「ペット」の記事一覧

悲しげに便器から見上げる子犬が……中国の「抜け出せなくなった」犬猫たち

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便器にすっぽりとハマり、困った表情でこちらを見つめる子犬

 これまで幾度となく、中国人が何かから“抜け出せなくなる”事件をお伝えしてきたが、今回は、便器に落ちてしまい、抜け出せなくなった動物についてお伝えしよう。

 香港メディア「東網」(10月17日付)によると、杭州市内の住宅で飼われていたペットの子犬が便器に落ちてしまい、出られなくなってしまったというのだ。飼い主の女性によると、子犬が自宅内を走り回って遊んでいたときに、便器の中に転落してしまったらしい。飼い主はなんとかしようと試行錯誤するも、便器から救い出すことができず、仕方なく消防隊に救助を依頼したというのだ。

 さっそく7人の救助隊員が現場の住宅に駆け付けると、そこには便器から顔だけのぞかせ、弱々しい声で鳴く子犬の姿が……。救助隊は最初、ロープを子犬にかませ、そのまま引き上げようと試みた。だが、子犬のアゴの力が弱く、自らの体を引き上げることはできなかった。その後、便器内に少量の水を流し込み、子犬の体を浮き上がらせるという方法で、ようやく救出に成功したという。

 子犬は救出後、すぐに飼い主に体を洗われ、落ち着きを取り戻した。ネット上では、この子犬が便器から見上げる表情がなんとももの悲しく、かわいらしいということで拡散され、メディアも大きく取り上げ、人気者になってしまった。

 中国では、過去にも、抜け出せなくなった犬が話題に上がったことがある。2015年、湖南省の高速道路を走行していた乗用車に、道路を横断していた犬が衝突したのだが、なんとその後、車はこの犬をバンパーに挟んだまま約400kmを走行し、ようやく運転手が気づいて救出したという。幸い、犬に大きなケガはなかった。

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高速道路を横断中、車のバンパーにハマった犬の様子
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車の下部で暖をとっていたところ、そのまま部品の間に挟まってしまった子猫

 また10月17日には、上海で乗用車の底の部分に挟まって動けなくなっていた子猫が消防隊によって救出された。どうやら寒さを感じたため、エンジンで温められた自動車の底部分に入り込んで挟まってしまったようだ。子猫は無事救出され、元気だったという(「太平洋網絡」など)。

 中国もペット社会になり、こうした事件が多発している。これからも現地の消防隊は繁忙を極めそうだ。
(文=青山大樹)

【閲覧注意】ペットが飼い主を襲撃! 頭をかまれ、頭皮がズルむけに……

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中国では、市街地でも大型犬がリードなしで歩いている(イメージ画像です)

 中国では近年、経済発展とともにペットを飼う世帯が急増している。国家統計局によると、現在、家庭で飼育されている犬は約2,700万匹、猫と合わせると8,000万匹にも上るという。日本のおよそ4倍にもなる計算だが、当然、ペットにまつわる事故も多発している。

「網易新聞」(6月6日付)によると、北京市内の病院に1人の中年女性が緊急搬送されてきた。なんとこの女性は全身血だらけの上、頭皮の約半分がズルむけた状態で、首、胸、腕、腰に重傷を負っていたという。担当医によると頭の一部は骨が露出している状態で、両腕の皮膚のほとんがむけてしまっていたという。大量出血の影響で、呼吸も弱く危険な状態だったが、8時間にも及ぶ大手術の結果、なんとか一命を取り留めた。

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ペットの犬に全身をかまれ、頭皮を失った女性。手術直後の様子

 しかし、なぜこのような事件が起こったのか? 女性の家族によると、彼女の家では5年前からペットとして大型犬を飼っていたという。この日、いつものように餌を与えていたところ、突然、犬が暴れだし、女性に襲いかかったというのだ。犬は彼女の首にかみついた後、腕や頭部にも次々と激しくかみついた。叫び声を聞いた家族が駆けつけたところ、すでに全身血だらけの状態だったという。

 現在、中国ではこうしたジコが頻発しているというが、その理由について北京在住の日本人大学講師は次のように指摘する。

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今月8日、ペットの犬に頬を食いちぎられた男児(網易新聞)

