「05本」の記事一覧

アウシュビッツ、チェルノブイリから福島の旧警戒区域まで……『ダークツーリズム入門』で巡る81カ所の「負の遺産」

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『ダークツーリズム入門 日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅』(イースト・プレス)

“ダークツーリズム”とは、何か。

 それは、戦争や災害をはじめとする悲劇が起きた現場を巡る旅のこと。代表的なものでいえば、アウシュビッツやチェルノブイリなどがある。『ダークツーリズム入門 日本と世界の「負の遺産」を巡礼する旅』(イースト・プレス)には、後世に残したいダークツーリズムスポットが、世界と日本で81カ所が網羅されている。入門書として、これまで“意識して”ダークツーリズムを体験したことがない人に向け、比較的アクセスしやすい場所が多く取り上げられている。

 だが、このダークツーリズムは、まだまだ日本には浸透していない、新しい旅の形。本書に登場するダークツーリズムの第一人者である、観光学者の井出明氏は、東日本大震災から約8カ月後、「観光による被災地の復興」をテーマにした記事を発表した。その中で、「悲劇の記憶を見せることで復興に寄与する可能性がある」と伝えたものの、当時、ほとんど理解を得られなかった。「みんなで地域を盛り上げようとしているのに、なぜそんなことを言うんだ」「被災地の復興を阻む行為じゃないか」と。震災後には、被災した建物を残すべきか否かについても、大きな議論が巻き起こった。「つらい記憶がよみがえる」「後世の人々に恐ろしさを伝えたい」と、意見は真っ二つに割れた。

 けれど、現場が残っていると、やはり強く訴えかけるものはある。個人的に、カンボジアの首都・プノンペン市内にある、もともと学校だった「トゥール・スレン虐殺博物館」を訪れたことがある。カンボジアでは、1970年代後半の旧ポル・ポト政権時、偏った思想のもと、国民の4分の1ともいわれる大量虐殺が行われた。そのリアルな現場のひとつが、博物館になったスポットだ。

 ここでは、わかっているだけでも、2万人もの罪なき人々が投獄され、処刑された。実際に訪れてみると、敷地内に入るだけで、重苦しい空気が流れ、少しずつ気分が悪くなっていく。館内には、拷問を受け、亡くなった遺体が放置されていたベッドが置かれた独房がある。今はどうか知らないが、15年近く前に訪れた時は、独房の中へ入ることができた。何気なく足を踏み入れた瞬間、全身にずどん、と重みを感じ、思わず尻もちをつきそうになった。あたりを見回しても、誰かがいるわけでもない。そのあと、欧米系の観光客がやって来て、ゆっくりと歩いて独房内を見学していたが、わたしはあまりの恐怖で、その場に長くいられず、博物館を出た。それから3日間ほどは、怖くて、よく眠れなかった。そんな体験は、人生でそれきり。その感覚だけは、なぜか今もとてもリアルに覚えている。

 本書では、20名近くの執筆者に加え、旅好きで知られる作家の角田光代氏、バックパッカー界の重鎮である旅行作家の下川裕治氏も、自身の体験を語っている。一体、どんな場所へ行き、どんな衝撃を受けたのか。悲劇を繰り返さないように、後世に伝えるためにも訪れておきたいスポットや体験談が、この1冊に詰まっている。
(文=上浦未来)

●風来堂(ふうらいどう)
編集プロダクション。国内外問わず、旅をはじめ、歴史やサブカルチャー、地域文化まで、幅広いジャンル&テーマで取材・執筆活動を展開している。編集制作を担当した本に、『世界ダークツーリズム』『日本のふるさと百景』(洋泉社)、『秘境路線バスをゆく』シリーズ(イカロス出版)、『全国ゲストハウスガイド』(実業之日本社)、『NHK世界で一番美しい瞬間』(三笠書房)、『路線バスの謎』(イースト新書Q)など。
http://furaido.net

【書評】地下アイドルブームの核心に迫る一冊  ―姫乃たま『職業としての地下アイドル』

<p> 世の中には「知らない方がいいこと」がたくさんある。</p>

<p> 好きなタレントの裏の顔や、社会の闇につながるような世界、はたまた世間の人の平均年収や好きな相手の恋愛経験など。とにかく「知らない方が幸せだった」と思うことには事欠かない。</p>

<p> 一方で、人には知的好奇心というものがある。「知らない方がよい」「知ったところで何の役に立つのか」そう思えるようなことでも、「それでもいいから知りたい」という気持ちが勝って調べてしまう。そこに好奇心を満たされた満足感がついてくることは多いだろう。</p>

