。出版業界とは、なんとも因果な商売のようだ。

個人的な記憶が染みついた、70枚70通りのTシャツ物語『捨てられないTシャツ』

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『捨てられないTシャツ』(筑摩書房)

 Tシャツの捨て時とは、いつなのか?

 首元がよれよれになって破れたり、イラストがはげたり、「あまりにも」みすぼらしくなった時だろうか。Tシャツは、そう高い代物ではないにもかかわらず、何年も捨てられないことがよくある。

『捨てられないTシャツ』(筑摩書房)は、都築響一氏の有料週刊メールマガジン「ROADSIDE’ weekly」上で毎週連載されていた記事をもとに構成された1冊だ。

 都築氏はTシャツについて、いつ頃からか、こんなことに気づく。通常、ファッションは値段が高かったり、有名ブランドだったり、誰が見ても「ヨシ」とされるものがリスペクトされるワケだが、Tシャツは違う。「誰も見たことないもの」や、「ヨシなのかダメなのか判断に迷う」ほうがリスペクトされたりする。そして、「ヨシなのかダメなのか判断に迷う」Tシャツには、着用する本人の確固たる意思や、根拠のない自信、なによりも個人的な記憶が染みついていることが多々あるのだ。

 本書に登場するTシャツの持ち主は、年齢、性別、職業だけが記載されている。この話はあの人だな、とわかるようなかなり著名人の場合もあるが、9割方は一般人。けれど、一般人から語られるTシャツ物語にこそ、とてつもないすごみがある。

 例えば、福島県出身/デザイナー/33歳女性の場合。

 彼女の家はちょっと変わっていた。7人暮らしで、父親と母親は、町で変わり者呼ばわりされているじいちゃんに働いた金をすべて上納し、1カ月約1万円で、家計のやりくりを命じられていた。母親は発狂してはたびたび実家へ帰り、戻ってきては、じいちゃんにコテンパンに叱られる。そんな日々の中、父親がじいちゃんの命を狙って風呂場を襲撃するも、失敗。そこで、家族そろって夜逃げ同然で家を出た。健康ランドで1カ月過ごした後、父親の就職が決まって埼玉へ。学校生活は順風満帆だったが、両親の仲は破綻し、友達に何も告げられないまま、父親と福島へ戻ることに。ところが、福島では“標準語で気取っている”とイジメに遭い、不登校で勉強が遅れ、高校受験も失敗。荒れに荒れた生活の中、父親が再婚。家からも追い出され、16歳で付き合っていた彼氏の家に預けられる。親にも見放された時に、味方してくれていたばあちゃん。そんなばあちゃんを描いたオリジナルTシャツ――。

 ものすごく要約してしまったが、このドラマにもなりそうな濃厚さは、なんなのか? 本書には1ページでさらっと書かれた話もあるが、多くは数ページを費やして、Tシャツの持ち主がどんな家庭環境で育ち、青春時代をどんなふうに物事を考えて過ごし、社会へ飛び出して今に至るのかまでつながっていく。そういった人生の回想録のようなものであり、15ページにも及ぶ短編小説レベルのものまである。

 音楽を聴くと、あの頃を思い出すように、捨てられないTシャツには、個人の何か強烈な記憶を呼び覚ますスイッチがあるのかもしれない。
(文=上浦未来)

●つづき・きょういち
1956年東京生まれ。編集者。現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。93年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』(ちくま文庫)を刊行。97年、『ROADSIDE JAPAN』(ちくま文庫)で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS’weekly(http://www.roadsiders.com/)を配信中。Tシャツのサイズは3L。

年間被害総額は400億円! バッタ博士の狂気の奮闘記『バッタを倒しにアフリカへ』

<p>『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)の表紙を一瞥すれば、なんとフザけた学者なのか……と、あきれてしまうかもしれない。昆虫学者の前野ウルド浩太郎氏は、幼少期にファーブルに憧れ、夢は「バッタに食べられること」という、バッタを愛してやまない男だ。だが、バッタに触るとじんましんが出てしまうという、どこかキワモノ感が漂っている……。</p>

<p> しかし、彼のアフリカ・モーリタニア共和国でのフィールドワークを記した本書を読めば、彼が一流の昆虫学者であると同時に、純粋な心でバッタと向かい合うひとりの人間であることがわかるはず。ポスドク(博士研究員)として研究費の調達に悩み、バッタの大発生を粘り強く待ちながら、ようやく彼は成功を手に入れたのだ。</p>

体罰、セクハラ、長時間拘束……生徒も顧問も悩まされる「ブラック部活」の実態

<p> 6月12日、埼玉県の私立武蔵越生高校において、外部コーチがによる体罰の様子を記録した動画がTwitterに投稿され、7万以上のリツイートを記録。新聞、テレビなどのメディアでも広く報道され、同校では、このコーチを解雇。謝罪を行った。</p>