「4~6月にかけて、ペットが人間を襲う事故が急増しています。この時期、発情期を迎える動物が多く、気性が荒くなる傾向があるそうです。最近では、甘粛省で4歳男児がペットの犬に突然襲われ、右頬の肉をかみちぎられる事故が起きましたし、老人や3歳女児がかみ殺される事故もあった。中国では見栄えのする大型犬が好まれる傾向にありますが、ペット市場はまだ未熟で、売る側も飼う側も知識不足なため、習性を理解していないことが原因でしょう」

 1兆円市場ともいわれている中国のペット産業だが、今回のような事故の頻発は、そんなしつけ不足も一因となっている。
(文=青山大樹)

檻に閉じ込めた猫に熱湯をバシャーッ! 鬼畜すぎる動物虐待犯に50万円の懸賞金

檻に閉じ込めた猫に熱湯をバシャーッ! 残忍すぎる動物虐待犯に50万円の懸賞金の画像1
イメージ画像(足成より)

 残忍な動物虐待動画が韓国のネット上に出回り、物議を醸している。動画は全部で3本あり、それぞれ40秒ほどの短いものだが、檻に入れられた猫を虐待する様子が映し出されている。
 
 ある動画では、ストーブの上で沸騰したやかんの取っ手を握り締め、おもむろに檻に向かって歩きだす。そして、謎の奇声を発しながら、猫に向かってその熱湯をかけ始めるのだった……。猫は威嚇の声を上げ、檻の中を逃げまどうが、投稿者はさらに興奮した様子で、熱湯をかけ続けた。

 別の動画では、焼却炉で熱した鉄の棒を握り締め、檻の隙間から猫を執拗に刺し続ける姿が映されている。

 どの動画でも共通しているのは、投稿者が喜びの声を上げながら、猫を虐待しているという点だ。

 映像を見た韓国ネット民は「このキチガイを捕まえて、熱湯をぶっかけてやる」「このクソサイコ野郎を捕まえて、同じ目に遭わせろ」「人の皮をかぶった悪魔だ」「とても見てられない」などと、怒りの声を上げている。

 1月28日、韓国の動物保護団体「ケア」は、この動画をYouTubeにアップした投稿者の情報に対して、500万ウォン(約50万円)の懸賞金を出すことを発表。投稿者を見つけ次第、警察に通報すると表明した。31日時点で投稿者の身元は明らかになっていないが、同団体の調査では大邱(テグ)在住の30代の男で、ゲームの動画投稿などをしている人物だとみられているという。

 しかし、仮に投稿者を特定できたとしても、重い処罰を下すことは難しそうだ。韓国の現行動物保護法では、動物虐待犯は1年以下の懲役または1,000万ウォン(約100万円)以下の罰金刑となっているものの、1991年の同法施行からこれまで1人も懲役刑に処された者はいないのが現実だ。

 同じ目に遭わせろ、とまでは言わないが、それ相応の処分が望まれる。

ペットショップへの腹いせ!? 返品拒否された女が、飼い猫の皮を剥いで店頭に遺棄

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SNSに掲載された、ブリティッシュショートヘアの写真、この猫と一緒に写っているのが飼い主の女だ(出典:南寧電視台)

 香港メディア「東網」(1月16日付)によると、今月8日、雲南省麗江市内にあるペットショップの店頭に、全身の皮を剥がれ、変わり果てた姿になった猫が遺棄されているのが見つかった。犯人はこの店とトラブルになった20代の客の女とみられ、皮を剥がれたのは、同店で女が購入した猫だったというのだ。

 店長によると、今月3日、女が来店。人気品種のブリティッシュショートヘアを気に入り、「値段を安くしてほしい」と交渉してきた。店長はこの女の猫への深い愛情を感じ、値下げを了承したのだった。それから2日後、事態は急展する。猫を買った女が、再びペットショップにやってきたのだ。女は店長に駆け寄ると、「経済的な問題で育てられなくなった。猫を返すから返金してほしい」と言いだした。

