迷い込んだのは“秘境”で“魔境”だった!? 藝大生のヘンテコな青春『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』

<p> 本の帯に“前人未到、抱腹絶倒の探検記”という興味をそそられる煽り文句があり、恐る恐る『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』(新潮社)を読み始めた私にとって、予想だにしない事実が待ち構えていた。</p> <p> そこには前人未到の場所も、腹を抱えて笑うべき部分もなかった。それどころか、驚くべきことなどどこにも存在してはいなかったのだ。より正確に言えば、日本大学藝術学部を卒業した私が普段身を置いている日常に酷似したものが“カオスな日常”と呼ばれてしまっていた。<br /> 探検隊のつもりでいたらそうではなく、探検される先住民の側だったのだ。カオスの中で普通に呼吸をしていれば、当然のことながらそこがカオスであると自覚するきっかけは与えられない。麻痺していたのだ。</p>

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