「孫向文」の記事一覧

『聲の形』はいじめっ子を美化する作品? 公開めぐり、中国政府と観客に温度差が生じたワケ

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。</p>

<p> 9月8日、京都アニメーション製作のアニメ映画『聲の形』が中国で公開されました。</p>

<p> 本作は大今良時氏の同名漫画が原作で、聴覚障害を持つヒロインの少女・西宮硝子と、彼女をいじめたことがきっかけで孤立してゆく主人公の少年・石田将也の触れ合いを描いたもの。日本では昨年9月に公開され、全国120館規模ながら興行収入23億円を記録する大ヒットとなりました。<br />
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『東京喰種』は、中国政府とウイグル人の対立を暗示する反体制的作品?

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。</p>

<p> 先日、実写映画版『東京喰種トーキョーグール』を見てきました。この作品は中国でも人気がありますが、その理由は、残虐描写がふんだんにあるところです。中国のエンタテインメント業界は、エロや暴力、登場人物による反体制的な発言が禁止されるなど、規制が非常に厳しいのが特徴です。本作のアニメ版も2015年、『寄生獣』や『進撃の巨人』などとともに配信停止となりました。<br />
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『進撃の巨人』に見る、諌山創氏の愛国心と中国の“におい”

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。今回は大人気漫画を通じて、日本が置かれている状況を解説します。</p>

<p> 諌山創氏の『進撃の巨人』は、人をむさぼり食う巨人とそれに立ち向かう人類の戦いを描いた大ヒット漫画で、テレビアニメ、実写映画などメディアミックス展開が行われています。以前、僕はこの作品に対する見解をコラムに寄せたことがあります。当時は、人類が高い壁に囲まれた地域の中で生活しているという作中設定が、現在の中国を反映していると分析したのですが、今回は、同時に日本の現状も描かれている、という点に触れてみたいと思います。</p>

「拳法の達人」なんていない!? 中国人も憧れる『らんま1/2』の世界観

<p> 1987年から96年まで「週刊少年サンデー」(小学館)に連載されていた『らんま1/2』(高橋留美子)は、拳法の達人で、水をかぶると少女になるという呪いがかかった少年・早乙女乱馬を主人公とした漫画です。少年漫画ながら作者が女性ということもあり、少女漫画テイストも含まれているため、僕が小学校のころは男女問わず大人気でした。『らんま』はギャグありバトルありと、さまざまな要素が詰まった作品で、中国で発売されていた台湾の海賊版には、「発狂する」という意味の「七笑」をもじった『七笑拳』という題名がつけられていました。おそらく「ギャグで大笑い」「ドタバタ」といったニュアンスでしょうが、同じく乱馬の名字は「乙女」と意味が近いからか「姫」に、ヒロインの天道あかねは「銭小茜」と中華風の名前に変えられていました。主要キャラほぼ全員の名前が変更されていたため、中国人ファンはがっかりしたものです。当時、僕は原作に忠実なキャラ名が使用された香港版のコミックスを所有していたため、クラスで好意を持っていた女子に貸して、『らんま』について2人で語り合った思い出があります。<br />
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ラブコメの元祖『きまぐれオレンジ☆ロード』で憧れた、ロングヘアーとセーラー服と

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。</p>

<p> 昨年末、「高須クリニック」の高須克弥先生が主催する飲み会に参加しました。高須先生とはその日が初対面だったのですが、同席した漫画家の西原理恵子氏が、「孫さんが描く女の子はかわいいですよ」と紹介してくださいました。<br />
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中国人ならソッコー裏切る!? 『聖闘士星矢』が描く「絆」の本質とは?

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。僕が親日家になったきっかけは、幼少時に日本のアニメに興味を持ったことです。現在、日本のアニメは世界中で評判を呼んでいます。こうしたアニメから垣間見える日本文化の神髄を、中国人目線で分析していきたいと思います。</p>

日本政府も入国禁止令を見習うべき!? “ヤバい”中国人漫画家は、トランプ政策をどう見る?

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。</p>

<p> 1月20日、ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に就任しました。大統領選挙時に数々の問題発言、行動を繰り返したトランプ大統領に反発心を持つ人は多く、世界各地で抗議運動が相次いでいます。</p>

大学授業料高騰で“留学生”という名の出稼ぎ移民が増加?「私立大よ、拝金主義を改めよ!」

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。</p>

<p> 昨年12月19日、日本政府は2018年度から、大学や短大などへの進学者を対象に給付型の奨学金制度を導入することを発表しました。現在、日本の大学生のおよそ半数が奨学金を借りているといわれており、社会に進出する前から借金を抱えるという困難な状況に置かれています。</p>

中国人漫画家、コミケ初参戦で「二次創作文化に神道の精神を見た」!?

