「出版」の記事一覧(4 / 7ページ)

バブル時代、東京から脱出を志す人々がいた──1989年「SPA!」地方会社の『ゆとり生活』を読む

<p> 何かと地方取材に行く機会が多い、今日この頃。どこの地方でも必ず、都会の喧噪を逃れて移住してきた人には出会うものである。</p>

<p> 最近は、地方の自治体が移住者を求めて、広く門戸を開く、いうケースも増えてきた。けれども、移住には覚悟が必要なもの。単に、都会に疲れて逃げてきたような人に、地方の狭い人間関係やしきたりは厳しい。そうして、せっかく移住した地域を恨んで姿を消す人も絶えない。</p>

<p> これだけさまざまな情報が飛び交い、移住のために最低限必要なことがわかっている時代であるにもかかわらず。</p>

「謎だらけ」リンダパブリッシャーズのラノベレーベル「出版予定中止→取り下げ?」騒動でわかっていること

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リンダパブリッシャーズ公式サイトより

 先週末、業界内外で注目を集めた出版社・リンダパブリッシャーズのラノベレーベル「レッドライジングブックス」を中心とした新刊書籍の出版中止をめぐる騒動。

 すわ、倒産かと思いきや、出版中止のリリースが消える新たな展開となり、さまざまな臆測が流れている。

 この騒動のはじまりは先週後半のこと。リンダパブリッシャーズが「当社の9月以降の新刊の出版取りやめについて」というタイトルで「レッドライジングブックス」で予定されていた書籍の刊行を中止する旨の告知を同社サイトで公開したものである。

 同時に、既に刊行が予定されていた作家陣がTwitterで悲痛な叫びをツイートしたことで、一気に話題となった。

 リンダパブリッシャーズは2006年に創業。TSUTAYA事業を中心に据えるカルチュア・コンビニエンス・クラブ及びニッポン放送と共催した「日本エンタメ小説大賞」など複数の公募制の賞を実施。映画化された水野宗徳の小説『おっぱいバレー』の版元としても関心を集めていた。

 ライトノベルレーベル「レッドライジングブックス」は昨年立ち上げられたもので「WEB投稿小説大賞」を実施するなど精力的な活動を続けていた。

 そんな出版社が告知した突如の出版中止。

「これは、倒産するのではないか」と騒ぎ立てる声が方々から聞こえてきた。

 ところが、週明けになり状況は急変。

 公式サイトから出版中止の告知が削除されたのである。

「ホームページに電話番号も掲載されていません。なので、会社を訪問してみたらオートロックで中に入って話を聞くこともできず……事情はまったく不明です。ただ、普通に考えると土日の間に資金繰りがなんとかなったということではないでしょうか」(大手紙記者)

 ただ資金繰りの問題と考えるのも疑問が残る。というのも、登記簿を見ると、同社の取締役にはカルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ企業役員が多数名を連ねている。

 実質、巨大グループの一部門ともいえる企業が、にわかに資金繰りが悪化するとは思えない。

 代表取締役の名前も公式サイトでは「新保克典」となっているが、登記簿を見ると「新保勝典」と記載されているなど、さまざまなところで「?」マークが点灯する企業。出版中止の告知取り下げで、刊行予定だった書籍がどうなるのか、注目したい。
(文=特別取材班)

書店に並ぶ本の40%が「返品」されている! 数値から見る出版不況

<p> 書店に並ぶ本のうち約40%が「返品」されている――出版不況と言葉では聞くが、数で見ると改めて驚くものがある。思えば90年代にはよく聞いた『ミリオンセラー(100万部突破本)』という言葉も聞かなくなった。出版販促コンサルタントの山本豊氏に、前編に続き、移りゆく書店の姿について話を聞いた。<br />
</p>

書店が6000店も減少している! 懐かしの「ロードサイド書店」をつぶしたのはAmazonか? 

<p> 2000年には2万店以上あった書店が16年には1万4000店まで減っている――近所の町の書店の閉店などを目にし「書店が前よりも減っている感覚」は多くの人にあるだろう。しかし、こうして数で見ると驚くものがある。そしてこれはいわゆる町の本屋さんだけでなく、紀伊國屋書店新宿南店など、都心の大型書店も含まれているのだ。その要因の一つに当然あるのはAmazonだろう。出版販促コンサルタントの山本豊氏に、移りゆく書店の姿について話を聞いた。</p>

住むならどっち!? 多摩と湾岸で迷ったバブル時代と80年代雑誌の“ユルさ”

<p> タイトルで「どっち」と書いたけれども21世紀の今、ほぼ決着がついているのは、ご存じの通り。</p>

<p> 多摩地域のボロ負けである。</p>

<p> その名前の通り、まるで神殿のような街が建設されたパルテノン多摩は陳腐なものになってしまった。そして、高度成長期以降、多くの人々が夢を抱いて住んだ多摩ニュータウンは、もはや完全なオールドタウン。歩道と車道の完全分離のように考え抜かれた都市計画も、いざやってみると夜道が危ないなどの危険ばかりを生み出した。</p>

