「パンドラ映画館」の記事一覧(6 / 18ページ)
2017年7月27日 [20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> あれっ、マクドナルドの創業者はマクドナルドさんじゃないの? 世界最大のファストフードチェーンである「マクドナルド」だが、創業者として正式に記録されているのはチェコ系米国人のレイ・クロック(1902年~1984年)。じゃあ、なんでクロックバーガーって屋号にしなかったのか。そんな素朴な疑問に答えてくれるのが、マイケル・キートン主演の『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』だ。個人経営の片田舎のドライブインが米国を代表する巨大チェーン店へと爆発的に飛躍を遂げた裏事情を、マックシェイクよりももっと濃厚に、テキサスバーガーよりもさらにこってりと描いてみせる。全米ではたびたび延期されながらも今年1月にようやく公開されたが、マクドナルド社はこの映画に関してはノーコメントを貫いている。</p>

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2017年7月21日 [20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> ケータイを開けると、そこは“14歳の国”だった。その国には善悪の区別はなく、むきだしの感情と言葉の暴力がはびこっていた。この国にうかつに踏み込んでしまった大人は、ボロボロに傷つくことになる。『鈴木先生』(テレビ東京系)の山崎先生(山口智充)や足子先生(富田靖子)が次々と壊れてしまったように。宮沢章夫の戯曲『14歳の国』をベースにした藤井秀剛監督の『狂覗』は、観る側の体力さえも激しく消耗させるヘビィなサイコミステリーとなっている。</p>
<p> かつてシティボーイズ・ショーの作・演出をつとめ、1990年代以降は演劇ユニット「遊園地再生事業」を主宰している宮沢章夫が『14歳の国』を発表したのは1998年。誰もいない教室で教師が生徒の持ち物を検査したという話を新聞で読んだことがきっかけだった。正しいことをしていると思い込む教師側の高邁な精神と、それとは裏腹な生徒たちに隠れてコソコソと検査を行なうという卑屈な態度とに大きなギャップがある。また、90年代はブルセラショップが社会問題となり、97年には酒鬼薔薇事件を起こした犯人が14歳の少年だったことが大きな波紋を呼んだ。大人でもなく子どもでもなく、実体験を伴わない頭でっかちな情報と成長ホルモンとがアンバランスにせめぎあう14歳の心の中へ入っていくことは容易ではない。しかも、相手が集団となれば、ジャングルの中に丸腰で入っていくような緊張感を伴うことになる。</p>

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2017年7月14日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> 総製作費120億円が投じられたハリウッド大作『パワーレンジャー』は、全米をはじめ世界87カ国で公開され、大きな話題を呼んでいる。赤、青、桃、黄、黒とカラフルにカラーリングされた5人の仮面のヒーローたちが活躍する『パワーレンジャー』は米国で1993年にオンエアが始まった『マイティ・モーフォン・パワーレンジャー』のリブート作であり、そして『マイティ~』のベースとなったのが『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92~93年/テレビ朝日)だ。日本人にはおなじみのスーパー戦隊シリーズがルーツなだけに、『パワーレンジャー』も学校で落ちこぼれとなっている5人の若者たちが特訓を重ね、団結力を武器に悪の軍団と戦うことになる。クライマックスには巨大合体ロボットが登場するスーパー戦隊シリーズのお約束も踏襲されている。</p>

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2017年7月7日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> 福島の仮設住宅で暮らしているみゆきには、本名とは別にもうひとつの名前がある。普段のみゆきは地元の市役所に勤めているが、週末は深夜バスに乗って上京し、YUKIという名のデリヘル嬢として働いている。震災以降、仮設住宅に父親と2人で暮らしているみゆきにとって、YUKIとして東京で過ごす時間はかけがえのないものとなっていた。今週末もまた、みゆきは高速バスに揺られて東京へ向かい、見知らぬ男たちを相手に性サービスに従事する。『ヴァイブレータ』(03)、『さよなら歌舞伎町』(15)など官能映画の名手として知られる廣木隆一監督のオリジナル作『彼女の人生は間違いじゃない』は、廣木監督の故郷・福島を舞台にした社会派官能ドラマとなっている。</p>