「謎だらけ」リンダパブリッシャーズのラノベレーベル「出版予定中止→取り下げ?」騒動でわかっていること

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リンダパブリッシャーズ公式サイトより

 先週末、業界内外で注目を集めた出版社・リンダパブリッシャーズのラノベレーベル「レッドライジングブックス」を中心とした新刊書籍の出版中止をめぐる騒動。

 すわ、倒産かと思いきや、出版中止のリリースが消える新たな展開となり、さまざまな臆測が流れている。

 この騒動のはじまりは先週後半のこと。リンダパブリッシャーズが「当社の9月以降の新刊の出版取りやめについて」というタイトルで「レッドライジングブックス」で予定されていた書籍の刊行を中止する旨の告知を同社サイトで公開したものである。

 同時に、既に刊行が予定されていた作家陣がTwitterで悲痛な叫びをツイートしたことで、一気に話題となった。

 リンダパブリッシャーズは2006年に創業。TSUTAYA事業を中心に据えるカルチュア・コンビニエンス・クラブ及びニッポン放送と共催した「日本エンタメ小説大賞」など複数の公募制の賞を実施。映画化された水野宗徳の小説『おっぱいバレー』の版元としても関心を集めていた。

 ライトノベルレーベル「レッドライジングブックス」は昨年立ち上げられたもので「WEB投稿小説大賞」を実施するなど精力的な活動を続けていた。

 そんな出版社が告知した突如の出版中止。

「これは、倒産するのではないか」と騒ぎ立てる声が方々から聞こえてきた。

 ところが、週明けになり状況は急変。

 公式サイトから出版中止の告知が削除されたのである。

「ホームページに電話番号も掲載されていません。なので、会社を訪問してみたらオートロックで中に入って話を聞くこともできず……事情はまったく不明です。ただ、普通に考えると土日の間に資金繰りがなんとかなったということではないでしょうか」(大手紙記者)

 ただ資金繰りの問題と考えるのも疑問が残る。というのも、登記簿を見ると、同社の取締役にはカルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ企業役員が多数名を連ねている。

 実質、巨大グループの一部門ともいえる企業が、にわかに資金繰りが悪化するとは思えない。

 代表取締役の名前も公式サイトでは「新保克典」となっているが、登記簿を見ると「新保勝典」と記載されているなど、さまざまなところで「?」マークが点灯する企業。出版中止の告知取り下げで、刊行予定だった書籍がどうなるのか、注目したい。
(文=特別取材班)

膨大な情熱と調査が生んだ、作りたくなるレシピ46品『海軍さんの料理帖』が誕生するまで

<p>「この製法で7割から8割は、合っていると思います」</p>

<p> 新宿の高級喫茶店で、テーブルを挟んで座った取材相手は力強く話した。その背後には、彼の丹念な取材と実践に裏打ちされた自信が輝いていた。</p>

<p> この8月に発売された有馬桓次郎・著『海軍さんの料理帖 明治~昭和まで 歴史で辿る日本海軍レシピ46品』(ホビージャパン)は、発売前から、ぜひ取材をしてみたいという期待を抱かせてくれた本であった。</p>

14年間タイの刑務所で服役した男の獄中記『求刑死刑 タイ・重罪犯専用刑務所から生還した男』

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『求刑死刑 タイ・重罪犯専用刑務所から生還した男』(彩図社)

『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)、『クレイジージャーニー』(TBS系)、『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』(テレビ朝日系)など、いまや海外を巡るバラエティ番組は百花繚乱。日本では見ることのできない驚きの文化や景色が、視聴者の目をくぎづけにしている。だが、そんな番組では取り上げられない風景を描くのが、『求刑死刑 タイ・重罪犯専用刑務所から生還した男』(彩図社)だ。著者の竹澤恒男氏は、日本に覚せい剤を密輸しようとしてタイの空港で逮捕され、14年にわたって現地の刑務所に服役していた人物。彼の体験談から浮かび上がってくるのは、日本とはまったく異なるタイの刑務所事情だった。

 2002年、竹澤はタイのドンムアン空港の出国ゲートで、覚せい剤「ヤーバー」1,250錠を所持していたところを逮捕された。そのまま麻薬取締局で取り調べを受けるも、通訳の日本語能力がお粗末すぎ、ろくな会話にならない……。さらに驚くのが、日本では考えられないずさんな裁判。国選弁護人と打ち合わせをして、いざ裁判が開始されると思いきや、なんと弁護士にドタキャンされてしまった! 困り果てた竹澤を見かねて、偶然傍聴席に居合わせた女性弁護士が片言の日本語を通じて弁護をするも、薬物事件に関する知識はゼロ。その結果、検察側は竹澤に対して死刑を求刑。1審の判決は通常よりもはるかに重い終身刑、2審、3審の判決は懲役30年を言い渡された。こうして、タイの地で犯罪者となった竹澤は、殺人、強盗、強姦、薬物犯などが収容される重罪犯専用刑務所「バンクワン刑務所」に移送された。