 店長は女に、「ペットに健康上の問題が見つかった場合以外、返金には応じられない」と答えると、女はおとなしく帰ったという。しかし8日夕方、女が買ったと思われる猫が皮を剥がされ、ビニール袋に入れられた状態でペットショップのドア付近に捨てられているのが見つかったのだ。店長は、鼻や目の特徴から、あの女が買ったブリティッシュショートヘアだと気がつき、警察に通報した。

 残虐なペット殺害のニュースは大きく報じられ、ネット上ではすぐに人肉検索が行われた。猫を虐殺したと思われる飼い主の女の顔写真、SNSアカウント、住所、電話番号などがあっという間に見つかって、ネット上にさらされた 。

 当初はメディアからの取材にも応じなかった女だが、身元が割れて観念したのか、10日午後に突然、SNS上に謝罪の動画をアップ。その中で女は、「あの時、急にお金が必要になったから返金の相談に行ったのに、あの店長、全然相手にしてくれなかったの! バカにされてるような気がして、だんだん理性が保てなくなった。気がついたら、猫にヒドイことしちゃってたの。みんなの心を傷つけてごめんなさい」と、身勝手な謝罪を展開している。

 女がペットショップの店長に見せた愛猫家の顔は、一体何だったのだろうか?
(文=青山大樹)

ケージから飛び出した乗客の愛犬を射殺! 無慈悲な空港職員に非難殺到

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飼い主のFacebookより

 韓国・仁川空港で乗客の愛犬が射殺され、騒動になっている。

 12月19日、仁川からタイ・バンコクへ向かうタイ国際航空の貨物室に預けられた犬がケージを抜け出し、10~15分ほど駐機場を走り回った。一歩間違って滑走路に進入すれば飛行機の離着陸に支障を来すかもしれない状況だったため、空港内は一時パニックに陥った。

 空港関係者によると、「必死に捕まえようとしたが、犬が滑走路の近くまで接近し、事故の恐れがあると判断したため、現場に駆けつけた野生鳥獣管理チームが空港のマニュアルに従って射殺した」という。飼い主はタイ人だった。

 そもそも犬が駐機場を走り回ったのは、航空会社の職員がケージの鍵をきちんと閉めていなかったことが原因だった。しかし、何よりも射殺という極端な対応を取った空港職員に、批判の矢が向けられている。

 ネット民からは「飼い主には一生のトラウマだな」「麻酔銃とかあるだろ?」「機内で騒動を起こすボンボンには何にもできないくせに、犬は躊躇なく殺すのか」「猛獣でもないペットを射殺したことにドン引き」「捕まえるのが面倒だったんじゃないの? 韓国人なら十分ありえる」といったコメントが寄せられている。

 一方、一部の愛犬家たちは、「飼い主に協力してもらえれば、十分捕まえられたはず。無能すぎる」「動物の命をなんとも思わない韓国にうんざり」「そもそもペットの命を貨物室に預けるなんて法律からしておかしい」などと、非難の声を上げている。

 実は、2013年にも似たような騒動があった。仁川から釜山に向かう予定だった大韓航空の機体に犬を運び込む途中、壊れたケージを抜け出した犬が滑走路まで疾走。滑走路は閉鎖され、結局犬は射殺された。着陸予定だった飛行機がゴーアラウンドするなど、混乱が生じたのは言うまでもない。

 騒動を起こした大韓航空は、犬の飼い主に航空券の払い戻しと、1,000ドル(約12万円)の賠償金を支払った。

 いくら前例があるとはいえ、犬を射殺したことに対する世間の目は厳しい。人の都合によって尊いひとつの命が奪われたのだから、当然だろう。

犬に二重まぶた手術!? ペットの美容整形ブームの中国で、人間顔負けの高額医療裁判が頻発!