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2017年6月29日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> 今年もテアトル新宿に心くすぐるピンク色の風がそよぐ季節が到来する。そう、ピンク映画の雄・大蔵映画の近年の珠玉作がR15作品として特集上映される「OP PICTURES+フェス2017」が7月1日(土)~6日(木)、7月8日(土)~14日(金)の13日間にわたって開催されることに。昨年より1か月早いけれど、ハズレなしの“天才映像職人”城定秀夫監督の新作『方舟の女たち』、異才・いまおかしんじ監督の『夫がツチノコに殺されました。』など、選りすぐりのピンク映画13本が日替わりで上映される見逃せないプログラムとなっている。</p>
<p> 人気シリーズ『デコトラ・ギャル』や『エロいい話』などのエッチ系Vシネマでも名職人ぶりを見せている城定監督は、今年のピンク大賞最優秀作品賞&監督賞に輝いた七海なな主演作『舐める女』、昨年のピンク大賞優秀作品賞&新人女優賞を受賞した古川いおり主演作『悦楽交差点』をアンコール上映(参照記事)。どちらも「ピンク映画って、こんなに面白いんだ!」と喝采を送りたくなるハイクオリティーな作品。これまでピンク映画を喰わず嫌いしていた人は、ぜひものですよ。</p>

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2017年6月23日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> 誰かの葬式に参列し、焼香する度に、中島らもの自伝的小説『バンド・オン・ザ・ナイト』を思い出す。小説の中でらもさんは「葬式には行かなかった。葬式に行かないのはおれの流儀で、あの黒枠に囲まれた写真を見てしまうと、もうほんとうにお別れだと感じてしまう。葬式に行かずに、あの黒枠の写真さえ見なければ、いつかどこかの街でばたっと会うような、そんな気のままでいられるからだった」と語った。らもさんを見習いたくもあるけど、亡くなった人の思い出だらけのままでは生きづらい人もいる。若手監督の登竜門として注目される「ゆうばりファンタスティック映画祭」オフシアター部門で今年のグランプリを受賞したのは、永山正史監督の『トータスの旅』。自分の前から姿を消した大切な人を弔うために七転八倒する男たちのロードムービーとなっている。</p>
<p> 上映時間82分と短い尺だが、中身はなかなか濃い『トータスの旅』。サラリーマンの次郎(木村知貴)が、ひとり息子の登(諏訪瑞樹)と暮らすアパートから物語は始まる。次郎は妻に先立たれてから、ずっと空っぽな日々を過ごしてきた。その空っぽさを隠すために、登の前ではいい父親であろうと努めている。反抗期に入った登は、常識を押しつけようとする父親も学校も大嫌いだった。ある朝、ずっと音信不通だった次郎の兄・新太郎(川瀬陽太)が婚約者の直子(湯舟すぴか)を連れて現われ、「これから結婚式だ、支度しろ」と言い出す。会社に通ってはいるものの心は虚ろな次郎と不登校状態が続いていた登を連れて、強引に車中旅に向かう新太郎と婚約者。登が生まれる前から次郎が飼っているペットの亀も一緒だ。</p>

「君がアル中で、どんなキチガイでもいいんだぜ! ゆうばりグランプリ受賞作『トータスの旅』」の続きを読む
2017年6月16日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> 戦争とは国の命令で行なわれる人と人との殺し合いだが、人命を救うことを目的に戦争に参加したおかしな一人の男がいた。太平洋戦争末期、壮絶さを極めた沖縄戦において米軍の第77師団に“衛生兵”として従軍したデズモンド・ドスがその人だ。『ブレイブハート』(95)でアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞したメル・ギブソン監督は、米軍で変人扱いされ続けたデズモンドを主人公にした嘘のような本当の話を『ハクソー・リッジ』として映画化している。</p>
<p> 主人公となる若者デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は米国バージニア州出身。彼のプロフィールを語る上で重要となってくるのは、イエス・キリストの再誕を信じる「セブンスデー・アドベンチスト教会」の敬虔な信者だったということ。第一次世界大戦に従軍した父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は戦場からの帰還後はアルコール依存症となり、家庭内での口論や暴力が絶えなかった。聖書を心の拠り所にした少年期を過ごしたデズモンドは、年頃になって病院で出逢った看護士ドロシー(テリーサ・パーマー)と恋に陥る。折しも第二次世界大戦が本格化し、自分だけが幸せになることにデズモンドは疑問を感じ、ドロシーや戦場の恐ろしさを知るトムの大反対を押し切って、志願入隊してしまう。「なんじ、殺すことなかれ」と説く聖書の教えを守るため、衛生兵としての入隊だった。</p>