 刑務所といえば、刑務官の厳しい監視のもとに、囚人たちが規則正しい生活を送る――というイメージを持つ人がほとんどだろう。しかし、バンクワン刑務所では、そんな日本人の常識はことごとく覆されてしまう。

 定員の倍近い6,200人が収容されるバンクワン刑務所では、規律が緩みきっていた。現金の所持が黙認され、囚人が売店を経営して、日用品、食商品、そしてタバコも販売されている。酒の販売はなかったが、囚人たちはブドウやパンを使って密造酒づくりに精を出していた。また、携帯電話やドラッグなども密売人の手によって売買されており、サッカー、タイボクシング、サイコロなど、あらゆる種類の賭博が行われていた。

 そんなバンクワン刑務所では、トラブルは尽きない。金の貸し借りをめぐって囚人同士による乱闘や刃傷沙汰が発生することも日常茶飯事。ためらいなく賄賂を受け取る刑務官は、囚人を棒でリンチし、撲殺することもある。もちろん、死因は「病死」として処理される……。

 刑務所生活が驚きの連続なら、そこに収監された囚人たちも常軌を逸していた。麻薬犯罪で捕まったレディーボーイや、国王への不敬罪を犯した者、さらには何人もの子どもたちを強姦した仏教の僧侶といった、いかにもタイらしい犯罪者だけでなく、ロシアの武器商人、イラン、ナイジェリアなどの麻薬密売人。その中に、竹澤ら何人かの日本人も含まれていた。

 暴力が渦巻くバンクワン刑務所で、竹澤はタバコのバラ売りや差し入れ品の転売といった商売を行いながら長い年月を過ごした。自炊の許された刑務所内で日本食を振る舞ったり、ラジオや本などの息抜きはあったものの、金や所持品の盗難、借金のトラブル、そしてジャンキーからあわや殺されかけるといった危険な日々について、竹澤は「史上最悪の場所」「悪夢といっていいような時間を過ごした」とつづっている。ようやくこの「悪夢」から逃れたのは、逮捕から14年後。国王による特赦の恩恵にあずかった竹澤は、日本へ強制送還された。

 東南アジアでは、ドラッグが身近に手に入るが、営利目的の密輸は、ほぼすべての国で死刑が求刑される。竹澤は、当時を振り返り「私のようになりたくなければ、絶対に手を出してはいけない」と記す。バンクワン刑務所の恐ろしさを知れば、どんな人間でも絶対に麻薬密輸に手を染めることはないだろう。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

女性誌だけは豪華付録で好調も……2017年上半期雑誌販売金額が大幅に減少していた

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「sweet」2017年9月号(宝島社)

 電子出版市場が好調の一方で、雑誌の落ち込みはさらに続く。そんな2017年上半期の出版市場の状況が明らかになった。

 出版科学研究所の発行する「出版月報」7月号に掲載された2017年上半期の分野別動向によれば、紙の出版物全体では販売金額は7,281億円で前年同期比5.5%減。うち雑誌の販売金額は、3,327億円で8.5%という大幅な減少となっている。

 中でも注目されるのが「週刊少年ジャンプ」(集英社)の部数減少。昨年末に200万部を割った同誌は、年明けから一気に部数を減少し、180万部台まで縮小するに至っているのだ。

 コミック誌では、「月刊flowers」(小学館)が、萩尾望都の『ポーの一族』の新シリーズの連載で部数を大きく伸ばしたことを除けば、軒並み減少が続いている。「ちゃお」(同)は、4月号で自走式ロボット掃除機を付録につけるという手に打って出て完売となったが、発行部数そのものは減少している。

 この、豪華な付録がつくと売上が伸びる現象は、ほかのジャンルでも同様。女性ファッション誌では「KERA!」(ジェイ・インターナショナル)などが休刊する一方で、付録が豪華な「sweet」(宝島社)などは好調である。