女性誌だけは豪華付録で好調も……2017年上半期雑誌販売金額が大幅に減少していた

女性誌だけは豪華付録で好調も……2017年上半期雑誌販売金額が大幅に減少していたの画像1
「sweet」2017年9月号(宝島社)

 電子出版市場が好調の一方で、雑誌の落ち込みはさらに続く。そんな2017年上半期の出版市場の状況が明らかになった。

 出版科学研究所の発行する「出版月報」7月号に掲載された2017年上半期の分野別動向によれば、紙の出版物全体では販売金額は7,281億円で前年同期比5.5%減。うち雑誌の販売金額は、3,327億円で8.5%という大幅な減少となっている。

 中でも注目されるのが「週刊少年ジャンプ」(集英社)の部数減少。昨年末に200万部を割った同誌は、年明けから一気に部数を減少し、180万部台まで縮小するに至っているのだ。

 コミック誌では、「月刊flowers」(小学館)が、萩尾望都の『ポーの一族』の新シリーズの連載で部数を大きく伸ばしたことを除けば、軒並み減少が続いている。「ちゃお」(同)は、4月号で自走式ロボット掃除機を付録につけるという手に打って出て完売となったが、発行部数そのものは減少している。

 この、豪華な付録がつくと売上が伸びる現象は、ほかのジャンルでも同様。女性ファッション誌では「KERA!」(ジェイ・インターナショナル)などが休刊する一方で、付録が豪華な「sweet」(宝島社)などは好調である。

 この付録商法で部数を競い合っている女性誌だが、中でも注目したいのが「美人百花」(角川春樹事務所)である。この雑誌、毎号の付録がすべてケースの類いなのである。

 最近の号を見てみると、7月号は「アレクサンドル ドゥ パリのミニ財布」、8月号は「ジル スチュアートのマルチブラシケース」、9月号は「メゾン ド フルールのマルチアクセサリーケース」と続いている。興味のない人にはまったく意味不明だろうが、この雑誌が扱うスタイルのファッションを求める女子にとっては付録が十分に購入動機になる雑誌のようである。今さらではあるが、半ば雑誌本体のほうがオマケになっている感は否めない。

 このジャンルを除けば、雑誌は軒並み不調である。男性誌もアダルト誌も市場は縮小。週刊誌系でも「AERA」は1割前後落ち込んだことが指摘されている。

 どうも雑誌は、さらに淘汰される時代へと入っているようだ。

 対して、伸びは鈍化したものの前年同期比で21.5%も伸びたのが電子出版市場である。ただ、伸びたとはいえ、まだ規模は小さく、販売金額は1,029億円に過ぎない。この内訳をみると、コミックが777億円。書籍が140億円。雑誌が112億円となっている。

 以前と変わらず、電子出版の市場の大半はコミックによって支えられているという構造。今後、電子出版がどのように普及していくかは、まだ不透明といえるだろう。

 こうした中で、もっとも変化を見せているのは出版流通である。雑誌の低迷による輸送量の減少によって、出版取次では土曜日に書店に本の配送を行わない土曜休配日を、昨年より8日多い13日に増やしている。

 また、Amazonでは各取次で在庫していない書籍を日販が出版社から取り寄せる「日販バックオーダー発注」を6月末で停止。出版社への直取引の強化を始めている。

 こうした流通の変化によって、実際の雑誌・書籍のあり方はどう考えていくのか。いまだ、明確な答えを持つ人はいない。
(文=昼間たかし)

美しい作品愛の世界……大幅乱丁で回収中! 宮谷一彦『ライク ア ローリング ストーン』に誰も怒っていない

美しい読者愛の世界……大幅乱丁で回収中! 宮谷一彦『ライク ア ローリング ストーン』に誰も怒っていないの画像1
『ライク ア ローリング ストーン』(フリースタイル)

 誰一人、この大きなミスを怒っていない。それは、作品力ゆえなのだろうか。

 8月1日に刊行された宮谷一彦『ライク ア ローリング ストーン』(フリースタイル)が、出版社のミスでページが入れ替わっていたことが発覚。出版社は回収・交換を告知している。

 宮谷一彦は、1960年代後半に先進的な作品を描き、大友克洋をはじめとする次の世代に多大な影響を与えたとされる人物。スクリーントーンを削って表現する技法を確立したのは、宮谷であるとされている。

 そうした蘊蓄はともかくとして、宮谷の作品は異常な熱気を持っている。現代、その作品を読むと描かれている熱気に違和感を持つかも知れないが「なんだか、とにかくスゴイ」作品となっているのである。

『ライク ア ローリング ストーン』は、そんな宮谷の代表作とされながらも、今まで単行本化がなされていなかった作品。すでにイーブックにおいて電子書籍化は果たされていたが、紙の単行本で刊行されたことはなかった。もし、紙で読みたいとすれば、掲載されていた雑誌「COM」を入手するしかなかったのである。