「監督メル・ギブソンが描く沖縄地上戦の地獄絵図!! 戦場を丸腰で闘った男の記録『ハクソー・リッジ』」の続きを読む
2017年6月9日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> 堕ちていく女は、劇映画としてはとても魅力的な題材だ。社会のシステムから転げ落ちていくことで、虚飾をはぎ取られ、ひとりの女としての生々しい素顔がさらけ出されていく。キム・ギドク監督の『悪い男』(04)や園子温監督の『恋の罪』(11)のヒロインは、堕ちるところまで堕ち、聖女のような輝きを放つことになる。だが、女優が演じる劇映画ではなく、現実世界を切り取ってみせるドキュメンタリーの場合はどうだろうか? 韓国とフランスとの合作ドキュメンタリー映画『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』は生きていくため、家族を食べさせるためなら、法を破り、命を危険にさらすことも厭わない、平凡なひとりの主婦の変身ぶりを追いかけていく。</p>
<p> ドキュメンタリー映画の醍醐味は、シナリオのない意外性のあるストーリー展開にある。『マダム・ベー』はカメラを回している韓国人監督ユン・ジェホすら予測できない、驚愕のゴールが待ち受けている。主人公となるマダム・ベーは、「えっ、この人がヒロイン?」と思うほど垢抜けないオバさんなのだが、我々には到底マネできない決断力と行動力を発揮し、ユン・ジェホ監督に「私を撮りなさい」と告げる。</p>

「人身売買、二重婚、売春斡旋、すべては家族のため『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』」の続きを読む
2017年6月2日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p>日本語の“裏方さん”にあたる外国語を調べたことがあるが、なかなかピンとくる言葉に出逢えなかった。英語だとunsung heroという言い回しがあるが、どうも脚光を浴びそびれた人、記録に残らなかった人、という残念な意味合いが感じられてしまう。日本語の“裏方さん”には親しみと敬意が込められているが、欧米文化にはそういった感覚はないのか。そんな疑問に答えてくれたのが、現在公開中のドキュメンタリー映画『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』だった。</p>
<p>『ハロルドとリリアン』の主人公であるハロルド・マイケルソン&リリアン・マイケルソンは、それぞれ絵コンテ作家、リサーチャーとして戦後のハリウッド黄金時代に大活躍した伝説の裏方夫婦だった。夫ハロルドの絵コンテ作家としての凄さがよく分かるのは、旧約聖書の出エジプト記を実写化した『十戒』(56)の海がまっぷたつに割れるシーン。映画史に残るこの名シーンを、イメージボードにしてまず描いてみせたのがハロルドだった。<br />
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「記録よりも記憶に残る“裏方夫婦”の映画年代記! 『ハロルドとリリアン』がいたから名作は生まれた」の続きを読む
2017年5月25日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 恋愛ニュース, 映画]
<p> 天才の考えていることは、よく分からない。自伝的小説『仮面の告白』を24歳のときに執筆し、若くして成功を収めた三島由紀夫は、やりたいことをやり、書きたいことを書き、そして市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げ、45年間の生涯の幕を閉じた。ノーベル文学賞の候補に挙げられる一方、自衛隊の演習機に乗って子どものようにはしゃぐ童心を持ち合わせていた。空飛ぶ円盤の観測にハマっていた時期もあり、そんな天才作家・三島由紀夫が唯一のSF小説として発表したのが『美しい星』だった。コメディなのか、マジなのか、判別できない奇妙な味わいのある1冊である。</p>
<p> 三島文学を語る際にスルーされることの多い『美しい星』だが、1980年代に入って、鹿児島から上京してきたひとりの青年がその奇妙さに魅了される。大学で映画サークルに所属していたその青年は卒業後、CMディレクターとしてキャリアを積み、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)で監督デビューを果たし、『桐島、部活やめるってよ』(12)、『紙の月』(14)とヒット作を連発するようになった。吉田大八監督である。原作小説を読んでから30年、吉田大八監督は念願の『美しい星』を映画化した。</p>

「リリー・フランキー、橋本愛が宇宙人として覚醒!? 三島由紀夫のSF小説『美しい星』を映像翻訳化!!」の続きを読む