<p> 体罰や長時間練習によって、生徒や顧問を追い詰める部活動は「ブラック部活」と呼ばれるようになり、問題視されている。2012年、大阪市立桜宮高校ではバスケットボール部のキャプテンを務めていた2年生の男子生徒が、部活における顧問からの体罰、暴言、理不尽な指導を理由に自殺。神奈川県横浜市の公立中学校では、行きすぎた指導によって柔道の生徒の脳の静脈が切断され、いまでも後遺症が残っている。<br />
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常識でがんじがらめの世界の日常を覆す、表現者たちの物語『アウトサイドで生きている』

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『アウトサイドで生きている』(タバブックス)

『アウトサイドで生きている』(タバブックス)は、超独特の世界観を持つ“アウトサイダー・アーティスト”の生きざまが詰まった1冊だ。

“アウトサイダー・アーティスト”とは、いわゆる専門的な美術教育を受けず、独学自習で制作を続ける人々のことを指す。彼らの生み出す作品を眺めていると、「なぜ?」「なんのために?」という思いが浮かんでくるものの、解釈不能すぎて思考停止してしまう。けれど、同時に世間の常識を飛び越えて、膨大な時間や尋常ではないエネルギーの過剰さに―――凡人は打ちのめされる。

 著者は、おそらく日本唯一のアウトサイダー・キュレーター・櫛野展正氏。知的障害のある人が利用する福祉施設でアート活動支援を16年間も行い、昨年、広島県福山市に「クシノテラス」というアートスペースをつくった。世の中から無視され、正当な評価を受けていない作品の価値を見直そうと奮闘している。

 本書には、櫛野氏が全国を飛び回って出会った18名の表現者たちが登場する。カブトムシ、クワガタ、コガネムシの死骸を2万匹以上集めて体長180cmもの千手観音像をつくり上げた大正8(1919)年生まれの男性、ご近所からも愛されている、ショッキングピンクの作品であふれるアートハウスの家主、行政の反対を押しのけてアートを描く路上生活者、25年以上も料理のイラストを描き続ける歩行障害を患った元調理師などなど。

 彼らの作品は、コスパ、コスパと、生産性や効率性が叫ばれる世の中で、特にもうかるわけでもなさそうに見える。いや、絶対にもうからないだろう。そのモチベーションは一体なんなのか?

 人の出入りを拒むように茂みに覆われ、廃材などでつくられた無数の仮面が建物全体に貼りつけられた「創作仮面館」の館主・岡田昇(自称)さんは、こんなことを話している。

「ゴミからゴミをつくったんです。俺は世間のゴミだしね」

「子どものときに両親が亡くなって、ずっと1人で生きてきてね。仲間もいなければ友だちもいない。モテたこともないんだから。(中略)そんな人間がやることは、1人でできることでしょ。絵を描くとか、最終的にみんなそこに行くんですよ」

 本書には、岡田さんのように孤立したり、愛人と息子が失踪し、寂しさから彼らの名前を堂々と店舗外観に描く、ド派手なカラオケ喫茶マスターなど、何かを表現しなくては生きていけない人が数多く登場する。会社員の人もいるし、世間で言うところの“道を外れている”人もいる。立場も暮らし方もバラバラだが、彼らは誰になんと言われようと自分のやりたいことを続け、好きなように生きている。

 誰かのせいにして、やりたいことをできないことにしていないか? ページを閉じたとき、そう突きつけられた気がした。
(文=上浦未来)

●くしの・のぶまさ
日本唯一のアウトサイダー・キュレーター。1976年生まれ。広島県在住。2000年より知的障害者福祉施設で介護福祉士として働きながら、福山市鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」でキュレーターを担当。2016年4月よりアウトサイダー・アート専門ギャラリー「クシノテラス」オープンのため独立。社会の周縁で表現を行う人たちに焦点を当て、全国各地の取材を続けている。クシノテラス http://kushiterra.com/

ワンレン、ボティコンだけじゃない……JK、クールジャパンを生み出した「バブル」再考『東京バブルの正体』

<p>「ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?」</p>

<p> 今年のサラリーマン川柳コンクールの第1位には、こんな作品が選ばれた。今ではすっかり揶揄の対象となっている「バブル」という時代。日本中が好景気に沸いた30年前、日経平均株価は3万8,000円を超え、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「24時間戦えますか?」といった言葉を胸に、日本人が最も自信にあふれていた。そんな時代の姿をいま一度捉え直そうとするのが、ルポライターの昼間たかし氏による本書『1985-1991 東京バブルの正体』(MM新書)だ。</p>

<p> 一体なぜ今、バブルを再考する必要があるのだろうか?<br />
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