 その初の単行本化。しかも、こちらも初書籍化の『白夜』も同時収録ということもあり、一部の読者からは発売が心待ちにされていた。

 それが、話数の順番が変わってしまった理由はなぜか。

 出版社の説明によれば、最初に入手したのが「COM」の切り抜き。掲載時の扉には、各話ごとに話数が記されていなかった。そのため、一番上にあった第4話が最初だと思っていたという。また、単行本の作業の際に宮谷から提供された原稿がひとつの袋にバラバラに入っていたため、その誤解に気づかなかった。もちろん、校正の際に著者によるチェックも行われたのだが、それでも、誰も気付かなかったのだという……。

 著者も気付かないという大変な事態。ともすれば、単行本を心待ちにしていた購入者を中心に炎上しそうなものだが、自体はまったく異なる。

 多くの人が「なら、もう一冊買おう」と、話しているのである。

 実は筆者もその一人。ほかの人はどうかと、知人と、この椿事を話しあったところ、「こんな珍しい本は、またとない。交換の際に、ポストカードがプレゼントされるそうですけど、そんなものより、この本のほうが価値がありますよ」。

 いくら日本の漫画史に刻まれる歴史的作品とはいえ、けっして大部数が売れる作品でないのも事実。読者たちの作品愛と、単行本を作ってくれた出版社への感謝の心を感じる。
(文=昼間たかし)

パソコン通信で彼女ができる? アマチュア無線では“オタサーの姫”が殺されていたバブル時代

<p>「パソコン通信で、彼女ができる!!」</p>

<p> ああ、これを読んでパソコン通信を始めたヤツもいたんだろうなあ~。そんな感慨に耽ってしまう記事が掲載されているのが「スコラ」1989年5月25日号。</p>

<p> この記事読んでいるだけで、ホントにパソコン通信を始めたら彼女ができるんじゃないかというほどにテンションが高い。なにしろパソコン通信を「電脳空間に広がる一大ナンパワールド」と煽り、こんなふうに誘惑する。</p>

黒木香の焼肉屋は良心的だった!? タレントショップの流行に煽られた「一般人のサイドビジネス」

<p> やたらとみんな稼いでいたと誤解されがちな、バブル時代。でも、好景気が正社員の給与に反映されるまでには、長い時間がかかった。</p>

<p> 大卒初任給がようやく20万円台を突破したのは1989年のこと。アルバイトの時給が高騰する一方で、正社員の給与は低く抑えられていた。</p>

<p> 現代では、好景気の割に意外と儲かっていないサラリーマンも多かったというバブル時代の真実は、忘れられている。みんな経費が使い放題だったとか、給料はすぐに上がったという神話を信じて、お得な人生を送ったバブル世代に対する怨嗟を滲ませているのである。</p>

東京都が本格的なBL規制を開始か!? 東京都の不健全図書指定で異例の一挙に5冊指定

東京都が本格的なBL規制を開始か!? 東京都の不健全図書指定で異例の一挙に5冊指定の画像1
東京都青少年・治安対策本部ホームページより

 いよいよ、BL(ボーイズラブ)への規制が本格化するのだろうか?

 10日に開催された東京都の青少年健全育成審議会で、BLと男性向け合わせて一挙に5冊が不健全図書指定された。

 東京都が毎月実施している不健全図書指定だが、近年は毎月2~3冊程度で推移しており、一度に5冊も指定されるのは、極めて異例だ。

 指定図書の内訳はBLが3冊、男性向けが2冊。

 BLは、藍川いたる『かべアナ 学園入獄編』『かべアナ 学園出獄編』(ともにマガジン・マガジン)と、アンソロジー『カーストBL』(フロンティアワークス)。その他は、早乙女もこ乃『つぐなわれ』、甘乃くぐり『いつの間にか背後にキモいオヤジが…』(ともにジーウォーク)である。

 ここで目立つのは、BLが一挙に3冊も指定されていること。とりわけマガジン・マガジンの2冊は、2015年1月に指定された『かべアナ』に続くシリーズ。すでに指定されたシリーズ作がありながら、変わらず発行しているということを鑑みて指定候補に挙げられたと考えられる。

 また、昨年から審議会に出席している委員からは「BLに対する風当たりは相当厳しい」という声も漏れてきている。

「指定の候補となる図書は、東京都の職員が店頭で購入している。その中で、BLが明らかに目立っているのは間違いありません。出版社側も、すでにどんなことをやったら指定されるのか、わかっていないはずがないでしょう。事態は、指定されるような表現をやめるか、男性向けのように自主規制マークをつけるかを判断するところまできていると思います」

 そう語るのは、不健全図書指定の事情をよく知る業界関係者。

 今回、指定されたBLのうちマガジン・マガジンは、大手出版社が多く加盟する日本雑誌協会の加盟社。フロンティアワークスは、言わずと知れたアニメイトグループの重要な一角で、数々のアニメ作品にも関係する業界の大手企業。常々、指定回数の累積を避けるために、発行元を別法人に切り替える手段を取る出版社もあるが、「そうしたテクニックは、東京都にバレバレ」といわれてきた。ゆえに、この指定も単なる店頭で目立っているという事実を超えた意図も感じられる。

 なお、今回のBL大量指定について東京都青少年課の重成浩司課長に尋ねたところ「まだ公表前なので、お話は公表後にしていただけると……」と丁寧な対応であった。
(取材・文=昼間たかし)

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