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イメージ画像(Thinkstockより)

 中国では1兆円規模ともいわれているペットビジネス。その中身は、日本でも珍しくなくなったペットの葬儀はもちろん、なんとペットの整形手術までが存在する。

 そんな中、ついに事件が起きてしまった。

「華西都市報」(12月15日付)によると、広西チワン族自治区南寧市の動物病院で、一匹の犬が死亡した。この犬は二重まぶたの整形手術を受ける予定で、麻酔を注射したところ、直後に容体が急変。結局、そのまま息絶えてしまったという。

 飼い主の男性は地元メディアの取材に対し、この犬は血統書付きの3万元(約50万円)もする闘犬だと話し、現在まで病院からは謝罪だけでなく、死亡理由について何も説明されていないことに怒りを覚えているという。さらに男性は、犬の死亡は病院側の責任だとして、今後損害賠償請求も辞さない構えだという。

 一方、病院側は整形手術にあたり、男性から承諾書にサインをもらっているため、一切の賠償責任は負わないと主張している。

 中国国内のSNSでは、この一件に関し「そもそも、愛犬に美容整形を受けさせることが間違い」などと、飼い主男性に批判的なコメントが多数を占めている。

 実は、中国では数年前からペットの美容整形がブームとなる中、医療裁判も頻発している。2013年にはチベット犬が、飼い主に連れられ、フェイスリフト手術を行おうと麻酔を打った直後に死亡。この事件は損害賠償をめぐり、裁判にまで発展。裁判所は病院側に45万元(約720万円)の支払い命令を下している。

 それにしても、勝手に容姿を変えられたり食べられたり、中国に生きる犬は大変である……。
(文=青山大樹)

犬食文化への批判高まる韓国で、“ワンちゃん幼稚園”が大盛況!

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イメージ画像(Thinkstockより)

 先日紹介した「迷子犬が近隣住人に食べられた事件」(参照記事)からもわかるように、韓国ではいまだに犬食文化が残っており、欧米諸国から非難の声がたびたび上がっている。

 しかしその一方で、犬に多大なる愛情を注ぐ愛犬家たちも多く存在。彼らの行きすぎた愛情が、“ワンちゃん幼稚園”というものを登場させた。

“ワンちゃん幼稚園”に通うペットたちは、飼い主のお見送りで登園バスに乗り、幼稚園に着いたら、担任の先生と一緒に一日を過ごす。社会性や知能を育てるための授業を受けたり、滑り台に乗って遊んだり、クラシックを聴きながら昼寝をするのが主な日課。たまに、遠足にも出かけるらしい。

 担任は、その姿を写真に撮って飼い主に送り、降園時には迎えに来た飼い主に、ペットの一日を記した連絡帳を渡す。人間の幼稚園さながらの風景だ。

 ソウル・江南を中心に増えている“ワンちゃん幼稚園”の月謝は、40~60万ウォン(約4~6万円)ほど。年間最大720万ウォン(約72万円)という高額にもかかわらず、ペットを飼う共働き夫婦や一人暮らしの人たちの間では人気が高まっている。

 ペットを“ワンちゃん幼稚園”に通わせている女性はこう話す。

「家に誰もいない間、ペットが不安状態になり、激しくほえたりして何度か苦情が入ったけれど、幼稚園に通わせ始めてからはトラブルがなくなりました」

 韓国のネットユーザーからは、“ワンちゃん幼稚園”に対して、さまざまな意見が出ている。

「誰もいない部屋にペットを放置するよりは、ずっといい」
「自分が稼いだお金を、愛犬のために使う。誰も文句は言えないだろう」
「ペットの飼い主全員が、これくらい責任感を持ってくれればいいのに」
「お金をかけてでも、家族であるペットにいいものを提供したいのは、当たり前だと思う」

といった賛成の意見がある一方で、

「韓国では、お金がないとペットを飼うなってことですね」
「お金持ちのぜいたくに思えてならない。その金を、ホームレスに寄付したほうがよっぽど人間的だ」
「人間よりも、犬が良い暮らしをしている。“犬の大学”とかもできるんじゃない?」
「本当の育児は大変だから、ペットで自己満足してるだけ」