<p> こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。</p>

<p> 昨年12月29~31日、毎年恒例の「コミックマーケット」が開催されましたが、僕も初めて参加しました。出品したのは「じゃぽにずむ」という和風のイラスト集です。もともと「ジャポニズム」とは19世紀にヨーロッパで興隆した日本文化の流行のことで、ゴッホやモネなど印象派の画家が浮世絵に影響を受けた絵画を発表しました。僕は中国人ならではの感覚で日本文化を描き、かわいらしさを感じさせるために題名をひらがな表記にしました。「じゃぽにずむ」は開場から3時間ほどで60冊以上が売れ、自分が描いた和風の作品が日本の方々に受け入れられたことを大きな誇りに感じました。<br />
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『君の名は。』中国での大ヒットに見る、「純日本産」の価値

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『君の名は。』公式サイトより

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 8月26日に公開された新海誠監督の最新作『君の名は。』は、12月5日までに興行収入200億円を超える超大ヒット作になっています。僕も公開直後に鑑賞したのですが、1月にIMAX上映が決定したということで、再鑑賞を考えています。

■大人気ゆえ、パクられる新海作品

 そんな『君の名は。』は12月から中国国内でも公開され、公開10日間で興収5億元(約83億円)を超える大ヒットを記録しました。新海監督作品は以前から人気を博しており、2009年に製作された『心霊之窓』という中国アニメは、新海監督の『秒速5センチメートル』の絵コンテや背景イラストを模倣したことで問題となりましたが、「パクられる」という事実は、ある意味、中国で大人気だという証拠です。

 日本で公開してまもなく、中国のネット上には違法な海賊版がアップロードされました。最近、中国では「百度雲」というオンラインの大容量クラウドストレージサービスが誕生し、日本国内で入手した映像データを転売するツールとなっています。想定内の事態ではありますが、劇場版を見た観客からは「『君の名は。』の初体験が、画質の悪い海賊版だったことが惜しい!」という皮肉な声が上がっています。

■中国では、「純日本産」が尊ばれる

 今回の成功を受け、日本では中国色を強めた映画を製作し、中国市場に売り込もうという声があるようですが、僕は異議を唱えます。尖閣諸島をめぐる反日デモの報道などから、中国人には愛国者が多いというイメージが世界中に広まりましたが、実際は単なる鬱憤ばらしや、政府に扇動されてデモに参加する例が大半で、本当の意味で自国に誇りを持つ中国人は多くありません。そのため、中国色が強い作品は、それほど好まれないのです。逆に爆買いの例を見ればわかるように、多くの中国人は「純日本産」を好む傾向があります。つまり、『君の名は。』のように日本の風景や習慣を前面に押し出した作品を売り出せば、再び大ヒットする可能性があります。

 中国人が純日本産を尊ぶ具体的な事例を挙げると、現在、中国では『君の名は。』はすべて字幕版で公開されているのですが、ネット上には「もし吹き替え版が公開されても、見に行かない」という意見が多く上がっています。その背景を探ると、10年ほど前には、ある日本製アニメが吹き替え版で公開されたのですが、「中国のヘタクソな声優が作品を冒涜した!」「私の大好きな○○は、こんな声じゃない!」などと酷評が殺到しました。さらに『君の名は。』で主人公を演じた神木隆之介など、中国でも人気を博している日本のタレントは数多く、さらに最近の日本の声優はアイドル的な面があるため、声を吹き替えてしまうとアニメ作品の商品価値が低下する可能性があります。そうした理由から、中国では、日本製アニメは字幕版で公開することが一般的になっています。

 もし今後、中国市場で商業展開を計画している日本人クリエイターの方がおられましたら、中国人クリエイターであり、日本のサブカルチャーに精通している僕の意見を参考にしていただけたら幸いです。また、日本国内の中国人がデータを中国に転送しないように、日本側から百度雲への接続を遮断することを推奨します。

◆「チャイナめった斬り」過去記事はこちらから

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●そん・こうぶん
中華人民共和国浙江省杭州市出身の31歳。中国の表現規制に反発するために執筆活動を続けるプロ漫画家。著書に、『中国のヤバい正体』『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)、『中国人による反中共論』(青林堂)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)がある。
https://twitter.com/sun_koubun>

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