 この付録商法で部数を競い合っている女性誌だが、中でも注目したいのが「美人百花」(角川春樹事務所)である。この雑誌、毎号の付録がすべてケースの類いなのである。

 最近の号を見てみると、7月号は「アレクサンドル ドゥ パリのミニ財布」、8月号は「ジル スチュアートのマルチブラシケース」、9月号は「メゾン ド フルールのマルチアクセサリーケース」と続いている。興味のない人にはまったく意味不明だろうが、この雑誌が扱うスタイルのファッションを求める女子にとっては付録が十分に購入動機になる雑誌のようである。今さらではあるが、半ば雑誌本体のほうがオマケになっている感は否めない。

 このジャンルを除けば、雑誌は軒並み不調である。男性誌もアダルト誌も市場は縮小。週刊誌系でも「AERA」は1割前後落ち込んだことが指摘されている。

 どうも雑誌は、さらに淘汰される時代へと入っているようだ。

 対して、伸びは鈍化したものの前年同期比で21.5%も伸びたのが電子出版市場である。ただ、伸びたとはいえ、まだ規模は小さく、販売金額は1,029億円に過ぎない。この内訳をみると、コミックが777億円。書籍が140億円。雑誌が112億円となっている。

 以前と変わらず、電子出版の市場の大半はコミックによって支えられているという構造。今後、電子出版がどのように普及していくかは、まだ不透明といえるだろう。

 こうした中で、もっとも変化を見せているのは出版流通である。雑誌の低迷による輸送量の減少によって、出版取次では土曜日に書店に本の配送を行わない土曜休配日を、昨年より8日多い13日に増やしている。

 また、Amazonでは各取次で在庫していない書籍を日販が出版社から取り寄せる「日販バックオーダー発注」を6月末で停止。出版社への直取引の強化を始めている。

 こうした流通の変化によって、実際の雑誌・書籍のあり方はどう考えていくのか。いまだ、明確な答えを持つ人はいない。
(文=昼間たかし)

言うことを聞かない母の頬を何度も平手打ち……50代独身男が経験した、ひとり介護生活の限界『母さん、ごめん。』

<p> 東京都だけでも58万人。全国に広げると、634万人を数える要介護者数。今後、高齢化が加速すれば、この数字はますます伸びていくだろう。さまざまなメディアが報道しているように、今、介護現場には深刻な危機が訪れている。</p>

<p> 科学ジャーナリストの松浦晋也氏(以下、敬称略)は、2014年から2年半にわたって、認知症となった母親の自宅介護を経験した。それまで介護とは無縁だった彼は、悪戦苦闘しながらその記録を『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』(日経BP社)として上梓した。</p>

男の娘“RYU”の写真集『P@R@ N0M@L』発売中だよ~!

『P@R@ N0M@L』/RYU

 現在・日刊サイゾーの関連メディアである「おたぽる」の監修で“男の娘”の写真集を制作し、販売している。RYUの『P@R@ N0M@L』だ。

 「para nomal」とは「超常現象」を意味する。RYU自身が命名したものである。

 80ページに渡るこの写真集は、昨年から今年にかけて撮りためた彼女(?)の素が投影されている。

 浜辺でのワンシーン、JKコスをした日常的風景、ランジェリー姿の気を抜いた瞬間、そして浴槽でのリラックスタイム、全てが自然であり、何気ない一瞬をとらえたものだ。

 その表情は最高の笑顔のものもあり、どこか物憂げなものもあり、性別を超越してしまった「男の娘」としての自分こそが素の自分なのではないか、と思わせるどこか葛藤じみた雰囲気も感じさせる。

『P@R@ N0M@L』/RYU

 彼女自身が命名した写真集のタイトルにもそれをにわかに感じ取れやしないだろうか。全体的にアート性の高い1冊といえるのだ。

 男の娘ファンはもちろんのこと、単純な女装ファン、はたまた男装ファンなど全て興味ある人たちに響くであろう今作は、彼女の厚意により、初回限定特典ROMも付いてくる。

 彼女が写真集に自分自身を納めようとした理由を、この夏、一緒に写真集から感じ取ってみようではないか。

【RYU PROFILE】
 アイドルや声優、ゲーム関連、一般企業の音楽制作、またメタルバンド”BLOOD STAIN CHILD”のギタリスト、メインコンポーザーを務めるBLOOD STAIN CHILDは世界的にも知られており、海外からも多く支持されている。
国内ではアニソンレーベル、ランティスからシングルもリリース。過去に男の娘ゲームのヒロインのモデルとなったり、イベントで企業広報を務めるなど、その活動は多岐にわたっている。

【購入はこちらから!】
『P@R@ N0M@L』/RYU

P@R@ N0M@L/RYU
総ページ:80P
出演者:RYU

犯罪多発地帯、勘違いセレブが多い……東京で絶対住みたくない街はどこだ!?