などと、皮肉る声も寄せられている。

 韓国のペット市場は、いまや拡大の一途をたどっているというが、一方で迷子犬を食べてしまう者たちも共存するとは、なんとも韓国らしい話だ。

高まる飼い主の需要と、「法律上、ペットは“モノ」”の壁……ペット医療の課題とは

<p> 約10年前、東京近郊で、高額な治療費を請求するため、健康だった犬の気管にビニール袋を詰めて死亡させた悪徳獣医師がテレビのワイドショーをにぎわした時期がありました。結局、その獣医師には2年間の業務停止処分が下りましたが、獣医師免許はそのままというオチがつき、現在は別の土地で新たな商売を行っているとか。当時、国家資格である獣医師免許の剥奪は前例がないとのことで、事件を起こしてもその職域は守られました。</p>

<p> 消費者センターに寄せられるペットに関する相談は、購入時の病気や決済に関するもの、サービス時の事故などが目立ちますが、医療ミスも少なくありません。さすがに冒頭のような、悪意のある医療行為の相談は見られなくなってきていますが、獣医師の力量(判決文によると:診療当時の、いわゆる臨床獣医学の実践における医療水準)不足によって回復させることができなかった、もしくは命を落としてしまった場合、獣医師としての責任を果たせなかったと判断されるようです。</p>

動物保護団体もキャパオーバー寸前! 善意に甘える「殺処分ゼロ」の危うい現状

<p> メダル獲得数41と過去最多の記録を残したリオ五輪が閉幕し、大型台風が秋の気配を運んできました。虫の声も、秋を伝えるメンツに替わりつつあります。</p>

<p>「ペットの殺処分数をゼロにしよう!!」</p>

<p> こんなスローガンを掲げて、さまざまな動物の保護団体や地方行政が動きを強めています。先日行われた東京都知事選では「(東京の)ペット殺処分をゼロに」を公約として掲げた小池百合子氏が当選し、とあるイベントで「2020年東京五輪・パラリンピックをひとつの期限とした上で、東京都でいい例を示せるようにしたい」と発言、聴衆の喝采を浴びていました。<br />
</p>

国内初の業務停止命令も、数カ月で営業再開――「猫カフェ」をめぐる行政の盲点

neko0812.jpgイメージ画像(足成より)

ペット業界を知り尽くしたライターが業界の内側に迫る、短期集中連載。

 某CMが発端となり、白いチワワがもてはやされた時代がありました。ちょうどその頃、私は店頭で犬を売る側の仕事に就いていました。とかくはやりもの(命ある商品もしかり)を欲しがる客層は偏りがちで、来る客来る客に同じ質問をされ、同じ回答を繰り返し、辟易した思い出があります。

 時代が変わり、現在は空前の猫ブームが到来し、猫の飼育率が犬を凌駕する勢いだそうです。「ネコノミクス」という言葉がマスコミを騒がせ、ペット業界でも猫を意識したサービスや商材へのシフトが進みつつあります。

 店頭で犬や猫を売っている、いわゆる生体販売の現場では、展示ケースの中は犬より猫のほうが多くなり、ペットフードやグッズのメーカーでは、猫商材のラインナップが進んでいます。サービス業では、猫専用もしくは猫対応のペットホテルが目立ち始め、犬主体であったトリミングでも猫向けのサービスが続々と出てきています。また、さまざまな種類の猫と触れ合いながら、至福のひと時を過ごせる「猫カフェ」も人気を博していますね。

 カフェと銘打っていますが、猫カフェは飲食より猫とのふれあいがメインとなる店が大半で、業種的には「動物取扱業」の展示の分類となります。同じカフェと銘打った「ドッグカフェ」は、愛犬と一緒に利用できるカフェですので、飲食業の部類に入ります。当然、猫カフェに在籍している猫たちは、カフェ側で飼養している猫ということになります。

 この飼養の形態によって、猫カフェもいくつかの種類に分類されます。経営者の趣味で飼養する複数種の猫たちと純粋に触れ合うことが目的の「癒やしメイン型の猫カフェ」。繁殖用の猫を展示し、ふれあいを通して子猫の販売を目的とする「生体販売型猫カフェ」。行政や地域からの保護猫を展示し、新しい飼い主を探すことが目的の「保護シェルター型猫カフェ」などが挙げられます。

 猫たちの現状を見てみると、平成26年の飼育数は、犬は約1,034万6,000匹、猫は約995万9,000匹で、飼育率でも世帯数の15.1%が犬を、2.2%が猫を飼っているという統計となっています。同年度の環境省統計、犬猫の収容数と殺処分数を見ると、犬の引き取り(狂犬病予防法等に基づく捕獲収容を含む)5万3,173匹、猫の引き取り9万7,922匹、合計15万1,095匹。殺処分は、犬2万1,593匹、猫7万9,745匹、合計10万1,338匹となっています。

 冒頭のテレビCMが話題となり、チワワが普及した平成16年の数字を見てみると、引き取り数で犬は18万1,167匹、猫が23万7,246匹。殺処分数は犬で15万5,670匹、猫で23万8,929匹となっています。

 この10年で行政での収容数は犬で約3分の1に、猫で半数以下と減少しており、それに伴い、殺処分数も犬で約7分の1、猫で3分の1と減少傾向にあります。平成25年に施行された改正動物愛護法により、繁殖業者や明確な理由のない飼い主から犬猫の引き取りを拒むことができるようになったため、この年からの引き取り数は、さらに減少する傾向にあると考えられます。とはいえ、統計を見ると、いまだに毎年15万匹以上の犬猫が収容されており、10万匹が殺処分の必要な状況であることに変わりありません。

 行政での収容数・処分数は見かけ上、減少傾向にありますが、その分、動物保護団体に収容される犬猫、特に猫の数が増えています。行政が引き取った個体の多くを保護団体に譲渡することで、その管理数を減らしているのです。いろいろな見方ができますが、殺処分を蔑視する風潮が引き起こした事態でもあり、本当の意味で“無駄な命”を作り出さない仕組みを確立しない限り、この現象は続くでしょう。

■野放しにされる、悪質猫カフェ

 またブームに乗って、猫の乱繁殖を行う業者も増えているようです。一例として、少し前に話題になった東京の生体販売型猫カフェは、まともな健康・衛生管理ができず、業務の取り消し処分を受けました。業務として店舗運営するためには、「第一種動物取扱業」の届け出が必要ですが、これを取り消される国内初の事例となりました。その後、この業者は保護施設を有する保護団体向けの「第二種動物取扱業」を届け出ることにより、「保護シェルターカフェ」として営業を再開するという“離れワザ”を披露してくれました。環境も施設も変わらず、蔓延した病気を罹患した猫たちが生み出されています。これを許した管理自治体もどうかと思いますが、現行の法制度では合法であり、自治体担当者も歯ぎしりをする結果となっています。

 犬は狂犬病予防法や動物愛護法によって、ある程度の実態数(販売数・野良の捕獲数・飼育数など)は読み取ることができます。ところが、猫の場合、個体数を把握するための法整備がなされていないため、飼い主のいない猫の数は把握できていません。また、野良猫を捕獲して処分するための制度もありません。そのため、野良を含む飼い主のいない猫の数は、公表されている数字の何倍もいると予想されています。これだけあふれ返っている猫がいる中でのブームです。需要に応じてこの猫たちを供給できれば、大きな無駄を省く効果があるのですが……。

 ブームとはにわか景気。過去に何度もペットに対するブームが起こり、そのブームによって多くの命が不当に放棄されてきた歴史があります。単なる商品であれば、飽きて捨てることも、リサイクルショップで換金することも可能でしょう。命ある商品は健全に生き続けることに価値があります。「飽きたから」「要らないから」といって、簡単に処分できる類の商品ではありません。

 誰かが、どこかだけが間違っていると言い切ることができる事態ではありません。このブームを先導し、煽り、衝動に駆られたすべての人間、飼い主には飼い主の責任が、販売する側、生み出させる側、管理する側にはそれ以上に命に対する責任があります。このブームを猫たちのためと考えるのであれば、いま猫たちが置かれている現実に目を向け、何ができるかを考えてみてください。もちろん、善良な人間として。

「この世でどうネコに接するかが、天国でのステータスを決める」ロバート・A・ハインライン
(文=成田司)

●なりた・つかさ
ペットビジネスライター。動物福祉の発想に基づく日本版ティアハイム設立を目指す「Giraf Project」を主宰。共著に『ペット市場の現状と展望2013-2014』(JPR)がある。

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