犯罪多発地帯、勘違いセレブが多い……絶対住みたくない街はどこだ!?『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』の画像1
『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』

 今年6月に発売された『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』(駒草出版)が、たった2カ月で4刷3万部を突破し、売れまくっている。著者である「東京DEEP案内」編集部がTwitter上で、「まさかの電車広告展開中です。世も末ですね」とつぶやいているが、失礼ながら、本当にこれほど世間に受け入れられるとは!

「東京DEEP案内」といえば、“街の不都合な部分”にあえて首を突っ込んで、あれこれ書き立てているアングラ臭漂う街歩きの人気サイト。その管理人である逢阪まさよし氏が、これまでの膨大すぎる情報を元に、「汚れ役」を買ってやろうではないか、と独断と偏見により、これまでは住みたい街ランキング上位に入っていた街を含め、「住みたくない街」をバンバンぶった切っている。

 サイト開設の10年目にして集大成的な1冊であり、絶対住みたくない街(駅)ランキングや沿線別の街の傾向と対策のほか、首都圏バラック建築鑑賞会、東京場末タウン散歩、首都圏ドヤ街訪問などの記事も掲載されている。

 この本の何がスゴイって、なんといっても、サイト同様、圧倒的すぎる情報量である。実際に街を隈なく歩いた感。「巷の本屋で売られている名の知れた有名大学卒の学者肌な方々が書かれた都市論・文化論・フィールドワーク、その他諸々の有難い“ご高説”が記された一流の書籍とはまるで別次元にある」と書いてあるが、まさにその通り。

 たとえば、住みたくない街の見分け方が、身近で現実的なのである。逢阪氏は、ヤンキー、品位に欠けた非常識人、自己中心的で粗暴な人間が大勢を占める地域を「DQN地域」と命名。

 そのDQN地域をどう見極めればいいかといえば、たとえば駅前。手っ取り早いのは、パチンコ屋の数だそうで、どの街でも、3~4軒くらいはあるのが普通だが、特に繁華街でもないのに、千代田線の町屋駅周辺のように7軒もあると、ちょっとアレな地域なのかな、と考えるのだとか。逆に言えば、原宿や目白のように一軒もなければ、地域住民が街の環境にかなりうるさいことが推測できるとも。

 また、駅前でよく見かける、ミスドやドトールコーヒーといった喫茶店などのチェーン店も、地域によっては喫煙席と禁煙席の配分が全然違うらしく、喫煙席の配分が高ければ、どうしてもDQN地域である可能性が高くなる。ほかにも、スーパーの種類、ゴミ収集所、自販機など、ここを見るべき、ということがいくつも記されている。

 そうか、こうやって街の概要をつかみ、ディープな街を掘り下げていくんだなという片鱗も見えるわけだが、逢阪氏の嗅覚は別格のように思える。その理由は、あとがきを読んで、わかった。自身の生い立ちについて触れており、大阪市内の市営住宅が建ち並ぶ低所得者層の非常に多い地域で育ち、子どもの頃に住んでいた団地では、高層棟から投身自殺は毎年恒例、ビール瓶で頭をかち割られて道端で大量に血を流しているオッサンを見たこともあり、中学校ではシンナー中毒者が常態化し、学級崩壊が日常の世界だったという。

 そんな逢阪氏は、世の中に何を伝えれば役に立つのかを考えたら「DQN地域には住むな、ろくな人間にならんぞ」と面白おかしく伝えるしかない、とちらりと深いメッセージ性ものぞかせている。

 首都圏の闇を知って、消去法で住みやすい街を探す――。お化け屋敷感覚でのぞいてみては?
(文=上浦未来)

●DEEP案内 http://tokyodeep.info/

母親の浪費癖、ラブホテル生活、野宿の果てに……17歳少年による「川口祖父母殺人事件」の悲劇

<p> 孫が祖父母を殺害する事件は、決して珍しいものではない。ここ数年でも、2015年に山梨県河口湖町で高校3年生の孫が80代の祖父母を、16年には兵庫県赤穂市で19歳の孫が介護をしていた祖父母を殺害。今年7月にも、神戸市北区で26歳の孫が「誰でもいいから攻撃してやろう、刺してやろうと思った」と、祖父母ら3人を刺殺している。</p>

<p> しかし、14年に埼玉県川口市で当時17歳の少年が金欲しさに祖父母を殺害した事件は、数ある祖父母殺しの中でも極めて特殊なケースだ。毎日新聞記者・山寺香が記した『誰もボクを見ていない』(ポプラ社)を一読すれば、“いったい、本当の加害者は誰か?”という疑問に突き当たるだろう。</p>

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